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レヴァンの話し方を少し変えました(汗)
気付けば王宮滞在する事になってから、そろそろ1ヶ月経つ。
領地の状況は、父ティルナスが連絡を取り合ってくれているらしく、ざっくりとではあるが把握出来ていた。
1ヶ月の間、図書館と魔具保管庫に通いつつ、望まないイベントに巻き込まれたりもしていたが、最近は概ね平和である。
それと言うのも、王子ラフィラスの小間使い兼幼馴染の、アーミュと言うピンク髪のヒドインに、散々怒鳴られたり、睨まれたりしていたのだが、先頃あった『故意のお茶掛け事件』(恋のお茶掛け事件でも、意味合い的には外れていないかもしれない…)の後、何故か彼女の姿を見なくなった為、平和が訪れたのだ。
気にはなるが、藪をつついて蛇を出す趣味はない。我関せずでいるのが良いだろう。
反対に、ラフィラスとは出くわす機会が増えていた。
別に約束している訳でも何でもなく、あくまで偶然である。王宮そのものは広いが、エリルシアがうろつく場所は限定的だからかもしれない。
そしていつの間にかレヴァンがラフィラスの側近になっていたようだ。
おかげでレヴァンとも会う機会が増えてしまっている。
色々とそっ閉じしつつ、現在のエリルシアはラストスパートに忙しい。
王宮に留まった成果は、それなりに上がっている。
水脈を探せるような機能を持つモノは見つからなかったが、他に使えそうな魔具類は見つかった。
例えば地面を掘る時に補助具として使える魔具等。
この世界で地面を掘る作業と言うのは、ほぼ人力なので、補助の魔具があるだけでもかなり助かる。
こちらは貸し出しの申請を出している所だ。
一方、図書館の方の成果は…と言うと、あまり芳しいとは言えない状況である。
魔法そのものが断絶している以上、ある程度仕方ないと覚悟はしていたが、絵本の一冊、メモの一枚さえ、これほど見つからないとは思わなかった。
とは言え、可能な限り努力するしかない。
今日も今日とて図書館に向かっていると、前方からラフィラスとレヴァンがやってきた。
通路の脇に寄って、彼らが通り過ぎるのを待つ。
「ウィスティリス嬢、今日も図書館?」
さっさと通り抜けてくれと内心で思っていても、それを表に出す訳には行かない。
頭を下げたまま返事をする。
「王子殿下には御機嫌麗しゅうございます。
図書館は……はい、本日もお邪魔しようと思っております」
「ぁ…あぁ、じゃあ忙しい…かな」
ラフィラスが曖昧な表情で眉尻を下げた。
その隣でレヴァンが口角を上げている。
「相変わらず堅苦しいのですね。
これからもそれでは、肩が凝って仕方ないでしょうに」
一応声を掛けて貰ったので、頭を上げて並ぶ美少年二人を眺めた。
纏う空気は全く異なるのに、面差しは似ているのが何とも不思議である。
「これからも…ですか?
いえ、私はもう少ししたら領地へ戻る予定でございます」
「え……」
レヴァンは目を一瞬だけ丸くしたが、ラフィラスの方はそれに留まらず、驚きの声まで漏らしてしまった。
「………そ、う…だったんだ…」
何故かラフィラスの表情に落胆の色を感じる。
「ふむ…こうして会えるのも、後僅かと言う事なんですね……。
ではウィスティリス嬢、貴方の事を名で呼ばせて貰っても良いでしょうか?」
何の脈絡もなく訊ねられて、今度はエリルシアの方が呆けてしまった。
著しく想定外だが、レヴァンと並んでいたラフィラスも驚愕に固まっているので、案外普通に常識外れなのかもしれない。
一瞬ポカンとしてしまったが、直ぐに気を取り直して苦笑を浮かべる。
「ふふ、御戯れが過ぎましょう。
ロージント公子様に名を呼んでいただく等、分不相応と承知しておりますし、何より私はまだ死にたくありません」
「死ぬ等と…大袈裟すぎませんか…?」
何故か悲壮な空気を纏うラフィラスの隣で、レヴァンが首を傾げた。
「公子様は御令嬢方の御心を、とーっても騒がせていると聞き及んでおります。
いずれロージント公子様に相応しい婚約者様が立たれるでしょうから、その栄誉は其方に取っておかれるのが宜しいかと思います」
これから図書館へ行こうとしているのに、それを邪魔されているのだからイラッとしても仕方ないだろう。
慇懃無礼が過ぎているのも確かだが、笑って流してくれるはずだと思いたい。
「ふむ……。
では後程ウィスティリス侯爵に打診して貰えるよう、父上に頼んでおくとしましょう」
レヴァンは空色の瞳を細め、無駄に高い偏差値の顔に笑みを乗せている。
そのレヴァンを睨み付けながら、ラフィラスが下唇を噛み締めた。
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