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「「………」」
ラフィラスは勿論、ジョストルも揃って絶句するしかなかった。
乱暴な言い方だと言われるかもしれないが、はっきり言って意味不明…それに尽きる。
要約すると―――
『国境付近での変化はロズリンド側の謀略だと考える。
故に、自分達の潔白を示したいのなら、ロージント公子もしくはロズリンド王子を、ネデルミス王女プルチェに差し出せ』
と言うような内容だ。
まず国境付近の変化と言うものが、ジョストルには初耳である。
「ネデルミスは頭がおかしくなったのか…?」
呆然としたジョストルの呟きには、困惑がたっぷりと塗り込まれていた。
一方ラフィラスはと言うと、少し前の光景を思い出していた。
王家直轄領代官からの書類と手紙を抱えた文官……。
顔色は冴えず、何処か不安を抱えた様な表情をしていた。
そう言えば追加報告を待っていたのだ…と思い出す。
ラフィラスは困惑し続けるジョストルの方へ顔を向け、少ししてからそっと目を伏せる。
「もしかしたら、そうじゃないかもしれない」
「殿下…?」
「少し前にね……ネデルミスとの国境に接する王家直轄領の代官から、知らせが届いていたのだけど…」
「それがネデルミス側の言う変化ですか?」
ジョストルが目を吊り上げる。
それに対し、ラフィラスはと言うと、ゆるゆると頭を振る。
「追加報告を待っていたのだけど、そのままになっていて……だからまだ彼方の言う変化と合致するものなのかさえわからない。
ただ、変化と言っても、霧が発生する頻度が増えたように思う…くらいらしくてね。
単なる天候の不順等によるものであればいいけれど、何らかの原因があった場合は……あぁ、もっと強く追加調査の指示を出せばよかった……」
「霧……」
ジョストルは腕組みをして唸った。
「追加報告はまだ届いていないのですね?」
「少なくとも僕の手元にはまだ届いていないよ。
第一報からは少し経っているけれど…」
「ならばこれからマーセルかティルナスの所へ行きましょう。
殿下の手元に届いてないとなると、本当に届いていないか、届いていても別の場所に紛れている可能性があります。
もし紛れている場合は、マーセルの所に……いや、やはりティルナスの方が早いかもしれないですな…」
先に部屋を出ようとするジョストルを、ラフィラスが止める。
「待って…落ち着いて。
ロージント公爵が慌てて居たら、皆が動揺してしまう…」
ハッとした様に身を固くしたジョストルは、ラフィラスの言葉に小さく深呼吸を繰り返した。
「……申し訳ない…」
「こんな書簡が届いたのだから、気が動転して当然だよ」
落ち着いたラフィラスの言葉に、ジョストルは更に目を瞠る。
何故ラフィラスはこんなに落ち着いているのだろう?
訳のわからない難癖を付けられて、レヴァンかラフィラスのどちらかを…とネデルミスに要求されていると、自覚していないのだろうか?
まさかとは思うが、こんな理不尽な要求等、臣下がどうにかするべきとでも考えている?レヴァンが行けば良いと……?
そこまで考えて、流石に飛躍しすぎだと、ジョストルは自身を戒める。
先に立って歩きだしたラフィラスの背中を、ジョストルは何とも言えない気持ちで見つめた。
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