第五話
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「じゃあ、魔力測定からはじめようか」
魔法を教わりたいと言い出した私にロヴィアさんはどこからか温度計みたいなものを持ってきた。
その後ろを追いかけるように、頭にヒヨを乗せたイクサも歩いている。
「とりあえず、魔力量と適性を調べるから服脱いで」
へ? 服?
こういうのって大体魔力を流し込むんじゃないの?
疑問に思いながら私は服を脱ぐ。
「脱ぎました」
「パンツも脱いで」
今度こそ私は呆然としてしまう。なにゆえ全裸で魔力測定をする必要があるのだろう。
呆然としている私にロヴィアさんは更に驚愕の事実を告げた。
温度計のような棒を突き上げるしぐさをしながら、
「お尻から、こう・・・・・・ぶすりと」
「いいいぃぃぃやぁぁぁぁぁ!」
そんな魔力測定聞いたこと無いよ! ラノベとか漫画とかアニメでも水晶玉とか測定器とかに魔力を流して測定するものじゃないの?
なぜお尻?
私はロヴィアさんに背を向けて一目散に駆け出した。
目指すは玄関。一刻も早くこの人から距離を取らなければ。
「まあ待ちなよ」
肩をぎゅっとつかまれ、危うく転びそうになる。
私の背筋に冷や汗が流れた。転びそうになったという事実より、つかまってしまったという事実に。
「本来生まれたばかりの子供にやる測定なんだ。もちろん、イクサもしているよ。ただ、君の場合はちょっと遅かっただけさ」
ロヴィアさんの目は逃げだそうとする被検体を捕まえる研究者の目になっていた。
「異世界の人の魔力ってどうなってるのかなぁ・・・・・・話を聞く限り、魔法の無い世界から来たんでしょ・・・・・・うふふ、さぞかし面白い結果が得られるだろうなぁ・・・・・・」
ロヴィアさん! 顔が! 顔がマッドなサイエンティストに!
「おとなしくしようねぇ・・・・・・」
「ヤシロ・・・・・・がんばっ・・・・・・て」
「ぴぃ!」
「やぁぁぁぁぁぁぁ!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
私はずっと病院で過ごしていた。
頻繁に熱を出し、よくうなされていた。そんなときに処方された座薬だと思えば。
「ううぅ・・・・・・」
魔力測定が終わり、ロヴィアさんから結果を聞く。
「まぁ、大体のことは何でも出来ると思うよ」
とのこと。具体的には教えてくれないみたいだ。
「魔法はいつ教えてもらえますか?」
「う~ん、魔法よりもまずは魔力の扱い方からだからなぁ・・・・・・そうだ。私の研究の手伝いをしないかい?」
「研究の手伝い? ですか?」
「ああ。魔力を使うことが多いから練習にもなると思う。しばらく私の助手したら、今度は魔法の練習ね」
ちょっと残念。すぐに魔法を使えるわけじゃないのか。
そんな私の思いを感じ取ったのかロヴィアさんがにっこりと私に笑顔を向け、私に手をかざす。
「とりあえず、魔力がなにか感じてみようか」
ロヴィアさんが手をかざしたところから、暖かくも冷たくもある不思議な感じが私の体に降りかかってきた。
「なんだか、なんともいえない感じがします」
「これが魔力。まずは手のひらを私の手にあわせてごらん」
言われた通りに、ロヴィアさんの手に私の小さな手をくっつける。すると繋がった部分を経由して何かが引っ張られるような感じがした。
「いま、ヤシロの魔力を引っ張り出してる。このときの感覚を良く覚えてね。この感覚で自分の体の中から魔力を取り出すから」
こうかな? と手のひらに意識を集中する。
「ちょ、ストップストップ! いきなりやられたら吃驚するじゃないか・・・・・・まあでも、できてるよ。その感覚を忘れないようにね」
ロヴィアさんの言葉に頷く。
生前は自分から何か活動的なことをする機会が無かったし、やりたくても出来なかったからこういう自分の体を使った何かが出来るのが面白くてたまらない。
魔法を使える様になるのが、今から楽しみだ。
「じゃあまずは、これに今やったみたいに魔力を注いでよ」
「へ?」
そういってロヴィアさんが懐から取り出したのは深く紅い美しい羽根。
「これに魔力を注げばいいんですか?」
言われたとおりに魔力を注ぐ。
「ママ・・・・・・あれって」
「うん。アレだよ、私には手におえなかったからね。ヤシロがいて助かるよ」
ロヴィアさんとイクサが何かを話しているけど、目の前の羽根に集中していたら聞こえなかった。
しかし、いくらでも魔力を注ぎ込めるなぁ、これ。私のやり方は効率が悪いのだろうか。
いろいろと力をこめたり角度を変えたりしながら魔力の込め方を変えていく。しているうちに、色が紫に、青に、緑に、黄色に、だんだんと変化していく。
「私が一月かけて一色変えたのをあっという間にやってしまうなんて、ヤシロは便利だなぁ」
なんか今ロヴィアさん便利とか言ってなかった?
ねえ? 何? 私はいいように使われてるの?
そんなことを考えていたら、いつの間にか羽根の色が虹色になっていた。しかも、私が魔力をこめるのではなく、逆に魔力を据われるような感じに変わっている。
グイ、とひときわ多く魔力を吸われる感じがして、色が黒になり、それ以上はもう魔力を吸われることは無くなった。
「ロヴィアさん、終わりました」
「ありがとね。これからも今日みたいにバンバン手伝ってもらうから」
「ところで、その羽根は何に使うんですか?」
「ああこれ? 秘密・・・・・・というよりは違法なものかな」
「なに人に手伝わせてるんですか!」
「大丈夫。体の一部が残っていれば人が生き返る程度の薬が出来るだけだから」
「それ絶対禁忌じゃないですか・・・・・・」
マッドな研究者は法も怖くないんだなと改めて恐怖した。
「あ、そうそう。もう魔法使えるようになってると思うから、細かいことはイクサにでも聞いて」
「はーい・・・・・・えぇ?」
なんか、知らないうちに魔法が使えるようになったらしいです。
ちょっとだけ補足。
この世界では適性を持つとその適性を持った魔法もしくは能力に補正がかかります。ちょっとだけ仕様は違いますけど、ゲームで言う熟練度みたいなものです。八代ちゃんは洗浄魔法や掃除魔法のようなこの世界でネタ魔法といわれるようなものにも適性を持っています。この場合はつまり、食器洗いや掃除をするだけで能力がどんどん上がっていきます。魔力もです。ちなみに、八代ちゃんの適正に関しては次の話ですべて判明します。
この世界で一ヶ月過ごした八代ちゃんは知らないうちに魔力が膨大なことになっていたのです。ロヴィアさんはそんな八代ちゃんに自分では加工できないもの(羽根)の下処理をやらせていたのです。八代ちゃんの魔力操作の練習にもなって一石二鳥ですね。
文章力の足りなさををあとがきで補わなくていいようになりたいです。
これからもぱーかぶる・がーるをよろしくお願いします。