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其処へ、ここ最近の恒例になりつつある、茶菓子と軽食の差し入れが届いた。
届けたのはラフィラス本人で、差し入れに乗じて文官達との交流を果たしつつ、労働状況の確認も行っている。
とは言えラフィラス本人も忙しくしており、合間を縫っての差し入れなので、時間はまちまちだ。
「皆、忙しくさせて申し訳ない。
先は長い、今日もきちんと休憩は取ってくれるようお願いするよ」
途端にラフィラスの周りに文官達が集まる。
「お、これって最近露店通りの近所に出来た店のクッキーだよな?」
「やった。今日はもう差し入れなしかと残念に思ってたんだよぉ」
「あそこの美味しいんだよな。仕事終わりに買いに行っても品切ればっかりでさぁ」
「俺も娘に買ってきてってせがまれるんだが、ずっと買えないままでなぁ……1枚お土産に貰ってもいいかな…」
嬉しそうに菓子に手を伸ばす文官達に、ラフィラスも柔らかく微笑み、別の皿も勧める。
「こっちの皿には軽食を用意してあるから、合間にでも摘まんでくれれば、料理長も喜ぶよ」
文官達はワッと歓声を上げた。
それを後目に、ラフィラスは室内を見回す。
進捗を訊ねようと、責任者クラスの者を探したのだが……丁度良い人物が居た。
「ロージ………」
名を呼びながら足を踏み出したが、目的の人物の表情は険しい。
何やら騎士と話し込んでいる。
これは邪魔をするべきではなさそうだと判断し、ラフィラスは足を止め、くるりと反転した。
だが、目的の人物の方が先に気付いて声を掛けてくる。
「これは王子殿下」
「ぁ、ごめん……じゃない、すまない。
邪魔してしまったみたいだね。僕の方は後で構わないから、そっちを優先して欲しい」
時折まだ子供のような物言いが出てしまうようで、慌てて言い直すラフィラスを見ながら、ジョストルは騎士を下がらせた。
「いえ、此方は終わりましたので…」
だが明らかに表情が暗い事に、流石のラフィラスも気付く。
「いや、でも……」
ジョストルの視線を追い、彼が手に持った書簡を気にしている事が窺い知れた。
「それのせい?」
「ぁ……まぁ…」
妙に歯切れの悪い様子に、ラフィラスはジョストルに近付き、手の中の書簡を覗き込んだ。
まだ封はそのままだったが、北の隣国であるネデルミス王国の紋章が刻まれている。
「ネデルミス…?」
ふっと記憶の端に光景が浮かんだ。
ネデルミスとの国境に接する、王家の直轄領からの手紙と書類。
先んじて内容を確認したであろう文官の顔色は冴えなかった。
ラフィラスは嫌な予感に囚われる。
嫌な予感と言うのは、外れて欲しい時程外れない事が多い。
「すまないけど、僕にも見せて貰っても良いだろうか?」
「え?……ぁ、ですがまだ内容を確認しておりません。
内容を確認した上で、後程お持ちします」
「いや、手間が重複するだけだから」
そう言ってラフィラスは、休憩がてら談笑している文官達を見遣る。
「ロージント公爵の様子から察するに、その書簡はあまり良いモノではないのだろう?
奥の部屋で見て見よう」
ラフィラスが先に立って奥の部屋へと歩き出す。
こうなっては致し方なし…と、ジョストルも後に続いた。
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