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とりあえず手にした冊子を読み進める。
途中、さらりと読める内容ではないと気付き、近くの椅子に腰を下ろした。
ただただ頁を捲る乾いた音だけが響く。
予め部屋から出るまで声掛け他全て不要…と、ティルシーやポーラ達に言っておいて正解だ。
少し休憩にと、詰めていた息を吐くと同時に目を閉じる。
なるほど、と言って良いのだろうか……。
少なくとも最初にこの部屋を見つけたのが、ティルシーではなかった事に感謝する。
もしかすると……いや、間違いなく両親でもこの部屋の封印を見つける事は出来ただろうが、やはり見つけたのが自分で良かったと、心底思う。
エリルシアには前世以前の別の記憶がある事で、こんな荒唐無稽な話もそれなりに受け止められるが、ティルシーや両親なら間違いなくパニックになっていただろう。
ざっくりと言うなら、祖母ティリエラは蔓の姫……調整者の血筋らしい。
魔力がなくとも問題はなく、ただただ知識や術を伝える血筋。
尤も、全ての知や術を伝えられている訳ではないと書かれている。
やはり間隔が長すぎて、消失したり曖昧になった事も多いみたいだ。
そして蔓の血。
童話…こうなると童話とはとても言えないが、其処に出てこない存在、これは管理者。
エリルシアの家ウィスティリス家や母エリミアの生家ヴィンデ家の血筋がそれにあたる。
こちらは魔力を必要とするらしい。
最早エリルシア以外に魔法を行使出来る者等居ない訳だが、魔力器官さえあれば良いと言う性質の話なのだろうか…その辺はまだわからない。
わからないが、ロザリーが以前『視ろ』と言ったのは、エリルシアやティルシー、そして両親にしか魔力器官を見つけられないと言う事だと思われる。
後で確認してみれば良い事だ。
そして宝玉と冠されたのは、瘴気の対処の為に集められた魔素の事。
何故か動くし、喋る事も可能なロザリーがこれに相当するだろう。
元々単なるエネルギー体なので、固有名詞なんてロザリーのような特殊個体でもなければ必要なさそうに思えたが、これにも理由があるようだ。
瘴気の集まりやすい土地の性質によって、集まる魔素にも差が生じるらしい。
ウィスティリス領なら水に関連した事象……今回のように水不足になる場合が多いようだが、反対に水量過剰になる場合もあったようだ。
そして過去、ウィスティリス領のある地域はロザントスと呼称されていたのだと言う。
だから『ロザリー』。
そして祖母や母の故郷ネデルミス王国のある地方は旧名ケテーシア。
だから『ケテル』………『杯花のケテル』。
そのケテルの管理者が、母エリミアの生家、ヴィンデ家と言う事だ。
(でもヴィンデ家って、ネデルミスでは既に没落と言うか…絶えたんじゃなかったかしら?
没落してお母様も路頭に迷うか身売りするか…と言うまでに追い込まれていて、其処へ御祖母様が関与してお母様をウィスティリス家へ迎えたとか…そんな話は聞いたような気がする…。
でも、それってネデルミス王国から管理者が居なくなったと言う事では?
ケテルが担当する災厄には、普通に考えてヴィンデの血が必要よね?
でも、ヴィンデの生き残りであるお母様はロズリンドに居る訳で……。もしかするとヴィンデ家は絶えた訳じゃないって事?
ん……わからない事が増えていくわね…。
あぁ、それに、よ!
御祖母様の公爵家が調整者だと言うなら、こんな重要な資料諸々をロズリンドに持ち出して良かったの?
ぃゃ…まぁ、調整者って各地を巡って異変対処の調整するのが本来の仕事だったようだけど、それにしたって…)
話は繋がっていくが、疑問も同時に増えていく事に、エリルシアは疲れた様に溜息を零した。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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