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己惚れ

己惚れと自惚れ、どちらも正しい表記だそうです。

で、紫は己惚れの方を採用です。



 現在エリルシアは絶賛お片付け中だ。


 ラフィラスの見合いも進んでいる気配だし、ようやくお役御免だろうと帰館準備の為に、持ち込んだ荷物を鞄に詰めている。

 一旦は官舎館に戻るが、早々に領地に戻るつもりだ。


 持ち込んだドレスは元々姉ティルシーの物だし、領地に持って行っても着る機会はない。

 ドレスに限らず、最初から持ち込んだ荷物もそれほど多くない為、作業はあっさりしたものだ。


 軽やかなノックの音がして、エリルシアが手を止めて返事をすると、スザンナがトレイを手に入って来た。


「スザンナさん…?

 どうしたんですか?」


 お茶は頼んでいなかったよね?…と、エリルシアは首を傾ける。


「お忙しい所に、申し訳ございません。

 その……お荷物になるとは思いますが、出来ましたら此方(こちら)を受け取っては頂けませんか?」


 スザンナはそう言うと、手に持っていたトレイをテーブルに置いた。

 上には少し大きめの袋が2つ載っている。


 エリルシアは更に首をくぅっと捻った。


「……ぁの、これは…?」


 何処かに落とし物でもしただろうか?

 だが、どちらも全く見覚えがない。

 エリルシアの様子に、スザンナが笑みを深めた。


「こちらの袋の一つは厨房の皆様からですわ。

 エリルシア様が常々美味しかった、スパイスが良いアクセントになってた…等と伝えてくれて、本当に嬉しかったそうです。

 それで料理長始め、シェフの皆が、領地に戻られるエリルシア様に食べて欲しいと、新作のクッキーを焼いたとおっしゃっていましたわ」


 スザンナの言葉に、エリルシアは黙りこくってしまう。

 エリルシアとしてはごく当たり前の事をしただけだ。

 まぁ前世以前の……はっきり言えば日本人としての記憶のせいで、更にそう言う行動が強化されたのかもしれないが……。


 領では一昨年辺りからやっと、毎日食事が出来るようになった。

 それまでは少ない食料を、使用人であるポーラやゾラックは勿論、領民達とも分け合って、ひもじさを凌ぐ事に精一杯で、言葉を交わす余裕もあったかどうか覚えていない。


 全部が芋だけだとしても、空腹を必死に堪えるのではなく、食べられる事が本当に嬉しかった。それからは感想や考えを出し合うようになった。

 次の収穫の時にはもっと量が増やせるように、もっと味を良く出来る様に…と。


 だからエリルシア…と言うか領にとっては珍しくもない事で、そんなに喜んでもらえるなんて思っていなかったのだが……。


 言葉が出ないでいるエリルシアに、スザンナは微笑みかけて続ける。


「そして此方(こちら)の袋は私達侍女と、針子達からですわ。

 エリルシア様が御留まり下さるようになってからというもの…本当に仕事が楽しくて、エリルシア様の笑顔が見たくて、年甲斐もなく張り切ってしまいました。

 単なる仕事、作業ではなく……今一度そんな気持ちが思い出せて、私達も嬉しかったのです。

 一緒にお話をしたり、刺繍をしたり……時にはエリルシア様からお知恵を頂いた事もありましたね…本当に楽しうございました。

 領地にお戻りになられましたら、次にお目に掛かれるのは何時になる事か……どうか、少しだけでも良いので…私達の事も覚えておいてくださいませ」


(あ……やばい…)


 エリルシアの視界が歪む。

 つんと鼻の奥が熱くなって、思わず下を向いた。

 堪え切れずに小さな雫が零れ落ちる。


 背中に伸ばされたスザンナの手が優しい。

 あやすようにトントンとされて、堰を切ったように涙が溢れだした。


「エリルシア様の涙を頂けるくらいには、私達も御心に居場所を頂いたのだと……そう、己惚れても良いでしょうか…?」


 スザンナに抱き着いて、エリルシアは泣いた。







ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


もし宜しければ、ブックマークや評価、リアクションに感想等々、とても励みになりますので、何卒宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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