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「だから~、わかんないんだって」
同学年の生徒数もそれほど多くないと聞いているので、同じクラスだと思うのだが……。
この辺りは前世及びそれ以前の記憶に、影響されているかもしれない。
「……もしかして複数クラスあったりするんです?
こう、少人数でがっつり学習……とか」
ティルシーは更に残った最後の菓子も、自分の口に放り込み、満足そうに飲み下した。
「んふ♪
はぁ~もう最高、美味しかったわぁ。
おかわりしたい所だけど、流石に太っちゃうわよね……ぅぅ…。
で、なんだったかしら? クラス?
クラスは一つよ」
どう言う事だろう…。
クラスが一つなら、同じ教室で机を並べているのではないのかと訊ねてみると、予想外の言葉が返って来た。
「王子殿下…というより、ピンク金魚が煩くて、別室で授業受けてるらしいのよ。
学年は同じだけど、顔を合わせる機会もないんだもの、わからなくても当然じゃない?」
納得したくはないが、納得せざるを得ない…。
ティルシーが言う『ピンク金魚』とは、恐らくアーミュの事だろう。
色は確かにピンクだし、ラフィラスにべったりだから、金魚の〇と言われても仕方ない。
学院での事は知らなかったが、知ってしまえば更に気の毒に思えてくる。
ラフィラスは友達を欲しがっていた。
けれどその機会さえメイド……ではなく小間使いのアーミュに奪われているとは、全く思いもしなかった。
(私に怒鳴ったのは、木剣を飛ばした犯人だと誤解されたから、ガンを飛ばしてきたのは、てっきり素性が知れない事を警戒されたから……だと思ってたんだけど…。
彼女は四方八方に吠えまくって、最愛の王子サマが人脈を得る機会もぶち壊していると言う事ね。
まぁ確かに不憫ではあるけれど、王子サマ自身もアーミュさんと一緒にいる事を選んでいるのだし、他人がとやかく言う事でもないのかも………)
……………
…………
………………………ィ……ィルス嬢? ウィスティリス嬢!?」
ラフィラスの声に、エリルシアの意識が現実に戻った。
つい回想に耽ってしまったが、そう言えばラフィラスが部屋に来て、時間はあるかと聞いていたのだと思い出す。
「ぁ、申し訳ございません。
……何か御用でしょうか?」
慌てるエリルシアに、ラフィラスはふわりとした柔らかい笑みを浮かべた。
「料理長が新作の菓子を焼いたらしいんだ。
良かったらお茶でもどうかなと。
お祖父様からも、ウィスティリス嬢を是非誘う様にって」
ホメロトスからの声掛となると、無下にする訳にもいかない。
しかし、本当に良いのだろうかと、エリルシアは微かに首を傾けた。
ラフィラスとアーミュは相思相愛っぽいのだから、さっさと婚約なんて拒否れば良いのに…と思ってしまうのだ。
(いやまぁ、新作のお菓子と言うのは興味がありますけどね…。
でも、ずっとアーミュさんに睨まれるのも、精神削られるのよねぇ……はぁ)
何をどう言った所で、断るのが難しいのも事実。エリルシアは引き攣った笑みを貼り付けつつ了承するしかない。
準備があるからと、ラフィラスを部屋から追い出すと、入れ替わりに女性が部屋に入って来た。
ホメロトスからの命で、エリルシアの部屋付きとなった侍女だ。
名前はスザンナ・カルゴー、伯爵家の出のベテランである。
最初はエリルシア付きとなるよう命じられたらしいのだが、王宮に長く滞在する予定はなかった為遠慮した。
しかし、それならば部屋付きに…と強引に押し切られた。
確かに部屋の掃除の担当等もあるだろうし、エリルシアもそれ以上は渋らず受け入れている。
スザンナが髪の手入れをし始めた。
領地では勿論、王都の館でも使用人の手を煩わせる事なく、自分の事は自分でしていたエリルシアだが……そのせいか、人様に何かして貰うと言うのに慣れず、毎回酷く緊張してしまう。
「エリルシア様、そんなに固くならないで下さいまし」
優しく微笑まれて、つい恥ずかしさに俯いてしまう。
恐縮していると、スザンナが溜息交じりに溢した。
「ですが……ぁ、申し訳ございません。
つい…」
「ごめんなさい、私何かしてしまいましたか!?」
気付かないうちにスザンナの手を煩わせてしまったのかもしれない。
振り向いて慌てて謝った。
「ち、違います。
エリルシア様には問題はございません。
ただ……」
言い難い事なのか、スザンナの言葉は歯切れが悪い。
「その……訊ねて良い事なのかわかりませんけど……。
どうかしたのですか?」
エリルシアの問いに、スザンナは再び溜息を落とした。
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