王都への道中④ カールの正体
「あー、だりー」
「文句を言うな、タクト」
「だってよ、もう2時間だぜ?2時間も待たされるとか……」
そう。俺たちはまだ王都に入るための列に並んでいたのだ。大分前には進んだが、あと1時間はかかるだろう。
「はあ……でも本当にそれはそうだな。俺も今まで何度も王都を出入りしてきたが、こんな事はなかったぞ」
何かあったのだろうか?何も無いことを祈りたいが……
「ふむ……まあ、気にする必要はないさ、タクト。そのうち入れるだろう」
「そうだな、気にする必要はないか」
「おう、そうだぜ」
そして、更に1時間後。
「次の方ー」
門番らしき兵士に呼ばれて、俺たちはその方に進む。
「では、この水晶に手を……って、え?」
どうしたんだ?
「こ、これは、フィリップ・カール将軍殿!お待たせして申し訳ありません!」
え?え?ええっ?フィリップ・カールって俺の隣にいるオッサンだよな?って事は……
「気にする必要はない、フォール一等兵。俺は今は将軍ではなく一介の冒険者だ。敬意を払う必要はないさ」
やっぱりかよぉぉぉ!!
「カール、あんた将軍様だったのかよ……」
「ん?ああ、言っていなかったな。タクト。俺が軍に所属している、って事は言ったか?俺はフィヨルド王国軍第一隊隊長、フィリップ・カール将軍だ」
「いや、聞いてねえよっ!?」
「はっはっはっ、まあ、気にするな」
「いや、気にするなって……はあ、なら今まで通りに接するが、いいな?カール」
「おう。公式の場でさえなければ全然大丈夫だぜ」
「よし、わかった。ならそうさせてもらうぞ」
「よろしいですか?」
「おう、いいぞ」
「では、この水晶玉に手を置いて下さい」
「おう、タクト、こうするんだ。見てろよ」
そしてカールが水晶玉に手を置くと、フォールと言ったか?その門番の前にウィンドウが出た。
それをフォールは見て、
「はい、OKです。次の方」
「タクト、お前だ」
「お、おう……」
そして俺はおっかなびっくり水晶玉に手を置くと、カールの時のように門番の前にウィンドウが出た。ドキドキしながら待っていると……
「はい、OKです。何か質問はありませんか?」
OKらしい。やはりウィンドウにはstatus(lie)の情報が写っているようだ。これは助かる。
「なければ、次に入都のために銅貨5枚の税を頂きます」
税?やばいな、金を持ってないぞ……
「おう、ほい」
俺が困っているのを見ると、カールが銅貨10枚を出してくれた。助かった。
「すまんな、カール。世話になってばっかりで……」
「いや、今から冒険者ギルドに行って素材を換金してもらうぞ。そこから今の分を返してくれればいい」
成る程な。ならそうしようか。
「よし、なら今から冒険者ギルドに行こうか。案内頼むぞ、カール」
「おう、わかった」
俺たちの次の目的地は、冒険者ギルドになった。
とりあえず5話行きました。本当に見切り発車なので投稿も不定期ですが、応援していただけると嬉しいです。