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第八話

 ブックマークの登録30件超えていました。

 自分が作品を多くの方に見ていただけて有難いです。引き続きぱーかぶる・がーるをよろしくお願いします。

 話はとんとん拍子で進んでいった。


 ロヴィアさんが使い魔で昔の知り合いと連絡をとって、次の秋から入学することが決まった。

 この世界では秋が入学の時期らしく、まだ七歳のイクサと年齢不詳の私は七歳という設定で、最小学年からのスタートだ。


 入学の時期までは後一月しかない。

 ちょっと短くない?


 学園に通う話が出てから、入学が決まるまで二日。

 入学の時期まで後一ヶ月。

 ここから学園まで約半月。


 準備期間は半月しか残っていない。

 私は学校に通っていない所為でろくに使えない前世の知識を引っ張り出しながら、自分とイクサの二人分の準備を進めていた。


 必要なものをかばんに詰める。

 あるものはそのまま詰めて、無いものは作る。

 私の技術もだいぶ上がっていて、ハンカチでもドレスでも何でも作れるようにはなっていた。


 あとは旅支度だ。

 半月も大森林の中を歩くのだ。


 方位磁石を作り、燻した干し肉を作り、水を入れられるように竹らしき植物で即席の水筒を作る。


「ヤシロー、これいる?」


「なに?」


「ヒヨを入れる鞄」


「あー、カゴのほうがいいかも。ヒヨはどっちがいい?」


 私は自分の頭上にいるヒヨにたずねる。


「ぴぃ!」


 ヒヨは短い羽で鞄を示した。


「じゃあそっち」


 こんな感じに、慌しく旅支度は進んでいく。



 数日が経ち、新たな問題が発覚した。


 ロヴィアさんが貸してくれた地図を見たところ、私たちが歩くルートは大森林の端までだということが判明した。

 ロヴィアさんに紹介状を書いてもらっているときに分かったことなのだけれど、大森林を抜けたところすぐにロヴィアさんが昔使っていた転移門があるらしい。この転移門が王国の首都までの直通なのだけれど、人見知りだったイクサは王都の人の多さに耐えられるのだろうか。

 村などの人の少ないところを経由せず、慣れない他人がいっぱいいるところにいきなり放り出されるのだ。

 一年以上もロヴィアさんとイクサ以外に他人と話をしていない私でも正直気が思い。


「イクサ、大丈夫そう?」


「・・・・・・がんばる」


 正直不安だけれど、何とかなる・・・・・・かな?




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 旅立つ当日。


「じゃあママ、行ってくる」


「いって来ますね。ロヴィアさん」


 私とイクサは、ロヴィアさんにあれもこれもと持たされた荷物をいっぱい抱えながら、ロヴィアさんとのしばらくの別れを惜しんでいた。


「今ならイクサもヤシロも森の魔物に負けることは無いけど、気をつけなきゃ駄目だからね。病気もしないように体調管理もしっかりして、ヤシロがいるから大丈夫だと思うけど川の水とかそのまま飲んだら駄目だからね。あとは・・・・・・」


「もう、大丈夫だよ。ママったら心配ばっかり」


「そりゃあ心配だからね。かわいい娘たちの旅立ちなんだ」


 その言葉を聴いて私も嬉しくなった。『娘たち』だって。

 なんだかむず痒い。


「ヤシロ、イクサを頼んだよ」


「はい。分かりました」


「ぴぃ! ぴぃ!」


 ヒヨが私の頭の上で、飛べないくせに羽ばたきながら自己主張する。


「うん。ヒヨもよろしく頼むよ」


「ぴぃ!」


 任せろ。というように胸を張るヒヨ。


「じゃあママ、行って来るね」


「ああ、いってらっしゃい・・・・・・あ、そうだ。渡そうと思って持ってきていたんだ」


 ロヴィアさんが白衣の胸ポケットから真っ赤な宝石を一つ取り出した。


「連絡用の私の使い魔を入れておいた。魔力を通せば呼び出せるから、手紙を書いたら持たせるといいよ」


「ありがとう、ママ」


「それと、イクサだけじゃなくてヤシロも近況報告をちゃんとすること。イクサに渡した使い魔に手紙を持たせてもいいし、ヤシロ自身も使い魔が使えるようになったらその子に持たせてもいいから」


「分かりました。向こうについて落ち着いたら手紙送りますね」


「ああ、そうしてくれると私も安心するよ」


 少しだけ、ロヴィアさんは瞳に涙を浮かべた。

 やっぱり悲しいのかな? 少なくとも、寂しくない訳が無い。私だって寂しいんだ。


「・・・・・・・・・・・・やっぱり」


「「やっぱり?」」


 ロヴィアさんの言葉を、私とイクサが同時に聞き返す。


「やっぱり行くの止めないかい?」


 その言葉に、私とイクサは顔を見合わせた。

 ロヴィアさんが寂しがっていることが分かって、私たちもさみしいけど、嬉しいのだ。


「大丈夫だよママ。ちゃんと手紙も出すし、学園にはお休みだってあるんでしょう? たまには帰ってくるよ」


「本当かい? 帰ってこないと私泣いちゃうよ」


 ロヴィアさんらしくないセリフ。

 それが別れの空気を少しでも明るくしようとする気遣いだとイクサも理解したようで、全員で苦笑する。


「いってきます」


「いってらっしゃい」


 こうして私はイクサと二人、大森林を歩き出した。




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