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リアルファイトお嬢様  作者: ノリカワショーガ
エピローグ

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エピローグ 最強のお嬢様

 目を覚ますとそこは学園診療所の医務室で、ベッド脇ではライムちゃんが付きっきりで看病してくれていた。


 うつらうつらしていたライムちゃんは、わたしの覚醒と同時にパッと目を覚まし、足早に医務室を出て八千重ちゃんを呼んできてくれた。

 既に陽は落ちていて、交代で看病してくれていたらしい。


 そしてわたしは八千重ちゃんから、気絶している間に起きた諸々を聞かされた。


 一つ目、一ノ瀬イスカは紅華により身柄を拘束され、離宮の総合病院で事実上の軟禁状態にあること。


 二つ目、お嬢様会談が狐面の一団【マスカレード】によって襲撃されたが、輝知会長たちが難なく制圧したこと。

 三校の分断工作を仕掛けて離宮騒乱の引き金にしようとしたものの、失敗に終わったそうだ。


 襲撃者は主に、お嬢様事変後に離宮を出た生徒で構成されていたが、黎明学園と聖イリア校の生徒も一人ずつ含まれていた。

 三校の代表は徹底的な独自調査と報告を約束し、富良さんが提言した桜仙花学園への立ち入り調査は一旦見送りとなった。


 三つ目、ライムちゃんの襲撃に関しては、脅迫によるものということを八千重ちゃんから輝知会長に説明し、恐らく不問になるだろうとのこと。

 それを聞いてわたしは胸を撫で下ろした。


 ライムちゃんは自分がヤクザの娘であることを八千重ちゃんに話したものの、八千重ちゃんはその秘密を守ると約束し、輝知会長には『鶴巻ライムの実家に圧力をかけると脅された』と説明したそうだ。

 まぁ嘘じゃないよね。


 話が一段落したところで、下校時刻後も学園に残っていた輝知会長と中津川先輩、火虎先輩が医務室に到着した。

 八千重ちゃんはその場に残ったものの、ライムちゃんは部外者ということで気を遣ったのか、さり気なく医務室の外に出てしまった。


 紅華三花弁がわたしのために集まったのを見て、わたしはひどく落ち着かない気持ちにさせられた。

 直立しようとして制されたものの、せめてもの敬意を示そうと、わたしは起こした半身をまっすぐ伸ばす。


 輝知会長は体の前で両手を揃え、深々と頭を下げた。


「高遠さん、弥勒寺さん、此度は大変な事態に巻き込んでしまい申し訳ございませんでした」


「紅華の新会員に不埒者が紛れ込んだのは俺の責任でもある。悪かった」


「そして、ありがとうございます。お二人が一ノ瀬さんの目論見を見破り、止めてくださったおかげで、間違いなく被害は最小限に抑えられました。きっと調査も進展することでしょう」


 輝知会長に続き、火虎先輩と中津川先輩にまで謝意を示されたものだから、わたしは大慌てで両手を振り回した。


「いえ、輝知会長たちが頭を下げることじゃないですよ! 紅華に入った時点でトラブルは覚悟の上です。そりゃあ、イスカちゃんと戦うことになったのはショックでしたけど……」


「ええ。一ノ瀬さんが闇堕ち(ダークサイド)お嬢様になった原因があるとすれば、その責を問われるべきは、きっとわたくしどもの方ですから」


 わたしに続く八千重ちゃんの台詞は、しんみりとしたものだった。


 イスカちゃんは自分のことをしばしば『しがない公務員の娘』『庶民』と自虐していた。

 最強のお嬢様に固執するきっかけになった、その劣等感の根幹に、内部進学組の八千重ちゃんには心当たりがあるのだろう。


 所詮は結果論だし、何をしたところで変わらなかったかもしれない。

 それでも、わたしも考えずにはいられない。


 わたしがもっとすごいお嬢様だったら、イスカちゃんはあんな歪んだ野心を抱くことはなかったんじゃないか。

 もっとイスカちゃんと言葉を交わしていれば、彼女の心の闇に気付くことができたんじゃないか……と。


 俯くわたしの脳裏に、イスカちゃんの爽やかな笑顔と残忍な表情が交互によぎる。


「それに……不安もあるんです。イスカちゃんが言っていた【マスカレード】のこと、結局ほとんど分からないかもしれないですし……」


 マスカレード。

 第三次お嬢様事変を引き起こさんと画策する、離宮第四の勢力。


 イスカちゃんとお嬢様会談の襲撃組は制圧できたものの、長期的な安心とは程遠い。


 賛同者は他に何人いて、元締めが誰なのか、そもそも彼女たちは一つの目的やリーダーの元で動いているのか……全てを詳らかにするまで、離宮の危機が去ったとは言えない。

 ただでさえ他校との関係だって未だに緊迫しているというのに。


 八千重ちゃんも同じ懸念を抱いた様子で、険しい表情で顎に指を当てる。


「『誰も知らないけど、どこにでもいる』……不気味ですわね。あまり考えたくないですが、お嬢様武芸(アーツ)の資料が漏洩したということは、紅華の中にも他に内通者がいるかも……」


「そんなの、何もビビる必要なんざねーだろ」


 わたしたちの懸念をばっさりと切り捨てたのは、火虎先輩だった。

 彼女の自信満々な一言を、中津川先輩が鷹揚に頷いて肯定する。


「ええ。名前も顔も出せない、信頼できる仲間すら作れない臆病者など、紅華の敵ではありません。警戒する余地が生まれた分、むしろ状況は大きく改善されたと言えるでしょう」


 目指すべき強者から断言され、わたしの中に希望の光が灯る。


 輝知会長は胸に手を当て、噛み締めるような口調で語り掛けてくる。


「心を強く持つのです。あなたがそうすれば、少なくとも一人、闇に堕ちるお嬢様が減る。その誇り高き生きざまは、さらに多くの悩めるお嬢様を救う道標になる。それさえできれば、誰もが彼女たちにとっての【最強のお嬢様】なのです」


 そして、わたしと八千重ちゃんに順に視線を送り、柔和に微笑んだ。


「それでも迷ってしまいそうな時は、唱えなさい。魔法の言葉、紅華の訓示を」


「「はい!」」


 わたしと八千重ちゃんは、揃って胸に手を当て、その言葉を口にした。


『気高く、優雅に、したたかに!』


 ――わたしたちの戦いは、これからだ!


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