19 狭間の物語 ◇◇◇ ラフィラス1
僕の名前はラフィラス・ロズリンド。
ロズリンド王国の王子だ。
小さい頃はあまり丈夫じゃなくて、ベッドで寝ている事が多かった。
父様と母様は、お祖父様があまり会う事を許してくれない。
寂しくて、悲しくて、会いたいって駄々を捏ねた事もあったけど、そのうち諦める事が出来るようになった。
諦める事を覚えないと、僕は壊れてしまいそうだったから…。
少し成長すると、ベッドに伏せる事がちょっとずつ減って、お祖父様は王家専用の馬房に連れ出してくれるようになった。
見上げる程大きな馬は、本当に怖くて、僕は震えてお祖父様の後ろに隠れたけど、馬丁の一人が抱き上げてくれて、馬の顔の高さまで持ち上げてくれた。
目が丸くって、真っ黒で、とっても可愛いと思った。
恐る恐る手を伸ばしたら、顔に触れる事を許してくれたんだ。すべすべで温かくって、僕の中で何かの感情が弾けた。
それから僕は馬に夢中になった。
お祖父様が馬房に向かうときは、何時も一緒に連れて行ってと強請ったりもした。
そんなある日、初めて僕に馬の顔を見せてくれた馬丁のホッズが、小さな女の子を連れてきた。
なんでも、少女の父親が亡くなって、母親も塞ぎ込んでしまったので、彼女を連れてきたのだそうだ。
ホッズの孫だと言う彼女の名はアーミュ。
ピンクのくるくる髪で、髪色より濃いピンクの瞳の女の子。
そんな色を纏った人なんて見た事がなくて、目が痛くなりそうとか、最初は思ってた。今はこの国には色んな色を纏った人達がいると言う事は知っているけど、当時は関わる人そのものが少なくて、僕はそんな事さえ知らなかったんだ。
僕の世話をしてくれる乳母や侍女と違って、彼女は僕の事を最初は無視していた。
顔を赤くして、そっぽ向いてばかりの彼女に、僕は途方に暮れていたが、帰る時間になって歩き出した時、彼女が叫んだんだ。
「えっと……えっと、あ、あたし、また来るから!」
ホッズが慌ててアーミュの頭を押さえつけて、一緒に頭を下げていた。
彼の上司らしい人物も『王子殿下に対し、本当に申し訳ございません!』と、地面に頭が埋まっちゃうんじゃないかと思う位、深く頭を下げていた。
お祖父様はどう思ってるんだろうと見上げると、お祖父様は愉快そうに笑っていた。
「随分と元気の良い子じゃの!
ホッズに似たか?
あぁ、フィスが嫌がっておらんから、不問としよう。まぁ、もう少し行儀良くしてくれると助かるがな」
今の馬丁の中で最古参のホッズは、お祖父様がまだただの王子だった頃からここで働いていたと言っていた。
だからだろう、お祖父様と馬丁のホッズはとても仲が良かった。
そんなホッズの孫娘だから、お祖父様も大目に見たんだと思うし、僕もそんな彼女を新鮮に感じていた。
まわりは大人ばかりだったし、同じくらいの年齢の子が珍しいと言うのもあったかもしれない。
次に会った時は、前回より少しだけ大人しくなっていた。
「だって爺ちゃんったら酷いんだよ。
グーで頭殴るんだモン、本当に痛かったんだよ!
「そうだったんだ」
「うん。
けどさ、ここに来たいなら、もっと大人しくできないとダメって言われてさ~。
家に居ても、母さんは暗いし、妹は小さくて遊び相手になんないし……だから爺ちゃんについてきた方がマシだったんだ」
今にして思えば、何て言い草だと思うが、その時は初めての…年齢の近い存在に舞い上がっていたのだろうと思う。
成長するにつれ、僕は両親の『やらかし』とか言うモノを知った。
でも、お祖父様には怒られるかもしれないけど、別に良いんじゃないかって、僕は思った。
だって約束してた訳じゃないみたいだし、戦争にもなってない。
母様は大好きだし、そんな母様と結婚した父様を、僕は密かに自慢に思っていた。
ま、お祖父様には内緒だけど。
ただ、その『やらかし』とやらのせいで、僕の婚約と側近の選定はとても難しくなっていたらしい。
誰も僕と会いたい、仲良くしたいって思ってないと言う事だ。
だけど……別にいい。
僕にはアーミュがいる。
ホッズが馬丁を辞める時、アーミュともお別れかと思ったけど、アーミュは僕の小間使いとして王宮に残ると言ってくれたんだ。
侍女になるには身分が足りないらしく、苦肉の策で小間使いと言う事になったらしいんだけど、僕にとってはどうでも良い事。
彼女が僕の為に王宮に残ってくれたと言う事が、僕には一番大事な事だった。
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