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「ウィスティリス嬢」
そんな、どうでも良い事を考えていると、レヴァンに呼ばれた。
何事かと顔を向ければ手招きをしている。
ふと視線を落とすと、テーブルの上に並んだ高価そうな品々が目に入った。
思わず目を奪われる。
だが、何故だろう…並ぶ品々にエリルシアは首を傾げた。
(こっちはブローチ、あっちはイヤリング…文具を見るのではなかったのかしら…)
レヴァンがエリルシアを見てから、テーブルの方へ顔を向ける。
「ウィスティリス嬢は、どれがお好きですか?」
唐突過ぎて、思わず目を丸くする。
「いえ、こう言った品々とは無縁でしたので…」
珍しく歯切れの悪い言い方に、レヴァンの視線を追随してみた。
そして気づいた。
(あぁ、なるほど。
並べられた品全部、使われてる宝石の色が違うのね。
これは深いグリーン…エメラルド? こんなに深い緑って見た事ないかも。
あれは澄んだ青、サファイアでしょうね。
そっちは紫だけどアメジストか何かみたい。
向こうは…黄色い…シトリンかしら。
更にはピンク色の石……これまた女性が好みそうな色ね……とは言えこのラインナップは?)
どう言う基準で並べられたのか、さっぱりわからない。
緑や青はレヴァン自身の色だろう。
そこに何故紫が入っているのかわからないが、エメラルドやサファイアとは比べるまでもなく、お手頃安心価格だからかもしれない。
それ以外にも、黄色やピンク、果てはオレンジ色等々、色とりどり過ぎて反対に選べなくなりそうだ。
だが、流石に人気の店と言われるだけの事はある。
どれもこれも繊細なデザインで、女性受けが良さそうだ。
石にしても全てが良質で、本当に美しい。
「えっと、私…ですか?
……いえ、私ではなく、贈るお相手を思って、公子様が御選びになるのが一番ではないですか?」
淡々と述べれば、レヴァンが目を瞬かせた。
「私が選べば喜んで貰える?」
「はい。公子様が選んだ御品なら、大抵の御令嬢は喜ばれるのではないかと思いますが…」
全員が喜ぶとは断言出来ないが、噂の優良物件公子からなら、普通は喜ぶだろうと思う。
並ぶアクセサリーを流し見ながらそう返事をすると、レヴァンは考え込み始めた。
「そう…そうだと良いですね。
ではこれにしましょう」
レヴァンが手にしたのは、普段使いが出来そうな少し小振りなネックレス。
磨き上げられたエメラルドが、とても美しい。
「ウィスティリス嬢、後ろを向いてくれませんか?」
「はい? 後ろ…ですか?」
つい、言われるままくるりと後ろを向いた途端、首元にひやりとした何かが触れた。
「え……」
更に髪まで触れられて、湧き上がってきたのは恥ずかしさが一番最初。
その後に続いた感情は、自分でもよくわからなくて、エリルシアは思い切り狼狽えた。
「女性に何か贈る等、初めての事でしたので、同行して頂けて良かった…」
心底ほっとした様に呟くレヴァンだが、エリルシアの方は爆死待ったなし状態。
「喜んでくださると嬉しいのですが…。
此方を向いて見せて頂けませんか?」
レヴァンの話す言葉は耳に入って来るが、身体が固まり切ってて動かない。
見兼ねたのかスザンナが近づいて来て、エリルシアの身体の向きをそっと戻した。ついでにちくりと一刺しするのも忘れない。
「ロージント公子様、出来れば今は御控え頂けると……」
「ん? そう? けれどまだ整った訳ではないでしょう?
私が贈り物をしても問題はないと思うけれど」
「それは……そうでございますが…」
茶番でもラフィラス王子の婚約者候補。
たしかに合否を言い渡されるまでは不味いかもしれない。
尤も、当のエリルシア本人は目を開いたまま、意識を失ってそうではあるが…。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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