表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/15

第十五話

「おう、この前の嬢ちゃんじゃないか。今日はどうしたんだ?」


 転移魔法陣を利用するために学園に一番近い王都の東門をくぐったところで、聞き覚えのある声に呼び止められた。


「あ、ジェイクさん。おはようございます」


「おう、おはよう」


「ぴぃ!」


 なぜか上機嫌なヒヨも、翼を上げてジェイクさんに挨拶している。

 学校にヒヨは連れて行けないのでかごに入れている時間が長かったから、久しぶりに外に出られてうれしいのかもしれない。

 こんどから、私が部屋にいるときくらいかごから出してあげようかな。


「ははは、頭の上の鳥も元気だな」


「ぴぃっ!」


 当然だ。戸でも言うように応えるヒヨ。


「今日もお仕事ですか? おつかれさまです」


 私が挨拶すると同時に、ヴィヴィとアエリグも軽く会釈をしていた。

 けれどイクサは一度見たことのある人とはいえまだ慣れないようで、私のメイド服の裾をつかんでジェイクさんから隠れるように歩いている。


「今日はお友達も一緒か。どこへ行くんだ?」


「ピクニックで~す」


 ジェイクさんの問いに、私の代わりにアエリグが答えた。う~ん。イクサもこれくらい積極的に人に話しかけることが出来ればいいのに。


「王都からあんまり離れるんじゃないぞ。門の外は魔物とかよろしくない輩とか出ることがあるからな。あと、暗くなる前には帰って来いよ。日の入りと同時に門を閉めるから、朝まで中に入れなくなるぞ」


「暗くなる前にですね。気をつけます。私とイクサが来たときに使った転移魔法陣を使う予定なのでかなり王都から離れると思うんですけど、帰りも転移魔法陣を使うので暗くなる前には戻ってきますね」


「そうか。気をつけてな」


「はい。行ってきます」



 私とジェイクさんの会話が終わると、ヴィヴィがイクサの後ろを歩きながら言った。


「それにしても、イクサは本当に人見知りが激しいのね。今の門兵さんだって一度会ったことのある方なのでしょう?」


「うん。知らない人は誰でも駄目だけど、大人の人は特に怖いんだ」


「まあゆっくりでいいと思いますわよ。それに、私やアエリグと友達になったあとはすぐに馴染んだじゃないの。だから、まずはクラスメートと仲良くなることを目標にすればいいと思いますわ。私だって、クラスで新しく友達になったのは貴女とヤシロくらいですよ」


「あれ? アエリグとはもともと知り合いだったの?」


「知り合いというか、幼馴染ですわね」


「幼馴染?」


「えっとね、イクサとヤシロみたいな関係かな~」


「じゃあすっごく仲がいいんだね」


 イクサがそう言うとヴィヴィは恥ずかしそうに俯き、アエリグはうれしそうに戦の頭を撫でた。


「そーだよ~。すっごく仲いいんだよ~」


 アエリグはイクサのほっぺたを人差し指でぷにぷにと教えている。


 いいなぁそれ。私も今度やってみよう。


 そんなやり取りの間の短い時間で私たちは魔方陣のところまで着いてしまった。

 もともと門からそんなに距離があるわけじゃないし、手軽でいい。


 でもロヴィアさん、よくこんなところに気付かれずに魔法陣を設置できたよなぁ。許可も取ってないみたいだし。

 このまえレグルスさんがこの魔法陣を正式なものとして登録してくれたらしいけど、まだ誰も使う人はいないみたい。そもそも見つけられる人がほとんどいないから、実質私たち専用になっている。


「じゃあ、魔力を通すからみんな手をつないでて」


「わかりましたわ」


「わかったよ~」


 イクサは無言で私と手をつなぎ、イクサの手にヴィヴィ、アエリグ、最後に私と輪のような形になる。


 魔力を通すと視界が一瞬だけ、ぶれた。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 




「はい。到着」


 言った後で、転移は一瞬なんだから到着も何もないだろうと思いながら、私はちょっとだけ赤面する。


 私とイクサが王都に来る前に転移してきたときの場所――――大森林の端に私たちは居た。

 すぐ近くには草原があって、ピクニックにはうってつけ。とまではいかないものの、結構見晴らしのいい場所だ。


「じゃあ、ご飯採りに行こうか」


 私の言葉に、ヴィヴィとアエリグがぽかんとした表情で私を見る。


「あれ? イクサから聞いていないの?」


「ボクたちがイクサから聞いたのは、ピクニック行ってヤシロがおいしいご飯作ってくれるからそれを食べようってことだけだよ」


「私もアエリグと一緒ですわ」


 どうやら、イクサの説明が悪かったみたい。


「えっと、どうしようか。とりあえず今日は私とイクサだけでご飯を取りに行こうか」


 私がそんなことをイクサにつぶやくと、ヴィヴィが手を上げた。


「私も行きますわ。自分でご飯の材料を取りに行くなんて経験、めったにやれることじゃありませんもの。それに、いつか私が騎士になったとき、そう言う技術も必要でしょう?」


「ボクもいくよ~。楽しみだな~」


 アエリグもヴィヴィに乗って手を上げる。


「じゃあみんなで行こうか」


 イクサが嬉しそうな表情で言う。


「あ、私は準備があるからみんなで採りに行ってきて。三人もいれば十分だと思うから、私はここで料理の準備してるね」


「え? そうなの?」


 イクサは一瞬だけ寂しそうな顔をして、私を見る。

 そんな顔したら、ずるいじゃないか。


「わかった。私も一緒に行くよ」


「やった!」


「みんなで行ったほうが楽しいもんね~」


 アエリグが私とイクサの手をつかむと、森の中へと駆けて行く。興奮しているのか、狐耳がぴんと立っている。


「ちょっと、そんな走ったら迷っちゃいますわよ!」


「うう・・・・・・気をつける」


 アエリグはヴィヴィに注意されて、狐耳がしょぼんとたれた。


 そんなやり取りの中、ふと何かが近づいてくる気配を感じた。

 イクサも気がついたようで、私と目を合わせる。


「ねえイクサ」


「うん」


 お互いに頷きあう。

 その様子を見たヴィヴィが尋ねてきた。


「どうしましたの?」


 イクサが応える。


「お肉、来た」


「お肉? 来たって? どういうことですの?」


「ねえヤシロ~、ボクもわからないんだけど、どういうこと?」


「えっとね・・・・・・すぐわかるよ、そっち見てみて」


 私がそういった瞬間、示した方向から三メートルほどの小さい翼竜が飛び出してきた。


「・・・・・・! 翼竜、何でこんなところにっ!」


 ヴィヴィが慌てて、腰に挿していた短剣を引き抜いた。


「図鑑でしか見たことない・・・・・・Bクラスの魔物」


 いつも元気なアエリグの声のトーンが低い。呆然と翼竜を見つめている。


「お肉、これでいい?」


 イクサが尋ねてくる。


「いいと思う。近くに卵とかあればいいけどな。親子丼とか作れるよ」


「ぴぃ!?」


「大丈夫。ヒヨは食べないから」


 私たちがそんな会話をしていたら、目をぎらぎら光らせた翼竜が襲い掛かってきた。その距離はすでに十メートルもない。


「早く逃げてなさい! 私が時間を稼ぐから!」


「ヴィヴィ、落ち着いて」


「こんなときに落ち着けるわけないでしょう!」


 ヴィヴィの反応は、私が始めて熊にあったと時と同じようにパニックになっていた。まあ私よりもましだけど・・・・・・。

 この様子だと、ヴィヴィはあんまり魔物と対峙した事がないみたい。

 私たちは大森林で暮らしていたから、嫌でも魔物と相対しないといけなかった。魔物は決しておとなしく食料になってくれはしないのだ。


「イクサがいれば大丈夫だから・・・・・・ほら」


 私はヴィヴィをなだめながら、イクサのいるほうを指差す。


 一瞬目を離しただけだったけど、すでに勝敗は決していた。


 イクサの発生させたと思われる岩で出来た棘が翼竜の首と胴体、両の翼を貫いていた。

 声を上げる暇もなく、翼竜は息絶えたようでぴくぴくと痙攣している。


「お肉、お肉」


 イクサはもう解体を始めていた。


「イクサは、すごいのですね」


「イクサ、すごいな~」


 気が抜けたのかヴィヴィとアエリグの二人は呆けたまま、嬉々として翼竜を解体する姿を眺めている。


 イクサがほめられると、私もなぜか嬉しかった。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「あのいかつい翼竜がこんなにおいしいというのは、釈然としないわね」


 肉の軽くこげたいい匂いが充満した中、ヴィヴィがいう。


「ヴィヴィは細かいこと気にするね、ボクはおいしければそれいいや」


 おいしい、おいしいんだけど。と呟きながら肉にかじりつくヴィヴィの姿は、どことなくシュールだ。


 結局私は、翼竜の肉をシンプルに塩コショウで焼いた。

 ハードルが上がった今、臭みの少ない翼竜の肉は下手に手を加えるより素直に焼いてしまえと思ったのからだ。


 二人ともおいしそうなので、それでよし。


 イクサもほっぺたに食べかすをつけながらお肉にかぶりついていたので、私はそれを指でぬぐってあげる。

 そのままぺろり・・・・・・するにはちょっと勇気が足りなかった。

 生前漫画とか読んでるときとに、そういうシーンがよくあった。まねをしようとしてみたけど、いざやろうとすると恥ずかしい。


 漫画のヒロインとか、よくそういうことできるなぁ。

 私には恥ずかしいので、いつかやってみたいな、とだけ心に留めておく。


「ねえヤシロ」


 イクサが自分の手に持ったお肉を見ながら、私へと声をかけた。


「どうしたの?」


「この前ヤシロが作ってたアイテムボックスって、お肉保存できる?」


「うん。中の時間は止まってるから一回入れちゃえば腐らないよ」


「あたし、もっととってくる。今度寮でもヤシロの料理作ってね」


 それだけ言うとイクサは森の中へと駆けて行く。


 なるほど。今のうちに買いだめ・・・・・・というか材料を調達しておいておけばしばらくは寮でもおいしいものが食べられるのか。

 イクサは頭いいなあ。


 余談だけど、イクサがとってきたいっぱいの『お肉』を見てヴィヴィとアエリグが目を丸くしていた。。魔物の肉ってくらいで、そんなゲテモノは混ざっていないから食べられるはず・・・・・・。


 魔物の肉を見知らぬ他人に出すのはやめておこう。そう思った。







 書き溜めてあった分終わっちゃいました。

 個々からの展開は決まっているんですけどどうつなげていいか分からない・・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ