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ミアとシーナ

暇なときに流し見していってください。

この物語はフィクションであり、登場人物や他の物事に関係性は一切ございません。

出会いというものは…いつも唐突である。

そして当然、一人一人に感情、価値観、人生もある。そんなのようなことは、幼少期にして少女は気づいていた。

白髪の少女、ミニ・フラストレアスは幼少期は体が弱かった。

齢5歳…「ケホッ…ケホッ」と目を瞑り。手を口にあてながらふかふかしたベッドに横たわりながらぎゅっと口に当てていない方の手で布団を握る。

「おーい!待てよー!」

「やめてよ〜!危ないじゃん!」

カーテンの間から見える同級生の遊びを横目に、ミニ・フラストレアス…ミアは「いいなぁ…」と羨ましげにいう。

知っているのだ。自分の体は弱く…もうこれ以上《《生きられない》》ということに。

そう、これもまた幼くしてミアは自分は死ぬんだと悟っていた。外で遊んでいる同級生…ミアは病院にいるのではなく『魔法学園』が保有する特別な施設に身を潜めるようにいた。

最初こそはその特別な施設というもの自体に興味があり、ミアに対しても心配の声を上げる生徒がいた。だが所詮は子供だ…時間が経つにつれてミアはもう()()()()()として扱われていた。

カーテンが全て閉め切っていないせいで薄暗いその部屋にただ一人、ぽつんとベッドの上に横たわる少女。となれば当然自分の置かれている状況は何となくわかる。

そして…ミアはその赤い瞳にうるうると涙を浮かべながら…

「お兄…ちゃん」

そう呟いた。家族とは1年前に別れておりそれ以来会っていない。これまた不思議なことで5歳で思っていいことでは無いのだが、自分は見限られたのだと悟る。

時々、ひとつ上の兄『キイ・フラストレアス』が脳裏をよぎる。それを思い出してはうるうると涙を浮かべ、大口を開けて泣きそうになるのをグッと堪えるように唇を竦める。


ーーーーーーーー


【いつか必ず、お兄ちゃんが迎えに行くからな!】


ーーーーーーーー


その言葉を信じ、ミアはその迎えを待つように特別施設へと身を預けていた。

楽しそうに遊ぶ同級生から目を逸らし、ふと…この部屋の扉の方に視線を向ける。

するとそこには「おぉ!ここが秘密基地かぁ!」と目をキラキラさせ、口を大きく開けながらいうその容姿に思わずミアも反応してしまう。

「秘密基地…?」

横たわっていたベッドから体を起こし、首を傾げながら言うミアを見て、ニヤリと口角を上げながら話す。

「私知ってるんだよね!ここで()()なことしてるんでしょ!?」

「…?」

首を傾げていたミアであったがそれを言う頃にはもっと角度がついていた。何を言われているのか分からない様子に、少女はタタッと足音を鳴らしながら近づく。

その容姿はとても可愛らしく、肩には届かない赤い髪、瞳は真っ赤というより少しだけピンクかかっており、言動とはうらはらに華奢な容姿を見てミアは「可愛い…」と内心呟く。

近くに来るや否や顔をグイッとミアの方に寄せて真剣な眼差しで…

「私、シーナ!シーナ・アングレアって言うの!」

「シーナ…さん」

「別にさん付けなんて要らないわよ、って言ってもあなたは言うと思うけど…」

顔をグイッと近づけて名前を言っていたはずなのに、話終わる頃には顔を離してぷいっと視線を逸らす。

だが、すぐに逸らしていた視線を元に戻し…口を竦めて話し出していた。

「その…あなた…えっと…」

「ミアでいいですよ…?」

「ミアは…魔法とかは、使えないの?」

「使えないことは無いですが…見ての通りですので、炎を出したりするのは出来ませんね」

ふ〜んという鼻を鳴らしながらシーナはジト目を向けていた。はたから見れば煽りにも見えるその行為、ミアはその話に続いて…

「私も魔法を使いたかったです…」

「皆さんと…」

ぽたぽたと涙がこぼれ落ちる。布団をぎゅっと握っている手にも落ち、滴るようにその涙は布団に触れる。シーナは下を向きながら涙をぽたぽたと垂らすミアをみて口を開く。

「私も、あまり魔法は得意じゃないの」

「……っ!?」

いかにも魔法が得意そうなシーナ、思わぬ言動に目を見開いてしまうミアの表情。

「お母さんもお父さんも、み〜んな嫌い。だからこの魔法学園とかいう施設に自ら足を運んだの」

「皆…嫌い…なんですか?」

「えぇそうよ、ミアは知らないと思うけど、ここはただの()()()()じゃない」

何かを知っているような、あたかも自分が正しいと言わんばかりの表情を浮かべ、右人差し指を前にビシッと出しながら高々に…

「落ちこぼれの人間が来る場所なのよ!」

「…フフッ」

思わぬ反応にシーナは少しのけ反る。そこは普通「えー?」とか「はぃぃぃいいい!?」とかだろうと思わせつつも、前に出していた人差し指をしまうように、腕を組んで話す。

「まぁ私も落ちこぼれなわけだけど…」

…と口ごもるシーナの話を遮るかのようにミアも弱々しい声を震わせながら話す。

「誰も落ちこぼれじゃ…ないです。私が1番の落ちこぼれなので…」

「それは違うわ」

「…え?」

顔をズイッと近づけ、目を細めながらシーナはいう。

ミアはどことなくその自信ありげな様子を目に、ぎゅっと握っていた拳の力が和らぐ。

「ミアは落ちこぼれなんかじゃない、むしろその逆よ!すごい才能の持ち主なんだから!」

「…え〜っと?」

首を傾げるミアに畳み掛けるように話すシーナ。

「信じてないわね!?私がここの場所を通り掛かる時微かに()()を感じた。だからビビっと来たのよ!」

「ビビッと…」

「私はあなたと友達になりたいの!」

少し頬を赤らめながら、「言わせないでよ!」といいたげな表情を浮かべるシーナ。

お嬢様気質でプライドが高そうに見えるがシーナは自分の立場をよく理解している。そして、自分のことを卑下するミアに…シーナ()()()()を重ねてしまったのだ。

恥ずかしそうに口ごもるシーナを見て、ミアは優しい表情を浮かべるが…すぐにその表情はスンっとなり、眉をひそめながら下を向く…

「嬉しいですが…きっとそれは叶わないです。」

「なんでよ」

「わかるんです。自分がもうすぐどうなってしまうのか…ゴホッゴホッ」

弱々しい声色と共に咳き込むミア。先程より顔色が悪くなっている様子を見てシーナはミアの手を取り、まっすぐ目を見て話していた。

「そんな事言わないの!絶対にミアの友達になる!」

「…っ!?」

「魔法学園でみんなと一緒に魔法を習うの!」

「……っ」

「10年もすれば街に出かけることだって、ダパーティを組んでダンジョンを攻略することだって出来る!」

「…シーナ…さ」

「毎日通うからっ!」

涙を溜めながらシーナの話を最後まで聞いていた…が、最後の『毎日』という言葉を最後にボロボロと少し大きめの涙が溢れかえっていた。

そしてシーナは「大丈夫だから、よしよし」と頭を撫でて抱きしめる。

そこから毎日通った。色々な話をした…世間話から学校で習っている魔法について。嬉しそうに話すシーナをみて、ミアは優しい笑みを浮かべる。

そこから1年が経過すると共に変化に気づく…

「元気になってる?」

「顔色も良くなったし、すげぇ元気に見える!」

2人の親睦は…毎日顔を合わせて話しているのなら当然深まる。ミアはシーナと2人きりの時だけ、敬語が外れて柔らかい口調で話してくれる。

「でも、何でだろうシーちゃん」

手を顎に当て、考え込むように首を傾げるミア。それを見たシーナが少しだけ視線を逸らす。

「まぁいいじゃん!このまま元気になればみんなと授業受けれるよ!」

何かを悟られないようにと話すシーナを見て、ミアは気付かないふりをしながら…

「そうだね!早く授業受けたいな〜!」

白髪の髪を靡かせながら…シーナは少し見惚れてしまった。


ーーーーーーーーーーーーー


時は遡り、シーナが初めてミアの部屋を訪れる30分前の出来事…


コツコツと廊下を歩きながらなにか面白そうなことはないかと辺りを見渡すシーナ。

家にいるより断然居心地のいい落ちこぼれの学園…だがシーナにとって少しだけ、いや…かなり刺激が足りなかった。

5歳が抱いていい感情ではなかったが、厳しく育てられたシーナにとって…ここは居心地がいいのと同時に、退屈だった。

「……」

何か話しているような声が聞こえ、シーナは耳を澄ます。魔法が使えるのなら話は早いのだが…ここは落ちこぼれの学園、まだ幼少期だったというのもあり、ただ近づいて盗み聞くということしか出来なかった。

足音を消しながらゆっくりと近づくと…ごにょごによしていた声が次第に鮮明に聞こえ始める。

「ミニ・フラストレアスフラストレアスについてなのだけど…」

中年の女性が悲しげな口調でゆっくりと話していた。

(ミニ・フラストレアス…あの特別施設にいる子の事?)

耳をドアにくっ付けてその会話を聞く。

「何度も言うが、俺が指定した|《薬》を飲ませておけばいい!」

「ですが…」

途端にバンッ!と机を叩くような音が聞こえ、方をビクリと動かすシーナ。

(絶対に裏があるやつじゃん)

そう心の中でぼやきながら身を瞑りながらその会話内容を深く聞いていた。

「出来ないのなら…わかるよな?」

「はい…承知しました」

中年の女性がしぶしぶ承諾するとこちらへと足音を立てて向かってくるのがわかり、シーナは何事も無かったかのようにその中年女性とすれ違うように廊下を歩きはじめる。

扉が開くと表情をニコリとさせてシーナに挨拶する。

「こんにちはシーナさん」

「こんにちは!先生どうかしたの?」

シーナは純粋無垢な笑顔を作り、中年女性にそう問いかける。

その先生は眉をピクリと動かし、口が一瞬引き攣っているのを目にするが知らんぷり。そしてこの中年女性も、シーナのことを()()()()()としか思っていない。

厳しい家庭環境で育ったシーナは魔法こそ使えなかったものの、非常に頭が良かった。それを隠すように、いつもはツンツンとした表情を見せているという訳だ。


先生と挨拶を交わした後、ミアのいる部屋へとスタスタ向かう。


ミアは毎日決まった時間に薬を飲まされる。その薬がなんなのかは知らないが、間違いなく良くない薬…そしてそれを聞いてしまえば自ずと…

「そんなことさせない、絶対に私が止めて見せる」

…と、そう口にする。

何を企んでいるのかとか正直どうでもいい…ただ、私はその子を助けなきゃという思いで特別施設に向かい…ミニ・フラストレアスと書かれた部屋に着く。

そして…気持ちを切り替えシーナは目をキラキラさせ、口を大きく開けながらその部屋へとはいる。


「おぉ!ここが秘密基地かぁ!」


あたかも何も知らないかのように高々と声を上げるシーナであった。

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