Memory4 泣き虫リオ(前編)
今回はダブル双子が小学校(低学年)の時に起きた事件です。リオ兄が『泣き虫リオ』と呼ばれていたときのことです。このあとの話にも続きます。
【泣き虫リオの日常】
俺が難聴になって数日たったある日のこと。
レオ兄は唐突に言った。
<三男>「リュカが難聴か~。未だに信じらんないよ。リオはどう思う?」
俺はドキッ!とした。今のところ大きな問題もなく生活しているが聞こえないせいで皆に迷惑をかけている。だから、リオ兄の答えを聞くのが怖かった。
<次男>「どうって言われても.... .... レオならわかるだろ?」
<三男>「予想はつくけど、気になって.... 。不安?」
二人の会話を聞いていたが、なぜリオ兄が不安に思ってるのか分からなかった。
聞こうか迷ってたら、
<次男>「リュカ、言いたいことがあるなら、ハッキリ言え。」
俺はしばらく、沈黙していたがリオ兄が不満そうな顔をしたのであわてて聞いた。
<俺>「えっと、な、何でリオ兄が不安になるのかなって.... 。リオ兄が気にすることじゃないのに」
リオ兄は無表情だったが、困ったような、迷ってるような感じがした。
<三男>「.... なぁ、リオ。話したら?不安なのはわかるけど、リュカとリュキはアイツらとは違う。」
なんのことを言ってるのかわからないが、重大なことだと思った。
リオ兄が不安そうな顔をしたからだ。
<次男>「....でも.... .... .... .... .... .... .... .... .... .... わかったょ。.... レオが話して。」
リオ兄は小さい声で言った。
<三男>「うん。.... どこから話そうか....
四年くらい前のあの日を覚えてる? 」
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『四年前』
<三男>「リオ。どーしたんだ?また、やられたんか?.... 誰にやられたの?」
<次男>「う〜、うっ.... .... .... 」
<三男>「泣いてたらわかんないよ。」
この頃のリオ兄はいじめられていた。リオ兄とレオ兄は小3で俺とリュキは小2だ。
俺とリュキはリオ兄がいじめられてる理由がわからなくて、どうすればいいかわからなかった。
ガチャッ.... .... バタン。
<三男>「ただいまー。」
<長男>「おぅ、おかえりー。.... ってリオどーしたんだ?肘擦りむいてるぞ。」
<三男>「また、泣き虫リオっていじめられたんだよ。」
<長男>「またか~。.... とりあえず、手洗いとうがいしてこい。話はそのあと聞くから。」
リオ兄のとレオ兄は洗面所に行った。
ガチャッ.... バタン。
<俺&五男>「ただいまー。」
<長男>「おかえりー。.... ってお前らどーしたんだ?何でそんなにケガしてんの??!喧嘩でもしたんか?」
<五男>「別に。ちょっと転んだだけだよ。」
<長男>「転んだだけでそんなにケガしないよ。とりあえず、手洗いとうがいしてこい。」
俺とリュキは洗面所に行った。ちょうど、リオ兄とレオ兄が出てきた。
<三男>「お前らどーしたんだ?何でケガしてんの?」
<五男>「転んだだけ。」
迅兄ちゃんは薬箱の中から消毒薬や絆創膏を出して順番に手当てをしてくれた。
<長男>「ケガしてないのレオだけじゃん。リオはわかったけど、リュカとリュキは何でケガしたん?どう見ても転んだだけじゃないだろ?」
<俺>「別に。...仕返ししただけだし。リオ兄をいじめてたから、ムカついた。」
<長男>「そっか。でも、ムカついて仕返しをしたら相手と同じだよ。何かあったら手をださず、俺に言ってよ。」
迅兄ちゃんは俺とリュキを怒らなかった。俺たちが悪いわけではないけど、怒らないし否定しない。
<俺&五男>「わかった。」
<次男>「.... .... .... .... 」
リオ兄は何かを言いたそうだった。俺とリュキはリオ兄の声を聞いたことがない。レオ兄とは普通に会話をするらしい。 しゃべれないわけじゃない。
家族なのに会話をしないのはおかしいと思うかもしれないが、俺とリュキは兄3人とは血が繋がってない。
よくあることだが、親同士が再婚した。俺とリュキの母親と兄達の父親が1年前に結婚(再婚)して家族になった。
<次男>「何で?.... .... .... 何で俺の事なのに二人が怒るん?」
.... .... .... !!?.... えっ!!?リオ兄がしゃべった?
小さい声であったが俺たちには聞こえた。ビックリして反応が遅れたが、
<俺>「あたりまえだよ。自分の兄ちゃんがやられたら怒るのが普通だよ。」
<次男>「でも、二人までいじめられちゃうよ。そんなの嫌だよ。俺のせいで.... 」
リオ兄がまた泣いてしまった。俺とリュキはどうしたらいいか分からない。リオ兄がいじめられるのは嫌だ....
<長男>「とりあえず、学校の先生には言っとくからまたやられたら、喧嘩する前に俺に言うんだぞ?」
迅兄ちゃんのいった通りにするしかないけど、学校の先生は頼りない。リオ兄がいじめられてるのを知ってるのに知らんぷりしてる。
※※※※※※※※※※※※
数日後....
あいかわらず、リオ兄は先生のいないところでイジメられてる。迅兄ちゃんが先生に言っても、リオ兄は毎日ケガして帰ってくる。
そんなある日.... レオ兄が五時間目の授業後の休み時間に俺たちの教室にきて、
<三男>「リュカ、リュキ... リオ見てないか?」
<俺>「リオ兄?う~ん?...見てないよ。どうして?」
<三男>「昼休みにトイレに行ったきり戻ってこないんだよ。五時間目の授業にもこなかったし...」
<俺>「わかった。俺たちも探してみる。」
リオ兄は学校は嫌いだが授業はちゃんと受ける。休んだこともサボったこともないから心配になった。
図書室、会議室、屋上とあちこち探したが見つからない。
<三男>「いた?俺の方はいなかった。」
<五男>「こっちもいなかったよ。.... 先に帰ったんじゃない?」
<三男>「いや、ランドセルがあるからいると思うよ。.... とりあえず、授業が始まるから戻ろ?もしかしたら教室にいるかもしれないし。」
キーーン、コーーン、カーーン、コーーン。
六時間目の授業が始まった。
リオ兄のことが心配で授業に集中できなかった。
<俺>(リオ兄、どこいったんだよ.... )
.... .... 六時間目の授業が終わり、教室から勢いよく出た。三年生の教室にいき、レオ兄にきいた。
<俺>「リオ兄、きた?」
レオ兄は首を横にふった。あと探してないところは校舎の裏だけだった。
<俺>「校舎の裏を探しに行こっか?」
俺たち3人は急いで校舎裏に行った。校舎裏は隠れるところが多く、かくれんぼで遊ぶときにいい場所だ。
<三男>「リオーー、いるかー。.... リオー」
<次男>「レ.... .... .... レオ.... 」
後ろの方からリオ兄の声がした。振りかえると物置があった。物置に近づき、
<三男>「リオ、中にいるのか?」
<次男>「レオ、ここから出して。暗くて怖いよ。」
レオ兄と俺とリュキは物置のドアをおもいっきり引っ張った。でも、ドアが歪んでるせいか全く動かない。
どうしようか考えていたら、
<三男>「リュカ、先生よんできて。俺たちの力じゃ開けられない。」
俺はうなずき、急いで職員室に行った。すると、職員室前に迅兄ちゃんがいた。驚いたが、急いでいて、
<俺>「迅兄ちゃん、大変だ!物置にリオ兄が閉じ込められてる。」
<長男>「はっ??何で?物置ってどこ?」
<俺>「校舎裏。レオ兄とリュキがいるから。俺は先生をよんでいくから。」
迅兄ちゃんはあわてて校舎裏に行った。俺は職員室に入り、三年生の担任の先生に事情を話した。
先生と急いで校舎裏に行った。迅兄ちゃんが力一杯引っ張って、少し開いたが、通れるほど開かなかった。
<長男>「リオ、もう少し待って。」
と、そこに一番力の強い先生(男)がきた。迅兄ちゃんとその先生が力一杯引っ張ったら開いた!
<長男>「リオ、もう大丈夫だから。」
迅兄ちゃんが泣いているリオ兄を抱き上げていたら、三年生の担任の先生が、
<先生>「どうしてこんなところに入ってたのかしら。小鳥遊くん、どうして?自分からはいったの?」
先生がリオ兄に質問していたが、リオ兄は泣きっぱなしだった。迅兄ちゃんが、
<長男>「先生、リオがまだ動揺してるんで詳しい話は後日にしてください。今日はもう帰ります。.... レオ、リュカ、リュキ荷物もって来て....帰るよ。」
俺たち3人はうなずき、急いで教室にランドセルを取りに行った。リオ兄の荷物はレオ兄が持ってきた。
先生たちに挨拶をして俺たちは帰った。
家についたら、リオ兄は疲れて寝た。俺たちは心配だったがなにも聞かなかった。
.... その日からリオ兄が外に出ることはなかった。