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みかんはその夜に自分のあったかいふかふかのベットの中ですやすやと眠っているときに、お嬢様に拾ってもらったときのことを思い出していた。
大きな(拾ってくださいと書いてある)段ボール箱に入れられて、前の家族から捨てられてしまったみかんは、ずっと、ずっと冷たい雨の降る曇り空のしたで、泣いていた。
どうして自分はすてられてしまったのだろう?
私はとっても悪い子だったのだろうか?
迷惑ばかりをかけていたのだろうか?
役立たずだからだろうか?
わがままばかりをいっていたからだろうか?
どうしてだろう?
ねえ、どうしてなんですか? ご主人様。
泣きながらみかんはずっとそんなことを思っていた。
もう一度、ご主人様に会いたいと思った。
自分をもう一度、ごめん。悪かった。といって拾いにきてほしいと思った。もうわがままも悪いこともいたずらもしないから、ずっといいこにしているから、もう一度ご主人様の家に入れてもらいたいと思った。
でも、そんなことはなにもおこらなかった。
ご主人様はみかんのことを迎えにはきてくれなかった。どんなに泣いていても、きてくれなかった。
やがて、お腹が減ってきて、みかんはぐったりとしてしまった、泣くこともうまくできなくなってしまった。
そんなぼんやりとする意識の中で、冷たい冷たい雨の中で、小さな体を震わせながら、みかんはこのままわたしはここで死んでしまうのだと思った。
みかんはすべてをあきらめるように、大きな段ボール箱の中で小さく丸くなって目を閉じた。
みかんがお嬢様に出会ったのはそんなときだった。
「どうしたの? だいじょうぶ?」というとても優しい声が聞こえた。それはとても綺麗な女の子の声だった。
みかんがゆっくりと目をあけると、そこにはお嬢様がいた。冷たい雨の中で白い傘をさして、かがみこんでいるお嬢様は笑顔でみかんを見ていて、「捨てられちゃったの? なら私のお家にいらっしゃい。こんな寒いところにいたら、体を悪くしてしまうわ。さあ、こっちにおいで」と笑いながら、みかんにその小さな白い手を差し出してくれたのだった。