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「ぁ~、嫌ですよぉ…そんな暗くならないで下さい。
えっと…随分落ち着いてきてるのです。だからちょっとお花とかも、育てられるかな~なんて軽い気持ちで……決して深刻な話ではないですから…」
どうしよう……墓穴を掘ったくらいでは飽き足らず、坑道並に掘り進んでしまったらしい。
あわあわと焦るエリルシアに、レヴァンが助け舟を出してくれた。
「それは良いですね。
心にゆとりが出来る事は良い事です。きっと領民の皆さんも喜ぶでしょう。
後は、そうですね……文具等は如何ですか?
やはり最後はルダリー商会の店を覗いてみましょう。彼処なら文具も取り扱っていたはずです」
それから程なくして馬車が速度を緩めた。
そろそろ商業区とやらに差し掛かったのだろう。
馬車から降りると、広めの通り沿いに店が並んでいる……らしい。
一見しただけではわからないが、高級店舗なのだろう。
盗賊対策なのか、看板等は出されていないし、ショーウィンドウがある訳でもないので、何処が何の店かさっぱりだ。
エリルシアの知る商店街は、領か前世以前の記憶にあるモノだから仕方ない。
レヴァンも同じくらしいが、彼の従者男性とスザンナが知っていたので、何とかなりそうである。
エリルシアが希望するような店となると、もう少し先に行った露店通りが良いだろうと、4人で歩き始めた。
歩き始めてすぐ、エリルシアは後ろからついてくる数名の気配に気付く。
別に殺気だとかの物騒な気配ではない。推察するに護衛騎士か何かだと思うが、土産探し等と言う小さな願いの為に申し訳ない事をしてしまったと、エリルシアはつい足を止めてしまう。
「ウィスティリス嬢?」
「エリルシア様? もしかしてお疲れになりましたか?」
エリルシアの様子に気付いたレヴァンが、気遣う様にエリルシアの伏せた顔を覗き込み、スザンナが傍らに膝をついて心配そうに表情を曇らせる。
「ごめんなさい……」
「え?」
「急いで休憩できる場所を探しますね」
「違うの……」
急いで休憩場所を探そうと、スザンナとレヴァンの従者が走り出そうとするのを、エリルシアは止めた。
「私が……お土産なんて私的な事で、皆さんに迷惑かけて……。
ごめんなさい、公子様が動くのなら従者さんは勿論、護衛の騎士様達も動かざるを得ないですよね……それなのに、こんなくだらない事で……」
当たり前の事なのに、つい目先の利益に誘われて同行をお願いしてしまった自分が嫌になる。
「えっと、後は大丈夫なので……公子様や皆さんは王宮に戻って下さい。
思ったより王宮から遠くなかったし、この程度なら歩いて戻れます」
当たり前の事に気付かない子供だと思われただろう。
ギュッと耐える様に両目をきつく瞑って項垂れるが、そんなエリルシアの耳に予想外れの声が届いた。
てっきり呆れの色が垣間見えるだろうと思っていたのに、届いた従者の声が含んでいたのは嬉しそうな弾む色。
「何をおっしゃるかと思えば……本当になんと素晴らしい御令嬢でしょう。
絶対に逃がさないようになさってくださいよ?
坊ちゃんを前にしてうっとりもしない、その上こんなに謙虚な御令嬢、私は見た事がございません。
いやぁ、実は心配してたんです。
どんな御令嬢からお誘いを受けても、坊ちゃんが喜んだ事も、誘いに乗った事もないものですから……私は坊ちゃんの御子を見る事は叶わないんじゃないかと。
それなのに…あぁ、本当に喜ばしいです。
戻りましたら早速旦那様達に報告致しますね」
「な!?
や、やめてくれ!
それに坊ちゃんなんて呼ぶな!」
普段はにこりともしないレヴァンの表情が、年齢相応に崩れ、茹蛸の様に紅潮していた。
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