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「お姉様!?」
「お父様にくっついてきちゃった♪」
自分より5歳上の姉は、小さく舌先を覗かせた。
もう婚約者も決まり、成人の年齢も見えてきたと言うのに、テヘペロとか…落ち着きのない姉である。
「くっついてきた…じゃないでしょう?
ソマステグ伯爵邸に行かれたのではなかったのですか?」
姉ティルシーは母親譲りのプラチナブロンドに、父親譲りの茶色の瞳で、可愛らしい顔立ちの令嬢だ。
勉強嫌いなのが困りものだが、それ以外はごく普通…典型的な貴族令嬢と言って差し支えない。
噂話に恋話、ドレスや宝石等の綺麗なモノや可愛らしいモノが大好きな、普通の御令嬢だ。
両親が慌てて婿養子に入ってくれる婚約者を探し、王家の魔手から逃がしたのは納得出来ると言うもの……。
だが学院に行っているおかげか、友人は多い。
アホではあるが、明るくお喋りな所が社交的とも言えるから、別に其処まで不思議ではない。
「ん~行って来たけど、学院もあるしね~。
それにエリィが婚約者になったんでしょ? だったらわたしは婚約者の家に隠れてなくて良くない?」
あっけらかんと、テーブルの上に置かれていた菓子をポイポイと口に放り込む。
「やだ美味しーー♪
流石王宮ね。
エリィ様々よ~、ほんとありがと♪」
相変わらずの能天気振りに、エリルシアは盛大な溜息を吐いた。
「何が様々ですか。
それに別に婚約者ではありませんよ。
候補とかも言われましたが、全てぶっちぎるつもりですし」
「えー?
そうなの?」
「当然でしょう。
未だ領地の状況は好転していません。
お姉様が領地の面倒を見てくれるのですか?」
エリルシアの冷ややかな視線と声音に、ティルシーは若干引き攣った笑いを浮かべつつ菓子を更に頬張る。
そんなところも、羨ましい程に可愛らしい。
姉と並ぶと、エリルシアははっきり言って地味だ。
ティルシーは華やかなプラチナブロンドだが、エリルシアは父親…というより祖父譲りの紫髪で、姉の影になってしまいがちなのだ。
100人居たら100人が揃って、姉の方が王妃に相応しいと言うのではないかと、エリルシアは思っている。
まぁ中身はお察しなので、必ず『容姿だけなら』と言う注釈はつくだろうけど。
ふとホメロトス以下王族面々を、脳裏に描いた。
年齢を重ねたと言っても、ホメロトスも整った顔をしている、中身は至極残念だが…。
ラカールも当然のように美男子で、フィミリー妃は美姫の名をほしいままにしたと言う噂に違わぬ美貌を、今なお誇っている。
その二人の間に生まれたラフィラスも言うに及ばずだ。
あの中に立って見劣りしないのは、ティルシーくらいではないかと考える。
尤もティルシー本人が希望していないし、両親も同じくだから、あの中に姉が立つ事はないのだろう。
「わたしに出来ると思ってるの?
無ぅ理ぃ~♪
エリィだってわかってるでしょ?」
「お姉様…納得するところでも、自慢するところでもないです」
「ん~…わたしだって悪いとは思ってるのよ?
学院だってエリィが通った方が、絶対に良いはずだもの」
「はぁ…何を寝ぼけた事を言ってるのですか…。
お姉様が跡継ぎ、それは変わりません。
いずれソマステグ伯爵令息と共に、ウィスティリス領を盛り立てていくのはお姉様なんですよ?」
「だって私は領地経営なんてわからないもの。
エリィが後継になった方が……って、王子の婚約者になるかもだから、それは無理かしら……あ~あ、婚約者のパッキーに頑張って貰うわ」
本気で菓子を食べに来ただけらしいティルシーだが、ついでに聞いてみようと思い立つ。
「そう言えばお姉様は、ラフィラス王子殿下と同じ学年でしたよね?
学院ではどんな感じなのですか?」
皿が空になりそうな勢いで、菓子を平らげるティルシーの手が止まった。
眉根を寄せて難しい顔で唸ると、へらっと笑って言い放つ。
「わかんない♪」
「………は?」
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