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 従者の言葉にレヴァンがポカンと呆けた。

 鳩が豆鉄砲を喰らうとはこの事かと思う程、見事な呆けっぷりである。

 その上、瞬く間にレヴァンの顔は真っ赤になってしまった。


「な…な、にを……」


 一瞬腰を浮かせて従者に突っかかりかけたが、今は走る馬車の中だと思い出したのか、レヴァンはムッとした表情で座り直した。

 車輪の音が気まずい沈黙を強調している。

 エリルシアは小さく溜息を吐いて、この重苦しい空気を打破すべく口を開いた。


「そう言えばこの馬車は何処(どこ)に向かっているのですか?」


 今更な話だが、レヴァンが御者に出した指示で聞こえていたのは、『商店の並ぶ区画へ』という部分だけで、他は聞き取れなかったのだ。


「え? ぁ……あぁ、そうか……ウィスティリス嬢は王都へ出かけた事はなかったのですね」


 王宮に向かう為に王都を通りはしたが、領地から王都官舎館、官舎館から王宮と、途中でこれと言った寄り道をする暇はなかった。

 その後も王宮内の図書館と保管庫、後は訓練場と部屋周辺しか知らない。

 レヴァンが従者にちらと目配せをすると、従者が小窓越しに馬を操る御者と、何か話し出した。


「目的地は商業区との事だったので、まずはルダリー商会に向かっているそうです」


 その言葉に素早く反応したのはスザンナだ。


「まぁ!」

「る…だ……?

 スザンナさんは知ってるのですか?」


 全く聞き覚えのない単語に、エリルシアはきょとんと訊ねる。


「えぇ勿論でございます」

「最近この国で店舗を開いた異国の商会です。

 宝飾品を扱っていて、素晴らしい品が揃えられていると聞きます」

「この王都で暮らす貴族令嬢なら知らぬ者は居りませんし、何より憧れの店ですわ」


 何だろう……スザンナとレヴァンの従者が、まるで予め打ち合わせでもしていたのかと疑いたくなる程、息ぴったりに説明してくれた。


「そうなんですね。

 スザンナさんも憧れているんですか?」

「それは勿論です!

 あの商会の品を殿方から贈られる事に、憧れない女性は居りませんわ」


 エリルシアは此処(ここ)で気が付いた。


 ―――それって、万が一の()に油を注ぐ事になるのでは?……と。


「ぅ、あ…その、別、そう! 別のお店にお願いします!

 第一宝飾品なんて、そんな高い物買えません!

 もっと安価というか庶民的な……あぁ、もう此処(ここ)で降ろしてください!!」


 慌てて叫ぶが、流石に馬車は止まらない。

 レヴァン以下他2名も賛同してくれるはずもない…。


「ウィスティリス嬢、落ち着いて。

 私も自ら商業区へ赴くのは初めてなので知りませんでしたが、恐らくルダリー商会の店舗が商業区の端…つまり一番手前なのではと考えます。

 ですから其処(そこ)で馬車から降りて、気に入る店を探せば良いのではないですか?」


 レヴァンが穏やかに話すのを聞き、恥ずかしさが湧き上がる。


「すみま、せん……」

「話のネタに入って見るくらいは、しても良いと思いますよ。

 まぁ、それは最後にしておきましょう。

 それで…どんな品をお考えなのです?」

「どんな……うぅん………予算が限られていますし…。

 そうですね、食材とか…あぁ、何かの種や苗もいいかもしれません」


 エリルシアは遠い目をしてから視線を足元に落とし、微かな微笑みを口元に刻んだ。


「領では余裕がなくて、花なんて見ません…いえ、道端の草が花と言えないような花をつけてるのは、流石に見た事がありますけど。

 まだまだ生きる事に精一杯で……鮮やかな花なんて、私も本でしか見た事がなかったんです。

 王宮で、庭にあんなに花がいっぱい咲いてて吃驚しました。

 花じゃなくても、珍しい野菜とか……ふふ、食べられる品が増える方が皆には嬉しいかもしれないですね」


 そう言ってエリルシアは困ったように微笑む。


「エリルシア様……」


 スザンナが顔を背けた。

 やばい…こんなしんみりした空気になるとは思わなかった。







ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


もし宜しければ、ブックマークや評価、リアクションに感想等々、とても励みになりますので、何卒宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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