93 夢現想余談 ◆◆◆ 冒険者ギルドの強婦 2
さらりと息抜きお仕置き回……。
彼女達はこの地で冒険者として活動する者なら、知らぬ者は居ない面々……誰が呼び始めたかは知らないが、人呼んで『冒険者ギルドの強婦』
ま『恐怖』でも『凶斧』でも『狂歩』でも何でも良い。
詰まる所、冒険者ギルドで逆らうのも恐ろしい女性達と言う事だ。
一人は受付カウンターの主で、屈強な荒くれ冒険者達をビシバシ捌いてカウンターの平穏を守るお局。
一人はギルド内に併設された解体場で大鉈を振り回す女傑。
一人はギルドの近所にある酒場で、冒険者達の肝っ玉母さんとも呼ばれる女将。
最後の一人は、歴戦の冒険者でもあるツワモノだ。
そんな豪傑集団に、新米女性達はヒッと震えあがる。
「あぁ?
で?
誰が何だって?」
4人の内、武骨な直剣を携えたベテラン冒険者であるデマンの姐御がにこやかに問いかけるが、その目は全く笑っておらず、周囲の温度を引き下げている。
それもある意味当然だ。
デマンだけでなく他の3人もこの領で生まれ、育ち、生きてきた。
だが原因不明の水不足に陥ってしまい、誰もが絶望し、もう浮民となるしかないか…と思い詰めるまで追い込まれた。
浮民とは生まれ育った土地や縁を捨てて、他へ流れる者の事を指す。
そうなれば、多くは最底辺の違法肉体労働に就くか、最悪犯罪者にでも堕ちるしかない。
それを瀬戸際でなんとか踏ん張ってくれたのは、前領主夫妻とその孫であるエリルシアだ。
当代の領主夫妻が王都で頑張ってくれているのも、勿論知ってはいたが、やはり目に見える所で苦楽を共にしてくれたエリルシア達への感謝の方が大きい。
4人は女将が切り盛りする酒場に向かう途中で、新米女性達の声を拾っただけだが、ウィスティリス領の冒険者ギルドで登録している貴族子女なんて、該当するのはたった一人だけだ。
強婦達も一番大事にしている領の宝、エリルシアしかいない。
その宝であるエリルシアに何かしたとなれば、捨て置くなんて出来るはずがない。
「貴方達、確か…ちょっと前に北のサシヨシ領から流れてきた新米……だったわよね?
ファングに憧れて来たとか何とか……。
まぁ、そんな軽そうなお頭じゃぁ知らないのも仕方ない…かしらねぇ…」
含みアリアリな言い方をするのはカウンターのお局だ。
冒険者を名乗る者にとって頭の上がらない存在である彼女に、こんな言い方をされると言うのは新米達には心臓に悪いだろう。
現に新米二人の顔色は悪くなる一方だ。
「おめぇら、うちらの嬢ちゃんに何したんだよ」
解体場の女傑はかなり体格が良く、一見デマンよりも冒険者らしく見える。
正直、ギルドマスターに怒鳴られるより怖い。
「な……な、にも……」
斥候女性の方も薬師女性の隣にへたり込んだ。
そんな新米二人を、4人の強婦達が取り囲んで見下ろす。
「やだよぉ、何をそんなに怯えてんだい?
ま、折角だし、ちょーーーっとうちの店にいこっか?
こってりたっぷり話し合いといこうじゃぁないか…ね?」
場違いな程声は明るいのに、纏う空気が剣呑な女将が、へたり込んだ新米冒険者達の首根っこを引っ掴んだ。
「ぃ、いやーーー! た、たすけ、て!!」
「勘弁してください!!」
女性とは言えそれなりに装備も身に着けている冒険者2名を、事も無げに女将は引き摺って行った。
それを思わず見送る3人。
「最近の新参ってほんと質が下がったわよね」
「まぁなり手がないよりはいいんだろうけどなぁ……つっか、いい加減解体したい……もうサキュンツァの世話は飽きた…」
「贅沢言ってんじゃねぇよ。
どのみちアレで荒稼ぎも終わりだろうさ……って、あたいらも早く行かないと!」
「あぁ、美味しい所全部持ってかれちまう!!」
「彼女達を締め上げるのに参加出来ないなんて嫌だわ…早く行きましょ!」
その後、新米女性冒険者達がどうなったかは…………ま、知らぬが仏であろう。
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