世界観
ふわふわ、ゆらゆら。
微睡みの中で私は目を覚ました。
ここは、何処だ?
あれから、どうなったの?
事件は、女の子は?
ぐるぐると駆け巡る思考に半ばパニックになりながらも、辺りを見渡す。
何故か体が思うように動かないのは、どうしてだろう。やはり、爆発に巻き込まれて深手を負ってしまったか。
それにしても本当に此処は何処だろう。視線を、さ迷わせば居た。人がいた。
視界の端、一人の女性が微笑んで此方を見つめていた。金色の長い髪を後ろに束ねて、優しい緑の瞳で私を抱き上げる。
(……えっ!?)
ことの事態に動揺していると、女性の向かい側に立つ男性が1人。
琥珀色の髪に金色の瞳、頭には王冠が其の存在を主張していた。如何にも王様という威厳ある雰囲気に息を呑む。
(どういうこと――――!?)
◇◇◇
あの衝撃的な出会いから1ヶ月。脳内にて整頓された情報と、この世界の情報を得て思い至った事がある。
この世界は、どうやら私が椹 祥子として生きていた時にゲーマーな姉に勧められてプレイしたゲーム、恋愛RPG“ルーセント ハーツ”の世界らしい。
このゲームは恋愛がメインだが、RPG要素が含まれていて主人公は男の子か、女の子かを選べるのだ。対象年齢が一五歳以上故に二十代を中心に、年齢、性別を問わず密かに人気である。
残念ながら発売時期が、超有名なゲームシリーズの発売が相次いだせいで、埋もれてしまい隠れた良作となってしまった。
そして、あろうことか主人公である、“ ナルシアルデ・ゼーレ・サウガ ” という立ち位置に所謂、転生してしまったことだ。なんてことだ、絶望過ぎる。
因みに男の子の固定の名前はルネイドである。
ルーセントハーツ……略してルーハーの物語を、かいつまんで話すとこうだ。
この星には大きく分けて3つの国家がある。三大勢力と言おう。
東に妖精の国エルフィネイラ。
西に魔王が統治する魔都シュリンゲイル。
そして中央大陸に人族が支配するサウガ王国。その王国に未来を担う子供が生まれた。それが主人公に位置する人物だ。
本来、家督を継ぐのは男子という決まりだが、この国の歴代国王の中に女王も存在していた。
よって第一子が女子でも、仮に弟が生まれても継承権が剥奪されることはない。
そうなると必然的に婿養子を取らなければならない。そうしないと王族の血統が途絶える危険性がある。
話を戻す。
十七歳の誕生日パーティーにて、四人の婚約者候補達と、一ヶ月間過ごすことになる。
その婚約者達とは、従兄弟から始まり、昔からの幼馴染みである上層貴族の令息であったり、隣国の第二子以降の王子達であったり……別としてゲーム内の隠しキャラである西の魔都の魔王、南の人魚、暗殺者もいたりする。
因みにハーレム、逆ハールートは、超難易度だが存在する。
最初の一週間は共通ルート。つまり、その間に気になる人物を選ばなければならない。
二週間目で、選んだ相手と半ば同棲という形で暮らすことになる。実際には主人公の隣部屋で暮らすことになるが。
選ばれなかった婚約者候補は任意で、そのまま後宮にて主人公が結婚するまで滞在することになる。何て可哀想な設定なのか。
今までの歴史上、この国の歴代の王達は側室を迎えるのは当たり前だったが、女王の場合あまりいなかったという。正直、考えたくないし生々しい。
だが問題なのは、この後だ。このゲームには主人公のライバルキャラが存在しない替わりに選ばれなかった候補者達が壁害となり、あの手この手で主人公を誘惑しに掛かって来るから大変だ。
キャラによっては極度のヤンデレ化も。絶対に関わりたくない。
だからハーレムルートが存在するのは納得できる。
本命との親密度を上げつつ、元候補者達との信頼度も上げていかなければならないが、上げ過ぎても問題なので難しいところである。
尚、ずっと城に籠っているわけではないので外に出て魔物との戦闘も、こなさなければならない。
でないと、シナリオが進まないままエンディングを迎えることになるのでフラグ回収、もといイベントを見なければパッピーエンドは迎えられない。
(つくづくツイてない……)
本編が始まるまで、あと十六年と九ヶ月。
どうしたら、継承を破棄できるか考えるしかない。