王都にて② 冒険者ランクを決めよう!
「よう、俺がの試験官の、アマル・ヴァンだ」
「よろしくお願いします、ヴァンさん」
「おう、まずはランク判定試験についての質問はあるか?」
「えーっと、どういう方式でランクは決まるんですか?」
「ふむ。ランクは受付から聞いたように個人の純粋な戦闘力、強さで決まる。例えばお前と一緒にいたカールなんかは、1人でギリギリランク3の魔物を狩れるレベルだ。ある程度の余裕を持ってランク3の魔物を狩れるようになったらランクAだな」
ふむふむ。ん?ということはランク5の魔物はどうなるのだろうか?
だが、それはまだまだ先の話だ。気にしなくてもいいか。
「では、参考程度に、ヴァンさんのランクは?」
「ん?俺のランクはB+だ。もう少しでA-だな」
なるほど、カールと大体同じ程度と思っていいか。って、は?あれと同レベルだと?俺はあれに勝てるのか?
「えっと、勝たなくて良いんですよね?」
「おう、そう簡単に勝ってくれるな、勝たれると俺の立場がやばくなる。あと、純粋な戦闘以外もするぞ?」
よかった、勝たなくてよくて。勝たなきゃならなかったらやばかった。
「純粋な戦闘以外って、何するんですか?」
「基本は攻撃の回避や、素振りとかだな」
なるほど、やはり基本は大切ということか。
「もう質問はないか?なら始めるぞ?」
「はい、よろしくお願いします」
「よし、ならまずは攻撃の回避だ。俺が軽く『ウォーターボール』の魔法を何発か撃つから、それを避けてみせろ。回復はできるが、当たると痛いぞ」
「はい、わかりました」
そして俺は避ける体制をとる。さあ、来い!
「ならいくぞ、『ウォーターボール』!」
ヴァンの周りに10個以上の水の球ができる。え?俺にこれを避けろと?
「そら、いくぞ!」
「うおぉぉぉっ!?」
ヴァンのかけ声と共に、2発のウォーターボールが俺に飛んでくる。それを俺は横っ跳びに回避。だが、また次の水球が飛んでくる。
「うおっ、とっ」
「タクト、お前はその程度か!狼との戦闘を思い出せ!」
カール!?見てたのかよ!ちっ、まあやってみるとするか!
攻撃を限界まで引きつけて、引きつけて、ここで避ける!
「よっ、と」
そうか、こうすればいいんだ!よし、コツは掴んだ!
「もう少し攻撃ペースを早くしてくれ!」
「よし、言ったな!『ウォーターボール』!」
今度はヴァンの周りに20個以上の水球ができる。
「さて、これを避けてみせろ!」
「おう、来い!」
ビュンビュンビュン!
いくつもの水球が俺に飛んでくる。だが、コツを掴んだ俺にはきかん!
どんどん水球のスピードが上がってくるが、ヴァンのMP切れで終わった。俺も3、4回被弾したが、それも少し掠ったくらいだ。
「お前、あれを、よく、避けたな……」
ヴァンはMP切れで大分しんどそうだ。
「すげえじゃねぇか、タクト!」
カールが俺を褒めてくる。どういうことだ?
「ヴァンはこの試験で魔力切れになったことが無いんだ。いつもこいつが魔力切れになる前に被弾しやがる。だから、ヴァンがこの試験を受け持つようになって初の快挙なんだよ」
んな、馬鹿な……あんまり目立ちたくなかったんだが、仕方ない……調子に乗った俺も俺だしな。ってか、俺があれを避けられるとはな……やはり体がBAのアバターに近い物になっているのか?息も全く切れていないし……
「やっぱり只者じゃなかったな!タクトは!」
いや、コツさえ掴めば誰でも出来ると思うんだが……いや、そうでもないのか?実際最後の方は最初の倍くらい速くなっていたか?多分アドレナリン出まくっててわからんかった。
「いや、たまたまだよ」
「いや、だからたまたまでできる事じゃねぇって言ってるだろ!史上初だぞ!」
「はあ……じゃあ、取り敢えず誇っておくよ」
「おう、是非、そうして、くれ……」
ヴァンさんあんたまだ息切れてんのか……
「回避能力はA、と。次は攻撃だな。こっちに来てくれ」
「おう、わかった」
そして別の部屋に。そこには幾つもの……カカシ?何でカカシが?
「よし、なら次はこれに攻撃をぶち込んでくれ」
ふむ、この程度ならスナイパーライフルでヘッドショットすればいいか?いや、この距離だと近すぎるな……少し離して貰うか。
「あの……大分近いんで、距離とってもいいですか?」
「ん?距離をとるのか?珍しい奴だな。大抵はもっと近づくのに」
「いや、俺は今からスナイパーライフルを使うからな。大体800メルは欲しい」
「800メル?そりゃ遠いな。届くのか?」
「ああ。簡単に届くぞ?むしろ1キロルで短いくらいだ」
「はあ……やっぱりお前は規格外だな」
「いやいやいやいや、何その不本意な評価は」
「……まあいい。やってみろ」
「おう」
そして別の部屋に移動し、その部屋の限界まで離れ、伏射の姿勢をとる。ん?武器は勿論スナイパーライフルのCS-LR4ですよ?
「OKかー?」
「おう、OKだぞー」
「よし、ならこーい」
そして俺は射撃体制に入る。スコープを覗き、サイトをカカシの頭に揃える。そして、息を吸って、吐いて。吸って、吐いて。そうすると、スナイパーライフルと自分が一体化したような感覚がある。これなら、いける。
すう……
バァン!
激しい爆発音がして、NATO弾が撃ち出される。そして……ドパンッ
少しズレ、顔の右半分が吹き飛んだ。
「ちっ、失敗か」
もう一発。リロードし、横のカカシを狙う。
そして……
バァン!
ドパンッ
今度は、カカシの頭が全部吹き飛んだ。
「よっし、ナイスキル!」
ラスト1体。リロード。照準。そして、
バァン!
ドパンッ
再び、カカシの頭が全部吹き飛んだ。
「よし、ナイスキル」
そして俺は、カールとヴァンの下へ戻る。
「これでいいか?」
「あ、ああ……」
「なんだその武器、俺は見たこと無いぞ」
「こいつはCS-LR4。スナイパーライフル。弾丸はNATO弾で、12.7×99mm。ノリンコ社が開発した新型スナイパーライフルだ」
「しいえす、えるあーるふぉー?なんだそれ?」
やっぱりわからんか……残念だ。この銃への愛を語り合える奴が欲しい……
「いや、それよりなんだあの威力は!あの距離からカカシの頭を吹き飛ばすなんて、ありえないにも程があるぞ!」
「ああ、それは弾が12.7×99mmで、大分他と比べるとデカイからだな」
「うーむ……よくわからん」
「そうだな、たまにこいつの言っていることがわからん時がある」
「まあ、そういう武器だと思っといてくれればいいよ。んで、次は行かないのか?」
「あ、ああ、次で最後だ。えーっと、攻撃精度、威力共にA、と……なら、行こうか」
そして、また俺たちは別の部屋に移動する。
まさかの予告詐欺に……本当に申し訳ないです。次回こそヴァンと戦います。
CS-LR4
ノリンコが作り上げた新型の高精度ボルトアクションスナイパーライフル。
正式名称はCS/LR4で、FY-JSとして登場しているCS/LR3とは使用弾薬違いの兄弟である。
こちらは国際的に普及しているNATO弾を使うタイプ。