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 泣き崩れた両親を、執事のバロンが宥めて立たせ、そのまま応接室らしき部屋へ案内される。

 王都の使用人の内、もう一人のメイドであるスラニーがお茶を用意し始めると、室内には茶葉の良い香りが広がった。


 だが、そんな良い香りも両親の慰めにはならないらしい。

 未だにさめざめと泣き続ける両親に困惑の視線を送りながら、エリルシアは供されたお茶へ手を伸ばす前に一度姿勢を正した。


「その……お久しぶりでございます。

 お父様お母様にはお元気……とは言い難い様で……」


 正直、どういった言葉を掛ければ良いのかわからない。

 何しろ王都へ招集された理由さえ、まだわかっていないのだ。


「……それで、急なお手紙だったのですけど……その…理由を伺っても…?」


 両親の様子と顔色を見計らいつつ、しどろもどろと疑問を口にすると、母親であるエリミアが再びわっと泣き出した。

 ぎょっと固まってしまったエリルシアを、父親であるティルナス・ウィスティリス侯爵本人が悲しそうな悔しそうな…何とも表現の難しい表情で見つめる。

 そしてはぁと小さく嘆息した。


 どうやら王都へ召喚された理由を問うのは地雷らしい。

 泣き止まないエリミアを慰めるのに忙しそうなティルナスを見て、エリルシアは話題を変えようと思い立った。


「それはそうと、お姉様はいらっしゃらないのですか?」


 先だって下校時の告白シーンに出くわしたので、同じ学院の姉も当然帰っていると思ったのだが、何故か母エリミアには火に油だったようだ。

 再び号泣し始める姿に、エリルシアは、もうどうして良いかわからない。


 そんなエリミアを、ティルナスは執事のバロンに託す。

 バロンに支えられて部屋を出て行くエリミアを見送ると、父ティルナスが口を真一文字に引き結んでテーブルを睨み付けた。

 自身を落ち着かせるように、静かに深呼吸をする。


「済まない…とんだ醜態を晒してしまった、許してくれ」

「お父様…」


 エリルシアとしては困惑しているだけで、謝罪等求めてはいないのだが…。


「何処から話せば良いか……。

 とりあえず結論から言うと……エリィ、お前に王家から婚約の打診があった…」


 言葉が素通りする。

 耳から入って脳へ到達しない感じだ。


「へ? えっと……もう一度良いですか?」

「……エリィに王子との婚約の打診が来た……」


 エリルシアは完全フリーズしてしまう。


 暗黙の了解であって明文化されている訳ではないが、この国では婚約等は学院に入学する年齢以降と言うのが一般的だ。

 だから、基本的にまだ8歳のエリルシアに婚約話なんて、考えが至る訳がない。

 しかも王家からだなんて、想定外もいい所だ。


「……何かの…間違い、では…?」


 ようやっと絞り出せた言葉はそれだけ。

 正直言って、エリルシアも頭が真っ白になってしまっている。

 ティルナスは悲し気に…だが、無情にも否定した。


「……残念な事だが…」

「ですが!」


 思わず腰を浮かせて前のめりになってしまう。


「王子って、一人しかいませんですよね?

 確かどこかの御令嬢と、婚約の話が持ち上がっていませんでしたか?

 えっと…どこの御家かまでは覚えていない…ませんのですけれど…」


 動揺が漏れ出てしまっているかもしれない。

 それはそれとして、姉が学院入学する時に、そんな話を聞いたような気がするのだが……。






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


ブックマークや評価、リアクションに感想等々も、頂けましたらとても励みになりますので、どうぞ宜しくお願い致します。


誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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