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父親に一喝されて追い払われた女性の名は、プルチェ・ネデルミス。
彼女の父親は現ネデルミス王だか、母親は平民出身の妾なので王位継承権は認められておらず、虐げられてはいないと言うだけで、当然ながら扱いは軽い。
父親である現ネデルミス王が少々面倒くさがりで、その上書類と睨めっこをするくらいなら鍛錬の方がマシという脳筋思考。
その為か面倒くさい事しかない奥向きについてはほったらかしで、現状を把握していない。
それ故、年を食った娘であるプルチェについても、あんまり鬱陶しいなら斬り付けて黙らせるか…くらいしか考えていない。
ネデルミス王プルガ・ネデルミスには3人の女性がいる。
一人は正妃。
彼女には現在19歳になる娘ベスピネ・ネデルミスがいるが、既に国内有力貴族の婚約者がいて、もしかすると王位に一番近いかもしれないと囁かれている。
一人は側妃。
こちらは男爵家出身の女性で、男子を一人産んでいる。
3人兄姉妹の一番の年長だが、婚約者も居ないままふらふらと、酒と女遊びに興じている極潰しだ。
名はカプシャ・ネデルミスと言い、正妃腹の異母妹であるベスピネとは仲が良くないが、妾腹の異母妹であるプルチェとは結構仲が良い。
類は友を呼ぶ……と言う奴だろう。
残る一人がプルチェの母で、平民出身の妾だ。
プルガが奥向きに無関心なのを良い事に、正妃は側妃と妾を完全シャットアウトし、かなり離れた離宮に押し込めさせている。
だからと言って食事を抜く等の嫌がらせをする訳ではない。
単に視界に入るのが不愉快と言うだけで、視界に入ってこなければそれで良いようだ。
ベスピネが幼い頃は、娘と二人で仲良く暮らしながら公務を行っていた。
今はベスピネがある程度公務も担ってくれるようになったおかげで、悠々自適……とまではいかないが、のんびりと過ごしている。
そしてプルチェ……父親に追い出された彼女は、ドスドスと足取りも荒く回廊を歩いていた。
しかも盛大に愚痴付きで。
「なんなのよ!!
お父様のケチ!!」
ギリギリと爪を噛みながら歩いていると、前の方から異母兄であるカプシャが歩いてくるのが目に入った。
「お兄様~~!!」
呼ばれて気付いたのか、酒臭い息を吐きながらカプシャは澱んだ目を向ける。
「あ”? あ~……プルか…」
異母妹であっても、手を出せない女に割く時間はないと言いたげに、溜息交じりのぶっきらぼうな返事に留めた。
仲が良い方とは言え、積極的に関わりを持ちたい相手ではないと言う事だろう。
「聞いてよ!!
お父様ったら酷いのよ!!
あたくしに良い婿をって考えてくれないなんて酷いと思うでしょ!!??」
キーキーと甲高い声に、カプシャは顔を顰めて耳を塞ぐ。
「うっせぇなぁ……少し声おとせって…」
「お兄様も酷いわぁぁ~~」
わーわーと本当に20歳なのかと疑いたくなる程、幼い仕草で泣き出した。
その様子にカプシャは盛大に舌打ちをする。
だが、こうなるとそっと離れようとしても、逃がして貰えないと知っているので、カプシャは心底面倒そうに頭を掻いた。
随分と経って、やっと泣き声も収まった頃、カプシャが話しかける。
「落ち着いたか?
はぁ…折角オレが良い気分で酔っ払ってたっていうのに……台無しだぜ。
で? おやじが酷いって……いつもの事だろ?
それに婿って……お前、自分が結婚なんか出来ると思ってんのか?」
「な!?
何でそんなこと言うのよぉ!!
あたしだって結婚くらい出来ますぅ!!
でも、あんなに邪険にしなくっても……それにもしかしたらロズリンドにもっと言う事聞かせられるかもしれないのに、何が『お前如きが口を挟むな』よ!!」
プルチェが喚いた言葉に、カプシャが目を瞠った。
「………へぇ。
その話、オレに詳しく聞かせろよ」
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