70 狭間の物語 ◇◇◇ アーミュ5
残酷な表現が出てきます。
苦手な方は御注意お願いします<(_ _)>
暗い……暗くて冷たくて臭くて……それだけじゃなく湿っている。
またあの嗄れ声のローブ男達の拠点に戻ったのかもと、アーミュはぼんやりと開いた目を動かした。
暗くてよく見えない。
でも何かが違う気がした。
身体を起こそうとして、動けない事に気が付く。
眼球を動かしてみた。
真っ暗で見えないけど、痛みでわかる。
爪は……無くなったんだった。
酷い痛みなのに、遠く…自分の事じゃないように感じながら思い出す。
アーミュはあの路地で取り押さえられ、その後猿轡と目隠しをされて運ばれた。
当然腕も何もかも拘束されていて、着いた場所でまず衣服を引き剥がされた。
強姦されるのかと思ったけど、それは大丈夫だった。
もう初花は散らした後だし、存外その行為は悪くないと知っている。
だから今更、男の一人や二人、増えたってどうって事ないのに残念だ。
衣服を剥がれ、猿轡も外されたが、目隠しと拘束は解かれない。
その後ズタボロの布を被せられた。ワンピースか何かなんだろうけど、酷く臭い。
拘束された腕を何処かに繋がれる。
そうして始まったのは尋問。
あの男達は何者か。
あいつ等と何を話し、何を聞いたか…等々。
難しい話はわからないけど、どうやらあいつらどっかの犯罪者集団だったようだ。言われれば南の方の訛りがあった気もする。
何を聞かれても知らない事は話せない。
興味もなかった。
そんなアーミュに、多分兵士だろう男達が焦れて、殴ったり叩いたりし始めた。
それでも話せないでいると爪を剥がされたんだった。
どんなに泣いても、どんなに叫んでも、兵士達はやめてくれなくて、とうとう手の爪は全部剥がされたんだった。
アーミュが興味を持つのはフィスの事。
それ以外は美味しいものくらい。
フィスも王様も、綺麗なモノや可愛いモノは買ってくれなかった。
仕方ないから、そういうのは自分の給金で買うか、侍女だからって踏ん反り返っている女達の持ち物からせしめてやったんだけど、なんで責められるのかわからない。
毎日尋問というか拷問は続く。
けれどある日を境にぱたりと途絶えた。
代わりにやってきたのは、教会の人みたいな雰囲気を纏う男。
フィスが行くから嫌だったけどついて行った孤児院を思い出すが、あそこはシスターしか居なかった。
だからアーミュの知り合いではない。
そいつは毎日やってきては、アーミュに話しかけてきた。
くだらない事ばかり…。
―――どうして犯罪者達と居たのですか?
知らない。連れて行かれただけだモン。
―――どうして襲撃に加わろうと思ったのですか?
だってフィスにお仕置きしなくちゃって思ったんだモン
最初は他の場所で暴れろとか言われてた。
―――国を売って、貴方はどうするつもりだったのですか?
売るなんて大袈裟。
そんな事考えてないし。
―――どうして他の侍女達の物を盗んだのですか?
今更何?
はぁ…むかついたから。
それに、あたしが活用してあげる方が良いと思った。
―――盗んだ物はどうしたのですか?
売ったのもあるし、綺麗だから取ってあるのもある。
王サマもフィスもあたしに何も買ってくれなかった…。
―――侍女達や他の仕事仲間をどう思ってたのですか?
そんな事どうでもいいでしょ。
あぁもう!
嫌い、大嫌いだった。
―――何故ですか?
だって偉そうにしてたし。
あたしの事見下してた。
だから慌てたりするのが面白かった。
あたしを妬ましそうにみてくるのも気持ちいい。
―――侯爵令嬢を害そうと思ったのは何故?
あの女、あたしを騙してた。
女の癖に男のフリでフィスに近づいて……。
あたしからフィスを奪おうとしたから。
フィスが居ないと誰もあたしを見てくれない。
だから悪いのはあの女!
―――王陛下や王子殿下を裏切ったとは思わないんですか?
悪いのは王サマとフィスだモン。
あたしは悪くない。
優しくして欲しいのに。
ちやほやして欲しいのに。
そうでなきゃ他の奴らに威張れない!
……威張れ……あれ…?
―――貴方は愛を知っていますか?
優しくしてちやほやする。
……違う? じゃあなんなのよ!?
あぁ、そっか…あたしは執着してただけ…。
王子サマであの綺麗な顔だったら、中身は…。
中身はフィスじゃなくたって…良かったんだ…。
―――貴方を愛してくれた人を思い出せますか?
いたのかな……。
爺ちゃんはあたしを捨てた。
母さんも婆ちゃんも…あの妹も…。
王サマはあたしが爺ちゃんの孫だから。
孫だからってだけだったんだ…。
フィスは…好かれていたと思う。
けど、そう……愛じゃなかったかも…。
なんだ、あたしには自分しか居ないんじゃん。
そうして暫く経った頃、アーミュは外へ連れ出された。
目隠しも拘束も外されないまま、首に何か硬いものが掛けられる。
足先が揺れて、何もかもが……奈落に堕ちた。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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