92 夢現想余談 ◆◆◆ 冒険者ギルドの強婦 1
自分達が理不尽に詰め寄ったエリルシアの機転のおかげで、ファングにヤバい場面を見られずに済んだ斥候と薬師女性コンビ。
町外れからギルド横の脇道まで駆け抜けて来たのか、二人共肩で息をしている。
上がる息を壁に凭れて何とか整えた。
細い脇道だから少し薄暗く、大通りの方の明るさに目を細める。
「はぁ…はぁ……」
「……ッハ……ちょ、ちょっとぉ……ヤバい、ん、じゃない?」
薬師の方が不安を隠しきれない様子で、斥候女性の腕に縋りついた。
「な…べ、別に彼に見られ、なか…ったんだから、だ、大丈夫……大丈、夫よ」
まだ呼吸が整わないのか、途切れがちになる言葉に、薬師女性は頭を抱えて座り込む。
「ちょ、こんな所でへたんないでよ…」
斥候女性が、座り込んで俯いたままの薬師の腕を取って立たせようとした。
その間も周囲をきょろきょろと忙しなく見回す。
脇道とは言え、全く人通りがない訳ではなく、彼女達の脇を抜けようとした数人に、迷惑そうな顔をされる。
もう少し奥へ行けば、冒険者達が贔屓にしている露店や酒場があるのだ。
依頼を終えた冒険者達の多くが馴染みにしている店なので、もうちょっとだけ遅い時間になれば知り合いも通る事だろう。
ここのギルドへは流れて来たばかりだが、それなりに顔見知りも増えつつある。
「………あたしら…不味い事しちゃったんじゃ…」
「はぁ?
今更何よ」
「だって…だってよ?
彼女貴族の娘なんだよね?」
「あ~…何かそんな話だった…かも?」
「『かも』じゃないって!!
あの子、あたしらとは違う空気纏ってたし……どうしよ…お貴族様に手打ちにされたり…」
「もう!
ビクビクしたってしょうがないじゃん。
それに貴族ったって、冒険者登録するくらいなんだから、あたし等とそんなにかわんないって。
きっと男爵とかの娘でしょ」
薬師の女性は斥候女性の言葉に納得がいかないようだ。
「でも……」
「あぁ、もう!!
鬱陶しいなぁ……全部今更だって。
それにあの子が悪いんじゃん?
ファングだってあの子から離れてくれれば、絶対にあたしの方を見てくれるはずなんだから!」
「でも、彼女だって子供だから気に掛けられてるだけって言ってたんだし…」
「そんなはずないでしょ!?
だったらなんでファングは、ウィスティリスのお嬢とかってずっと見つめてんのよ!!
絶対あの子がファングに付き纏ってんの!!」
徐々に声のトーンが上がり、行き交う人の視線が集まるが、彼女等はそれに気付いていない。
そんな彼女達に不意打ちのように声が掛かった。
「へぇ、何の話?」
ビクリと飛び跳ねて声の方を振り向けば、数名の女性の姿が見えた。
見知った女性達の姿に、斥候達はホッと胸を撫で下ろす。
「も、もう……驚かさないでよね…」
声を掛けてきた女性の一人が、なんとも嫌な笑みを浮かべて先を促す。
それを目にした斥候と薬師の女性達は、言い知れぬ心地悪さに身を震わせた。
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