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「公爵は心配性だけど…それはレヴァンを大事に思っているからでしょう?
…ぅん……少し、羨ましい…かな…。
ぁ、でももう暫くはまだ他言無用でお願いしたい。
レヴァンにも勿論…ね」
ラフィラスの儚い笑みに、ジョストルは自分の失言を恥じた。
「殿下……私は…申し訳ございません。
あのような発言を…」
それにもあっさりと首を振ってから、ティルナスとマーセルの方へ顔を向ける。
「お願いする……ね
調査した上で、王陛下や王太子殿下、妃殿下にも報告しなければならないから。
まだ何もかもが不確実な状態で、騒ぎにはしたくない」
そしてラフィラスは手紙を手に部屋から出て行く。
小さな背中は、何処か諦めに似た何かを纏っているようにも見えた。
居た堪れない様子でそれを見送るジョストルに、ティルナスとマーセルも言葉が出ない。
「……すまない。
みっともない所を見せた…」
「いえ……ですが、何と言うか水臭いですね。
私は王子殿下も、みすみすネデルミスに送り出すつもりはありませんよ。
この数年、殿下の頑張りは皆見てきたはずで、そう思っているのは私だけではないでしょう。
まぁぶっちゃけると王陛下には…げふんがふん…ですが、次期王がラフィラス殿下なら、それはそれでありかと思っていますよ。
さ、閣下の知ってる事、気付いた事、洗いざらい吐いて頂きましょう。
あんな怪しさ満載の書簡、信じられる訳がないんですからね」
マーセルがニヤリと笑う。
「ティルナスも…。
殿下のお許しもあったから帰領は受理するけど、戻ったら忙しくなるからな?
あぁぁ~、そうだ。
往復の時間短縮に、特別仕様の軍用馬車を使えるように手配しておくよ。
魔馬だからねぇ、速いよ」
ティルナスにそう言うと、マーセルは追い出すべく手をヒラつかせて払った。
「いや、軍用って……出来れば謹んで辞退した「はいはい、とっとと行って、とっとと帰ってこい」……」
マーセルは自身の親ほどの年のジョストルの肩をガシっと掴み、無駄に良い笑顔でティルナスを追い払った。
―――コンコン
2回で止まったノック音に、ベスピネは走らせていたペンを止める。
「どうぞ」
誰だろうと思いながらも、現在いる場所が執務室なので、誰が来ても不思議ではない。
開いた扉の隙間から、落ち着いた色合いでありながら見事な光沢を持った暗いオレンジ色のドレスが見えた。
ベスピネは半眼になりつつ、小さく溜息を落とす。
「入って…お母様」
やや不安さを滲ませて冴えない表情のキャノリーヌが、そこには立っていた。
「ベス……忙しいのにごめんなさい」
部屋の隅で控えて居た侍女に目配せをし、扉を閉めさせるとお茶の用意も指示する。
「丁度休憩を考えていた所ですから大丈夫でしてよ」
そう言ってベスピネは母キャノリーヌを観察する。
娘の自分から見ても美しい母親だと思う。
実際、とても19歳にもなる娘がいるようには見えない。
しかしなんとも……わかり易い母親だ。
だからこそ側妃や妾ともあえて距離を取っているのだろう。
頭が悪い訳ではないが、腹の読み合い探り合いは到底こなせそうにない女性だった。
「それで、何かご用ですの?」
「……」
余程言葉にし難い話題なのだろうか……キャノリーヌは困ったように唇を引き結んでいる。
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