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モルタルボード:角帽とも呼ばれる、所謂学者先生の帽子です、ハイ。



 庭先に(しつら)えられたテーブルの上の教本を、如何にもモルタルボードが似合いそうな老人が静かに閉じた。

 最近は室内ではなく庭先で勉強する事が多い。

 庭の方が風が通り抜けて涼しいのだ。


「では今日はここまでにしましょう」

「はい、先生。

 本日もありがとうございました」


 対面に座るマーデン・ゴモットに、エリルシアは一礼した。

 彼は前ゴモット伯爵。

 爵位を子に譲った後は、悠々自適な御隠居生活を満喫する老人だが、請われてラフィラスの王宮内での教師を務めている。

 その縁でホメロトスからの要請を受けて、エリルシアにも教える事になった。


 豊かに波打つ白髪と髭という、ザ・学者と言った風貌の御老人である。

 頭頂部だけは残念な事に禿げあがっているが、これまたつるっつるなので、いっそ(いさぎよ)い感があった。


「それはそうと、見事なエメラルドですな。

 しかもそれほど深みのある色は珍しい」

「っ!?」


 エリルシアは慌てて首元を飾る緑の石を手で押さえた。


 実を言うと、抵抗はしたのだ。

 自分には分不相応としか思えない宝飾品である。

 値段等も考えると、とてもじゃないが受け取れないと…意識を取り戻してからレヴァンに返品しようとしたのだが、それはスザンナによって止められた。


 まぁなんだ……時すでに遅し…という奴である。


 一度受け取った物を返すのは、礼を失する行為だと重々承知してはいるが、気が付いた時には既に王宮内に戻っていて、自室として与えられた部屋のベッドで横になっていた。

 そんな状態で時間が経ってしまっており、渋々返品は諦めたのだが、身につける事とは、また話が異なる。


 エリルシアは普段から、宝飾品の類を全く身につけない。それも貧乏だからだが、それ以上に邪魔に感じてしまうのだ。

 しかし、バカ正直に邪魔なんですと言い放つのは、無礼千万であると言うのもわかっている。


 だから高価な事を盾に取り、失くしたらどうするんだと、スザンナに必死の抵抗を試みた。

 あえなく撃沈した訳だが……

 贈られた物が宝飾品なら、それを身につけるのも礼儀と言われれば、引き下がるしかなかったのだ。




 スザンナ曰く……。


『茶会や夜会に出る訳ではございませんし、令嬢がアクセサリーをつけるのは普通の事で、誰も気にしたりはしませんわ……多分』


 最後の『多分』は大いに引っかかったが、それでもスザンナの言を信じたのに……。


(何が誰も気にしない…なのよ…。

 おもいっきり指摘されて……あぁ、どう返事するのが正解なの…?)


「失礼しても良いだろうか…」


 想定外も甚だしい声が飛び込んできた。


「!!」

「その声は…ラフィラス様ですかな。

 此方(こちら)は終わった所ですので、どうぞ」

「ぁ、マーデン先生、ごめんなさい。

 もう終わった時間かなと思って……邪魔するつもりはなかったのです」


 ラフィラスとマーデンが言葉を交わすのを、エリルシアは呆然と眺める。

 こんな、先触れもない訪問は初めてで、頭が真っ白だ。

 部屋ではなく庭先だから、マナー違反ではないと言う事だろうか?……わからなくなってきた。


「ホッホッホ、終わったと申しましたでしょう。

 では吾輩はこれで」


 マーデンは持ち込んだ資料類を纏め持って、ラフィラスと入れ替わる様に庭先から姿を消した。

 残されたのはエリルシアとラフィラス。

 勿論スザンナ達侍女面々は控えているが、王子殿下に物申す者等いるはずもない。


 これは椅子を勧めるべきか…と悩んでいると、ラフィラスが無言で固まっている事に気が付いた。


「王子殿下……?」


 どうしたのだろうと顔を上げれば、彼の視線は一点で固定されていた。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


もし宜しければ、ブックマークや評価、リアクションに感想等々、とても励みになりますので、何卒宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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