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返事をする前に扉が開かれる。意識が戻っていると思っていなかったのだろう。
入ってきたのは父ティルナスで、どうやらエリルシアはラフィラス王子と顔を合わせた途端、ふらりと倒れたのだそうだ。
後ろに付き従っていた王の護衛が咄嗟に受け止めてくれたらしく、大怪我に至らず良かったと、ティルナスが大泣きしている。
恐らく膨大な記憶の奔流圧で、意識が保てなかっただけだと思う。
もしかすると魔法が使えるようになった事も一因かもしれないが、どちらにせよ話せる内容ではない。
幼子を連れまわしすぎたと、反省しきりだったらしいホメロトスには申し訳ないが、そのまま冤罪を引き被って居て貰うのが平和だと判断する。
「王太子殿下、妃殿下も見舞いにとおっしゃってくださったんだが、王陛下がまたお怒りになってね…。
『ゆっくりと休んで欲しい』という言葉をお預かりしているよ」
「心配をかけてしまってすみません…」
「エリィが謝る事じゃない。
私が…親である私がもっと気を配らないといけなかったんだ…。
考えてみれば当然すぎて……ね…。
急に呼び出したから、その場で馬車に乗り込んでくれただろうエリィを、ゆっくり休ませてやったのは、到着した当日だけで、後は私達の仕事を手伝ってくれていたし……。
あれこれと買い出しなんかも手伝ってくれていたと聞いているよ…本当に私には過ぎた娘だよ。
…ありがとう」
ぽつりぽつりと話すティルナスの顔には、思い切り『凹んでいます!』と書かれている。
8歳でしかないエリルシアから見ても明らかなのだ。これでよく王宮貴族社会を渡り歩けるものだと、別の意味で感心してしまう。
だが…もしかするとそう言う父だからこそ、公爵様達は重用してくれているのかもしれない。
重用してくれるのは娘としても現状ありがたい事ではあるが、是非とも過労死させない程度に留めておいてくれと祈った。
そして帰館するティルナスの背中を見送る。
王太子始め公爵面々も、倒れたのだから自宅に返してやれと、ホメロトスに進言はしてくれたらしいのだが、ホメロトスは頑として聞き入れなかったそうだ。
これについては王宮滞在をエリルシアが承諾した後なのだから、『ふぅん』程度に考える。
それよりも……それよりも! だ!
ティルナスがテーブルの上に置いて行った鍵……。
単なる金属製の鍵なのだが、エリルシアには燦然と輝く後光が見える。
形状的にはウォード錠に近く、装飾が無駄に凝っている。
防犯性という面では些か疑問が残るが、この世界、国ではよく見る、至って普通の鍵だ。
エリルシアはそっと手を伸ばす。
すると、これまでは良く調べないと魔具かどうかもわからなかったのに、手を近づけただけで魔具だと言うのがわかった。
「!!」
恐らく魔法が使えるようになった副作用…いや、影響なのだろうが、当然他言無用な能力だ。
魔法が使える者等居ないこの世界で、万が一そんな事がバレれば、絶対に軟禁されるだろう。エリルシアの頭の中には『モルモット』という言葉が乱舞していた。
何にせよ、これで王宮図書館と魔具保管庫の出入りは保証された。
明日からは精々其処に引き籠って、早々に王宮から退散するとしよう。
………うん、退散予定だ……。
……………間違いなく退散予定だったはず……。
………………………それなのに………。
何がどうしてこうなったぁあああああ!!!????
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
本日はもう1話、21時頃に投下出来そうです。
宜しければ読んでやってください!
やっとピンクまで到達出来ます(笑)
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