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どうやら王太子妃フィミリーが一枚噛んでいるらしく、ラフィラフもレヴァンも詳細は聞かされていない。
襲撃現場から急ぎ王宮に運び込まれ、手当を受けたとは聞いていた。
その後暫く意識が戻らなかった事も。
だから二人共本当に心配で不安だった。
ラフィラスに至っては食事も受け付けない程だった。
勿論、食事が出来るからと言ってレヴァンの状態が良かった訳ではない。臣下として、側近として最低限の体調を維持していたにすぎない。
だが、意識が戻った当日、何故かエリルシアとその一家……使用人も含めた全員が忽然と姿を消したらしい。
ラフィラスとレヴァンの心痛は想像を絶しただろうが、それ以上に真っ青になったのは外交部署の面々だった。
ティルナスは重要部分を担っていたのか、マーセル・ギアルギナを始めとした同僚達はム〇クの叫び状態だったし、部下達は過労死寸前だったとか……。
そしてその日以降、今日に至るまでラフィラスもレヴァンも、エリルシアに会う事が叶わないでいる。
領地まで足を延ばしたとしても、レヴァンの言った通りティルシーの完全遮断を喰らって会える可能性は皆無に等しい。
二人に唯一許されたのは、手紙のやり取りだけ。
多分、その手紙もすべてが届き、届けられている訳ではないだろう。
とは言え、手紙のやり取りだけなら、そのうち熱も冷めるだろうと考えていた一部の者は、今なお続く予想に反した事態に唸っている。
ラフィラスもレヴァンも、見合いは当然として、どんな令嬢のエスコートも拒否の構えを見せたのだ。
構えを見せるだけなら兎も角、ラフィラスが先頭に立って、一部暗黙のルールを明文化させた。
その内容はと言うと、外交絡みのエスコートをロズリンド側が行う必要がある場合、既婚者が行うと言うもの。
元々基本的には同国の者が行うか、ホスト側に頼む場合は既婚者というのが通例ではあるのだが、中には普通でない所謂お花畑――『殿方の方がわたくしに色目を~』とか言い出す、現実見ない系令嬢や姫が居る事も事実。
ラフィラスにしろレヴァンにしろ、強く拒否し難いのは外交の絡む諸外国の姫や令嬢のエスコートで、国内に関しては、嫌なら嫌と言えば良いだけだ。
だから婚約者の有無にかかわらず、未婚者はエスコートをしない、もしくは拒否出来ると明文化させたのだ。
王ホメロトスや王太子ラカール以下、貴族の一部は騒然となったが、何故か王太子妃フィミリーを始めとして、ロージント公爵等有力貴族が是としたので、紆余曲折はあったものの、暫くしてそう言う事に落ち着いて現在に至る。
「それで検証の方はどうだったの?」
ラフィラスの問いに、つい飛ばしていた意識をレヴァンは戻した。
「ぁ、はい。
まだ途中なので断言は出来ませんが、可能性は見えそうです」
「そう。
やっぱり流石はエリルシア嬢…だね。
瘴気対策に空になった魔石の残骸が使えるかも…なんて」
ラフィラスがはにかむような儚い笑みを浮かべる。
レヴァンもそれに頷いた。
「えぇ。
これまで使い切った魔石は、邪魔になるからと直ぐに粉砕処理していましたからね。
そんな効果があるとは、気付きもしませんでした」
「今の状況は?」
「はい。
各所に頼んで、魔石の残骸を集めている所です」
レヴァンの言葉にラフィラスが頷く。
「うん。
これで今までは利用できないと廃棄されていた魔物も、有効利用出来る可能性が出てきた……。
辺境では特に有用だろうね。
レヴァンも、疲れているだろうけど、引き続きお願いするよ」
「はい。
それで?」
レヴァンの問いに、ラフィラスは鳩が豆鉄砲喰らったように目を丸くした。
「さっきの文官です。
何かあったんでしょう?」
ラフィラスはレヴァンも気付かない程微かに双眸を眇める。
「ん……僕もさっき書類と手紙を見ただけだから…。
ネデルミスとの国境に接する王家直轄領からの報告だったんだけど、まだ『気になる事がある』程度らしくて、次の報告待ちかな」
王家直轄領となると、確かにレヴァンがあまり口出しする事は出来ないだろうが、ラフィラスの表情に思う所があったのか、じっとその横顔を見つめていた。
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