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奥の部屋と言っても、今は文官達が休憩しているので人気が途絶えているだけに過ぎない。
その為あまり内密の話他に適した場所ではないのだが、わざわざ別室に移動したらしたで、憶測を呼ぶ結果になりかねず、とりあえず…と言う判断だ。
先を歩いていたラフィラスは、真っすぐに窓まで進み、外の様子を探る。
「大丈夫そうだよ」
「殿下……」
本当に成長したと思う。
元々ラフィラスは優しく素直な性質だった為、王族としては物足りなさをジョストルは感じていた。
だがいつの間にか随分と王族らしくなったと感慨に耽る。
それと同時にとても申し訳ない気持ちに襲われた。
ラフィラスが周りに振り回され、両親との時間も制限され、アーミュのような害虫に集られるような隙を作ってしまったのは、自分達だと言う自責の念。
発端は王太子ラカールによる婚約拒否騒動。
ネデルミス王国の王族、準王族女性達との婚約話を、いざ顔合わせとなった段階で突然蹴ったのだ。
当時はジョストル達も訳が分からず、大いに慌てふためき、上へ下への大騒ぎになった記憶がある。
事の顛末は後程説明されたが、どうして前もって話しておいてくれなかったのか…と、本気で嘆いた。
ホメロトス王はネデルミス王国との縁を、更に強固にしたいと考えていた。
ネデルミス側もそれに異論はなかったらしく、話はとんとん拍子に進んでいく。
ラカールに学院生時代から懇意にしている令嬢がいた事は、ロズリンド王宮側も勿論把握していた。
しかし王族の責務として、政略結婚は受け入れると思われていたのだ。
実際、顔合わせパーティの予定についても、ラカールからは何の発言もなかった。
王族の政略結婚で顔合わせ…所謂見合いの様なモノが必要かどうかは疑問が残るが、ネデルミス側の王族、準王族の女性達が見合い代わりのパーティに、ロズリンド王国へ来訪すると言う事が決定する。
国の力関係や女性達の移動と言危険性を考えれば、ラカールがネデルミスへ向かう方が理に適っていると思われるのだが、何故かネデルミス側からの希望でそう言う事に決まった。
だが、顔合わせパーティへの参加をツヌラダ王国が希望した事で、事態は膠着してしまう。
ツヌラダ王国と言うのは、ロズリンド王国の南東側に位置する国で、王家は存在しているものの、貧しく不安定な国だ。
内戦には至らずとも、小競り合いが頻発し、実質犯罪者組織に支配されていると言っても過言ではない。
そんな国なので、他国との国交は殆どない。
ロズリンドとしても接しているが故に要警戒対象の国だ。
内実はわからないが、表向きネデルミス王国との接触を希望しての打診だった。
貧しく、内乱の絶えない国だからこそ大国と接触を図りたいというのは、理解出来ない訳ではないが、ネデルミス王国とツヌラダ王国の間に国交はない。
それならそれで、自国に招くなり、外交担当者を派遣するなりすれば良いと思うのだが、どうやらそう言った努力は既にしていたらしく、何度も打診はしたがずっと門前払いを喰らっていると言う話だった。
だからと言ってロズリンドを巻き込まないで欲しいというのが本音だが、位置的にロスリンド王国が、ツヌラダ王国とネデルミス王国との間にあり、実質ネデルミス王国の盾となっていた。
先に話した見合いの場をロズリンドにしたのも、その辺りに理由があるのではないかと言われている。
ラカール王太子がネデルミス王国へ向かう事により、ロズリンド王国の警備が手薄になる事を危惧したのではないか…と、当時も囁かれた。
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