表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽性の王  作者: とーか。
4/5

出逢いと駆け引き

 白木の扉のその向こう。そこには色とりどりの花々が咲き乱れる庭が広がっていた。

 そのあまりの美しさに、リンは息をのんだ。

 庭の中央あたりに立派な噴水があり、そこにキラルは微笑を浮かべて腰掛けていた。

 まるで、美しい絵画中にでもいるかのような感覚に陥る。


「初めまして。そして、お誕生日おめでとうございます。キラル王女…」

「ありがとうございます。リン王」


 キラルは挨拶を終えると、自分の隣を示した。それに従い、リンも腰掛ける。


「わざわざ来て下さって、ありがとうございます。大変でしたでしょう…」

「いいえ、全然!戦争での遠征に比べたら、可愛いものです。あなたにお会いできて光栄です。キラル王女」

「わたしこそ、ミリューニアの若き王とお会いできて光栄です」


 二人はお約束の挨拶を交わした後、真っ直ぐに互いを見つめた。二人は風が吹こうが、軍竜の咆哮が聞こえようが微動だにしなかった。

 やがて、キラルが目を閉じて、ふぅと息をつき肩の力を抜いた。リンも力を抜き、自然体になる。


「大抵の方は、わたしに恐れをなして、目をそらすのですが…」

「イオーニアの“狂戦士”(バーサーカー)たちの殺気の籠もった眼差しに比べれば、可愛いものですよ。彼らの紅い目と顔の恐ろしさときたら……。一人につき軍竜10体分相手にするほうが、はるかにマシです」

「遠く西の…砂漠が広がる地域でしたっけ?イオーニアは。そんなに恐ろしいのですか?」

「ええ。フリージスが竜なら、彼らは巨大蠍(スコーピオン)や毒蛇を使ってきますから。それにやたらと力が強くて、私の剣なんて、4振り粉々にされました…」

「えっ!ミリューニアの剣は大陸随一の強度を誇る、無壊の剣のはず…!それが4振りも粉々に…?」


 キラルの表情が変わる。先程まで浮かべていた微笑みは消えて、真剣な顔つきになった。


「もし、中立国家同盟軍を率いて、開拓に乗り込むおつもりなら、やめるのが賢明です。無駄死にする兵や民が増えるだけですから…」

「なるほど…。今のうちにお聞きできて良かったです。近々、リン王の仰るように、イオーニアの近辺へ、資源確保の大儀を掲げた行軍がなされることになっていたので…。今のお話、父様にお伝えしようと思います」

「ぜひそうして下さい。国とは民の存在があってこその存在。民の存在無しには、存在できませんからね」

「素敵なお考えです…。本当に。…って、わたしったら…せっかくのお見合いなのに、どうして政治の話なんか……!」


 ハッと気づいたように、キラルは頭を抱え、顔を赤く染めて、プチパニックを起こし始める。

 それを見たリンは声を出して笑った。キラルの百面相がツボに入ってしまったようだ。


「大丈夫ですよ。私も同じですから。どうしても話題が政治のほうに転がるんです。何故かね…」

「あ、そうなんですか…」

「さて…。そろそろ、本題に入っても?」

「…どうぞ、構いません」


 二人の間に再び緊迫した空気が流れ始める。キラルは背筋を伸ばし、真っ直ぐリンを見つめ、リンは堂々と構え、やはりキラルを真っ直ぐ見つめる。

 王族同士の結婚とは、国の命運が掛かった駆け引きと同じだ。さらに、血筋の強化も兼ねた駆け引きだ。 少しでも、強い国と関係を持ち、優秀で濃く、高貴な血を保てるか。国の発展にはどれも必要な要素だ。

 正直なところ、フリージスとミリューニアでは、歴史も格も差がありすぎる。

 緊迫した空気の中、先に口を開いたのはリンだった。


「私は私より国や民を想える者でなければ、女であろうと男であろうと、我が国ミリューニアに迎え入れるつもりは断じてありません。だからこそ、“貴方”に問います…。自身よりも、私よりも、国や民を愛せますか?」


 その台詞に隠された意味。それは、『キラルを気に入った』ということ。『答え次第では、ミリューニアに迎え入れる』ということ。

 つまり、この縁談を是とするということだ。この質問に対するキラルの答えによって、縁談が成立するか否かが決まる。

 キラルは一旦、瞳を閉じて深呼吸した。

 やがて答えが出たのか、リンを真っ直ぐ見つめ、凛とした声で告げた。


「無論です。“貴女”の仰る通り、国とは民無しには成立しません。王の役目は国を愛し護ること…。ならば、国を形作る民も愛さねば…。それはどの国であろうと、絶対に曲げてはならぬ真実ですから」

「キラル王女……!」

「それに、元よりわたしは…“貴女”からの求婚は断らないと決めてましたから」


 思わずリンは固まった。予想だにしてなかった答えだったから。

 キラルは5人の兄や王とともに議会に出席し、さらには、各国の同盟や条例の締結などもこなしている。そして驚いたことに、つい一年前に起きた【中立国家群内暴動】の無血鎮圧を一人で成し遂げている。

 それに対してリンは、戦争による旧領土奪還と領土の拡大。そして財政改革といった国内規模の功績しかない。

 こんなにも差があるにも関わらず、どうして自分の求婚を受けてくれるのかが、どうしてもリンにはわからなかった。

 しかしリンも、肖像画を見たときから、キラルの誠実さを直感していたため、もし向こうから求婚を求めてきたなら、許諾しようと決めていた。


「私も、もしそちらから求婚がきたら、許諾しようと思っていました…」

「本当ですか!何か、運命のようなモノを感じますね…。こんな展開、物語の中だけだと思ってました…!」

「私もです。正直、実感が湧きません…」


 リンは苦笑しながら、頬をポリポリと掻いた。

 キラルもまた、満面の笑みを浮かべていた。


「けれど、いきなり夫婦というのもアレですから、とりあえず友達になりませんか?」

「友達?」

「はい。正式な婚約発表は、お互いをよく知った後でもいいと思うんです。互いを呼び捨てで呼んだり、タメ口を使ったり、遊んだり…。どうでしょう?」

「なるほど…。それに私たちの場合、このまま性別を偽ったまま生きるかどうかなども決めねばなりませんしね…。いいと思いますよ、友達。それに、少し憧れでもありましたし」


 するとキラルは手を叩いて喜んだ。そして、じゃあ次からは呼び捨て、タメ口でいきましょう!と言って、ニッコリとした。


「何はともあれ、これからよろしくお願いしますね!リン」

「ああ、私の方こそよろしく。キラル」


 二人は握手を交わして、見つめ合った。

 そして、そのまま仄かに頬を紅く染めた――。

 まだ夏を引きずったままの秋の風が、二人を包んだ。

こんなこと、作者が言っていいのかわかりませんが…。

こいつら、何者?!つか、甘い!甘すぎるよ!!砂吐きそう!!!

セリフとか友人にアドバイスもらって、納得して反映した結果が“コレ”。

当の本人(友人)は「まだまだカタくて苦いわ…。リア充までまだ遠いし、砂糖に換算してもスプーン(小)の先っちょにもならんわ!もっと甘くてもイケる」とか言っていましたが…。


ホントかい?それ。


それはさておき……。ようやっと二人をくっつけることができました…。

二人とも自分の国がとても好きで、とても真面目。故にウブ。

だったはずなんですが……―――。

キラル。あんた、男捨ててないね?“狼”なの隠してるでしょ?すっごく積極的だったんだけど?押せ押せなんですけど!?設定の“清楚”という言葉、どこ行った!!??


……何はともあれ、これからもよろしくお願いします。

感想なんかくださると、私、昇天する勢いで喜びます!!


次回は『お義父さん、娘さんを私に下さい!!』的展開か、例の馬鹿王子の話を予定しています…!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ