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「はぁ!? あんた女だったの!?
……ありえない! 騙したのね!!??
しかも婚約者候補だなんて………ぜったい許さないんだから!!
フィス! あっちに行きましょ!!」
アーミュの物言いは今に始まった事ではないが、仮にも王の前でして良いものではない。
当然のようにホメロトスの眉が跳ね上がった。
「アーミュよ、其方は本当に……。
メイドが高位貴族の令嬢にそのような言い方をするなぞ、以ての外じゃぞ?」
怒鳴りつけるかと思ったが、注意だけで済ますらしい。
本来なら斬り捨てられても文句は言えない態度物言いなのに、この対応は何処からどう突っ込めば良いのやら……。
困窮してるとはいえ、エリルシアは紛う事なき侯爵令嬢様だ。
その侯爵令嬢に、侍女にもなれない身分の者が、怒鳴りつけ、挙句許さないときた……最早溜息しか出ない。
以前言っているのを聞いたが、アーミュはホメロトスの友人の孫だそうだから、対応が甘いのだろう。
アーミュの方も、唇を突き出してむくれるだけで、反省したり恐縮したりする様子はない。
以前から感じていたが、ホメロトスと言う人物は、かなり大雑把でいい加減、更に言うなら俺様気質なのではなかろうか?
これでは周りも苦労した事だろう。
「お祖父様、アーミュはメイドではなく僕の幼馴染です。
身分も、男爵家の出では侍女にはなれないからと、小間使いと言う事にして僕の近くに居られるようにしてくれたのは、お祖父様ではないですか」
エリルシアは天を仰いでいた顔を俯かせた。
これが王族の会話……。
問題は其処ではないと言いたくなったが、グッと呑み込む。
もう少ししたら図書館も保管庫も、必要箇所のみだが制覇出来そうなのだ。
積み上げられた他の知識や過去からの遺産に未練がないとは言えないが、長居して関わりを増やす方が危険である。キリの良い所で辞するのが正解だろう。
エリルシアも領地で民や冒険者たちに交じって働く事もあるし、立場も次女で平民になる可能性も高い。だから、そこまで身分について煩く言うつもりはない。
しかし節度は必要だし、何より此処は王宮だ。
時には諸外国の王侯貴族も訪れる場だと言うのに、これで王族が務まるのかと、そのうち本気で沸騰してしまうだろうと簡単に予想出来る。
そうなる前に退散するのが一番穏便に済むのだ。
………何と言うか、つくづくこのロズリンド王国は平和なのだなと思う。
ウィスティリス家や領を取り巻く諸々が、反対に異常なのだろう。
だが、とりあえず…今はこの場から脱出しよう、そうしよう。
「王陛下、私はこれで失礼いたします」
ホメロトスと孫王子の身内の会話を聞いていても仕方ないし、アーミュの嫌悪どころか憎悪まで含んだ視線は、流石に鬱陶しい。
「おお、ウィスティリス嬢、すまぬ。
アーミュには儂からもきつく言っておくので、許してやってくれ」
『許すかよ、バーカ』と言う本音は、貴族令嬢の必殺技、曖昧スマイルで受け流す。
まぁ眉尻がピクリと跳ねたので、ホメロトスはエリルシアの内心に気付いたかもしれない。
(謎ね……全体的に察しが悪い王サマなのに、ちゃんと見抜いたり気付いたりする事もある……と…あぁ、気分屋な所があるのかもしれないわ…って、決して喜べない事実ね…)
訓練後なのでドレスではないからカーテシーもどきになってしまうが、呼び止めたラフィラスが悪いのだし、ホメロトスも気にした様子はない。
さっさと無言で挨拶をして、くるりと背を向けた。
と、まぁ……こんなあれこれがあって、ラフィラスがエリルシアの自室を襲撃するようになってしまった訳だが……。
ラフィラスと鬼女アーミュ、そしてホメロトスをぶっちぎって自室に戻ったエリルシアだったが、其処でも思わず天を仰いでしまった。
「戻ったわね♪」
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