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才能ありの妹を才能なしの姉が守ります ~魔力がなくても生まれつき、斧神様に憑かれています!~  作者: フカセ カフカ


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第58話 くだらなすぎる姉と悩む妹

 町全体が静まり返った夜の底、リアナはいまだ眠れずにいた。というのも、姉の件がどうしても納得いかず、悶々としたまま毛布にくるまっていたからだ。


 「ああ~もうっ! 気になって仕方がないわ。こうなったら何が何でも尻尾を掴んでやるんだから!」


 軽やかな足捌きで毛布を蹴り飛ばした彼女は、そのままの勢いでベッドに起き上がる。そして、上着を羽織って部屋の入口に立つと、扉をこそっと開けつつ耳を澄ませた。


 「うん、大丈夫。バレないように調査開始よ」


 ミサラが寝静まった音を確認して慎重に部屋を出る。リアナはその足を屋根裏へ続く梯子へと忍ばせ、音を立てぬよう一段ずつゆっくりと上った。


 侵入先は姉の部屋。誰もいない室内は静寂と闇に閉ざされ、彼女の視界を遮っていた。リアナは手探りで灯りを探したが見つからず、苦労の末に、どうにか窓枠に手をかけることができた。


 ふう、と、一息。窓をガチャリと開け、夜空の月に期待を寄せるも今宵は生憎の曇り空だった。けれど薄雲のせいか、室内も少しだけ明るさを取り戻せたようだ。


 「あったあった。これでよし、と」


 月明かりを頼りに、彼女は部屋にあった古いランプに火を灯した。ほんの少しだけ時間を食ってしまったが、長居は無用だ。リアナはさっそく姉の部屋を物色しはじめた。


 「へえ~、こんな本も読んでいるのね、意外……。案外真面目だったりする?」


 自然と真っ先に手に取ったのは、書棚に積まれた本であった。読書好きゆえに仕方のないことだが、リアナは否定で顔を振るった。


 「ダメよ、こんなときに本なんて読んでる場合じゃないわ」


 ついつい目的を見失いがちな彼女。内容が気になりながらも、欲を断ち切り書棚に戻すと、手がかりのありそうなテーブルへと目を向けた。


 パサッ──そのときだった。戻した本に挟まっていたのか、一枚の紙がリアナの足元に落ちてきた。彼女は膝を屈め、その二つに折られた紙を手に取って何気なしに見開く。


 「はっ、なにこれ? クリームたっぷりの苺……パ、パフェ? 王都限定?」


 それは、アーリナが一日千秋の想いで綴ったパフェに贈る言葉であった。『必ず食べにいくから待っていてね』だとか『早く皆、マグークスいってくんないかなあ』と、多少はイラッとする文言がありながらも、リアナが求める答えが克明に記されていた。


 「やっぱり。お姉さまの弓修行なんて、所詮は戯言でしかなかったのね──って、待って……。じゃあ今は王都にいるってことなの?」


 彼女の顔は呆れに歪んだが、すぐに眉を顰めて深刻さを纏った。瞳はいつになく真剣で、片手の指先で顎を支え、書かれていた言葉を並べて頭を整理した。


 「お姉さまは今、王都にいる。お父様たちはその王都の件で話し合いをしている。あの場には、王国騎士団長まで座っていた……情勢が厳しいとか、反乱がどうのとか──」


 リアナは何も、自ら進んで屋敷に戻ってきたわけではなかった。王都での不穏な動きを察知した王国騎士団長レイハルクが、マグークスとフィットリアに対し、助力を求めるというかつてない出来事が起こったためである。


 彼女がいた席はあくまでもマグークス領との懇親のためであった──がしかし、その空気は一変し、争いの議題が急遽机に置かれたため、父ダルヴァンテより屋敷に戻るよう命じられたのだ。無論、一切の他言無用とのことで、このことはミサラにも伝えてはいない。


 考えを纏める中で、リアナの頬には焦りの粒が滴り落ちた。争いの焦点となっている場所に、アーリナが何の護衛もなく呑気に出かけてしまっている。


 「パフェって何なのよ。苺たっぷりって、パルフェの書き間違い? でもそんなことのためにわざわざ王都まで抜け出すなんて、よりにもよってこんな時に……」


 リアナ自身、この国の取決め、領主間の関係性については嫌というほど熟知していた。だからこそ、王都のあるザルヴァンシュタイン領が、他領に頼る行為をすることはあり得ないとも思っていた。


 救援を求めたのは、王に次ぐ権力者とされるレイハルク。これから王都で起ころうとしていることは、世界の理を狂わす凶兆事変に他ならないとさえ言わしめるほどの説得力だ。


 考えれば考えるほど事態は重く、リアナの小さな肩へと圧し掛かる。これまで一度だって領の外に出たこともない姉が、たった一度のくだらなすぎる過ちで、命を落としかねない窮地に晒されてしまっている。


 「マズいわ。頼りの護衛も、しがない魔猟師が一人……せめてミサラが一緒だったら、こんなにも──」


 リアナは奥歯をガタガタと鳴らし、落ち着きのない目をあちらこちらに走らせた。いつもの冷静さも彼女の中からは消え失せ、ただただ「どうしようどうしよう」と独り言ちる。


 「そうよね、悩んでる場合じゃないわ、私もすぐに王都に──でも、一人じゃどうにも……」


 頭を抱え、両肘を机について座り込んだ彼女は、髪の毛をわしゃわしゃとかき乱した。そこへ、


 「リアナ様、ここで一体何をなさっておいでなのですか?」


 背後からかけられた声が、リアナの耳筋をピンとさせた。彼女が恐る恐る振り向くと、入口から顔だけを覗かせたミサラが心配そうに見つめていた。


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