勇者様の幼馴染
「…ここは…?え?私は…」
私、天音凛々亜は、車にひかれて死んだ……はず。
「え?…ここどこ!?」
周りを見渡ても…木、木、木。そう、森なのだ。
そして、こんな森は私が住んでいた日本には存在しない。
…えっ…もしかして…異世界トリップってやつですか!?
「…いや…異世界トリップって…」
まあ…こんなとこでうじうじしてても仕方がない…街に行こう。っえ?なんでこんなに前向きなのかって?それは…家族と幼馴染のおかげかな(黒笑)…?…あの狂者どもが…。
そんなことを考えながら立ち上がろうとした時…
「わお…」
……魔物?と出会いました…。
「まじ?…こりゃ完璧トリップだ…」
黒いオオカミのような魔物?はよだれを口から垂らしながら今にも飛びかかって来そうだ。
一歩一歩下がりながら対策を考える。
魔法とかよくわからんし…剣もない………逃げるか…。
そんなことを考えていると…オオカミに向けて矢みたいなものが飛んでオオカミを一撃で倒す。
…すご…。
足の力が抜けその場に座り込んでしまう。
「おい!!大丈夫か!?」
助けてくれたと思うおじさまが声をかけてくれた。
言葉は通じるのでひとまず安心して、事情を話すと保護してくれた。ちょー優しい…。
なんとこのおじさまは貴族様でした。王家ともつながりを持つ公爵様で、この国にまれに異世界人が現れることを知っており、王様に話をとうしてくれた。私が異世界人と知っているのは王様と王妃様、上司である第3王子のみである。公爵様の名前はガル・ウィーン・ファントラ。私のこちらでの名前はリリア・アーナ・ファントラ。名前のとうり私は公爵様の養女となった。周りが何も言わないのは、おじさまが王家とのつながりを持つ公爵様だからだろう。
「…召喚された勇者は黒髪黒眼だったが…もしかしてお前の祖国の人間か?」
召喚式が終わり、勇者に休養をとの王女様の命で執務室に戻ってきた殿下と私。さすが、殿下というところか鋭い。
「…そうでございます。」
「それにしては嬉しくなさそうだが?」
本当に鋭い人…。妖艶な笑みを浮かべて問いかけてくる。
「…そうですね。少々ありまして」
これからのことを考えるとねー…嬉しくないわけよ。
「そうか。あの顔では女に相当やられていたであろうな。」
あなたには言われたくないですけどね…?相当ひっつかれていましたよ。こっちに被害が出るくらいに。
「そうでしょうね」
あいまいな笑みを浮かべておく。
「まあばれないように気をつけておけ…ばれたら…わかっているな?」
妖艶な美しすぎる笑みを浮かべ念を押してくる。
背後に黒いのが見えたのは幻覚だと信じたい…。綺麗すぎる笑みは怖い…。
お願いだからそういう笑みは周りのご令嬢方に向けて下さいーーーー!!
「わかっております」
そう返事をして笑みが怖いのでそそくさと部屋を出る。
こいつは本当に分かっているのだろうか…。
はあ…。と溜息をつく。
異世界から来た女。そう聞いた時興味も持たなかった。
会ってみると…自分の周りにいる女達と全てが違っていた…。
自分を見てもなんの反応を示さず、何かを要求するかと思えば「仕事を下さい」。
すぐに紹介できたのは軍隊しかなく、軍隊に入れると…数年で史上初の女性将軍位にまで上り詰める実力。
今は将軍兼俺の側近として完璧に仕事をこなしている。
賢くそれでいて美しい。自分では気づいていないのだろうがリリアはそこらへんの女より何倍も美しい。
「俺の考えを知ると逃げるんだろうな…。」
逃げても追いかけて捕まえるがな…。
それにしても今回の勇者召喚…。勇者を見た瞬間のリリアの顔は一瞬驚いたような顔をした。
おそらく知り合いなのだろう…。
「まあ…だれであってもリリアは渡さない。」
黒い笑みを浮かべながらルヴァルトは今後について策を練るのだった。