神様の悪戯1
今日ホームコースの月例で自己ベストの更新に成功した。
17番ホールを終わって5バーディ、ノーボギーの完璧な内容だった。
最終18番PAR5のティショットを無難に打ち、セカンド地点へ。
ピンまで235ヤード。
いつもはグリーン手前の池があることもあり刻むことがセオリーになっている。
3週間前の朝、目が覚めるとかなり身体に倦怠感があり、検温してみると39度近い熱が出ていた。
喉に違和感や腹痛、頭痛は無くただ熱が出ているだけだった。
ひとまず薬で熱を下げたが、数時間後には熱は上がっていた。
若い頃からほとんど病院には行かなかったが、インフルエンザも流行り出したとニュースでも言っていたので、近所の病院で診察することにした。
診察の結果、インフルエンザでもコロナでもないことがわかった。
薬を出すのでそれ飲んで熱が下がらない日が続くようならまた相談してくれと言われた。
数日後、熱が下がる様子が無いことから再び医師に相談したところ、もう一回レントゲン撮ろうかということになり応じた。
胸のレントゲンから左胸部に影があることが判明したため、紹介状を書くので精密検査を受けるよう言われた。
この前来た時のレントゲンではわからなかったのかと心の中でぼやきながら帰宅した。
そして、翌々日、紹介先の病院で精密検査を受けた。
その結果は最悪のものだった。
左肺に悪性腫瘍及び膵臓にも転移が認められ、
外科手術の可能性を聞いてみたが、時すでに遅し...
進行度は既にステージⅣにきており、放っておくと年内いっぱいは難しい...。
「俺、死ぬんか」
脳内で繰り返し唱えていた。
医師から抗がん剤及び放射線治療の説明がされていたようだが、殆ど覚えていない。
病院から出てみると外はいい天気だった。
そこから沸き起こった感情は恐怖ではなく、非常に不謹慎かもしれないが、清々しい感じだった。
これで人生を終わらすことができる...
抗がん剤や放射線治療などする気は毛頭無く、残された短い日をどのように過ごそうか。
当然無念さはある。
子供達の成長、自身のやり残したこと...
グリーンが空くまでの間、そんな事を考えていたら涙が溢れてきた。
悲しくてか悔しくてかわからない。
ただ情けなく感じていた。
とにかく目の前の事だけは悔いがないようにやろうと心に決めるのが精一杯だった。
キャリー220ヤード打てればなんとかなる。
渾身の一球はグリーンエッジにキャリーしてピン横6mにナイスオン。
出来すぎた人生最後のショット。
次のパットを人生最後のものにするべくこれまでかけたことないくらい時間をかけてラインをイメージした。
悔いがないように。
ショートだけは避けることを心がけて放った球はイメージ通り転がりナイスイーグルとなった。
ベストスコアを3打更新する67。
人生最後のラウンドは最高だった。
帰りに中古ゴルフショップへ行き、ゴルフ道具は全て処分した。
これから恐怖心が芽生えるのかわからない。
いつまで身体が動くものなのかもわからない。
大した事はできそうもないが目の前の結果に拘っていく。
悔いがないように。
〜おわり〜




