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やっぱりわからない。
何処からどう突っ込めば良いのやら…だ。
ファングとその弟分のソッドは、確かに気に掛けてくれている。
だが、別に毎日顔を合わせている訳ではないし、元冒険者仲間だったと言う部分が大きいだけで、思わせぶりな態度や言動を向けられた記憶も特にはない。
エリルシアとしては言い掛かり以外の何物でもないのだが……。
「ちょ、ちょっと! 聞いてるんですか!?」
おっと……思考を彼方に飛ばしていた事がバレたかもしれない。
いけないいけない…と、エリルシアは表情を引き締める。
「いえ、どう説明するのが良いか悩んでいただけです。
ですが、あれこれ回りくどく言っても仕方ないと思い至りましたので…。
その…はっきり言って大いなる誤解をしていらっしゃいます」
エリルシアのきっぱりとした態度と言葉に、斥候女性の方は思わずと言った感じで、半歩引き下がった。
だか直ぐに前のめりになって、鼻息も荒く畳み掛けてくる。
「誤解って…誤解な訳ないでしょう!!??
だって、そうだったらファングがあたしに靡かないなんて事ないんだから!!」
頭に血が上ってるみたいだ。
彼女は自分の発する声と同調する様に、両手を拳に握りしめて振っている。
これはどうしたものだろう……何を言っても冷静に聞いて貰えそうにない……というか、自分の考えが正しいと思い込み、エリルシアの言葉を聞く気なんて端からないように思える。
だからと言って放置するのも……無駄と知りつつ自分の身の潔白だけは主張しておこうと顔を上げた。
「彼が何か言ってたのですか?
私のせいだとか何だとか……?」
ちょっとは届いたらしい。
斥候女性は大きく動かしていた拳の動きを止めて固まった。
「ですから、彼が私のせいで貴方を受け入れられないとか、そう言う事を言ったのですか?」
「…そ、れは……」
斥候女性(名前がわからないのだから仕方ないのよ!!(泣))は更に小さく『そうじゃなけど』と続けたのを聞き逃さない。
「そうでしょうそうでしょう。
私はですね、彼にとって後輩にあたるのです。
彼はなんだかんだで、とても面倒見の良い方ですよね?
それは貴方も御存じなのでは?」
そう、冒険者ファングと言う男性は、不愛想だが面倒見の良い男…これに尽きる。
冒険者としての腕も悪くはなく、評判も上々だ。
その上なかなかのイケメンで、体格にも威圧感はない。
つまり、不意に視界に入ってきても、ビビり上がる可能性は低い。
エリルシアからすると、気付いたらいると言う状態でビビる訳だが…。
それはさておき、目の前の難癖をつけてきた女性達も、少なくとも1度や2度はファングの世話になっているはずだ。
まぁそれが切っ掛けとかで彼に惚れ込んだのだろうが、振られた原因をエリルシアに求められても困る。
「…ぇぇ…それは…はい…」
「つまりですね、彼から見れば、私の様なオコサマは庇護対象なのではないかと思います。
だから私に構っているように、気に掛けているように見えたのではありませんか?」
嘘は言っていない。
事実、何度も『子供なんだから守られてろ』『女の子なんだから云々』……上げ始めれば枚挙に暇がない。
要は過保護なのを男女間の恋情と勘違いされても、エリルシアだって困る。
ファングは更に迷惑に思うだろう。
更に念押しの言葉を口にしようとしたところで、微かにガサリと何かを踏みしめるような音が耳に届いた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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