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四季を彩るアルビノへ  作者: 夜月 真
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カナリアイエロー色

「かき氷二つ、お願いします」

 僕らが足を止めたのは、かき氷の屋台の前だった。小銭を手渡し、機械音を鳴らしながら削られた固体の水に、シロップが出る蛇口を捻る。彩音が次に店主からそれを受け取ると、戸惑いながらも真似て蛇口を捻ろうとする。

「これがイチゴ、こっちがレモン、ブルーハワイ、コーラ……」

 順に味を説明すると彩音はレモンの蛇口から手を離し、イチゴのシロップを氷の上から垂れ掛ける。

「もっとかけちゃっていいんだよ。ほら、このくらい」

 あまりにも遠慮気味な少なさに、思わず口元が緩む。適度にかけられたシロップは、まるで氷の山に苺色(いちごいろ)の雪を被せたような仕上がりだ。


 人混みに流されるように僕らは会場内を歩く。運の良いことに、僅かではあったがふたり分、座れそうな隙間をうまいこと見つけ出した。芝生の上に腰を下ろそうとする彩音を見かねて、僕はひとつ思い出す。

「あ、待って。レジャーシートがあるんだ」

 海で出し忘れたのはこれのことなんだ、と付け足して、ふたり分にしては狭いスペースにシートを折りたたんで座り込む。彩音に預けたかき氷を受け取ると、花火大会開始のアナウンスと同時に夏らしい音楽がスピーカーから鳴り響いた。蝉の鳴き声が薄まっていくように錯覚する。


 人の隙間から見える夏草、公園の脇道に佇む木々、東の空からだんだんと光を失っていく空模様、全てが新鮮に感じる。僕らはかき氷を口に含みながら、時折頭を抑える。互いのその姿を見て笑い合う。そして高く打ち上がった尺玉は、不思議と心を躍らせていた。

「音楽ってさ、いいよね」

 唐突な話に、どうしたのかと訊く。

「なんか、言葉がダンスしているみたいで」

「その表現良いね。すごく好きな例え」

 こちらに向けられた笑顔に、鮮やかな彩りが僕らを襲う。ドン! と大きな音を響かせて広がる夏の花は、僕らにとって一層に特別なものだった。かき氷が溶け始めていることも忘れ去り、身体に伝わる振動が、胸の奥の存在を示す。

先に食べ終わったかき氷の容器を置き、カメラを取り出す。次々と打ち上がる花火と横顔を記録に残し、レジャーシートに手をつく。


 紅色(べにいろ)の花が枯れちる姿を前に、彩音が耳元で僕に話しかける。

「来年も一緒に見られたらいいね」

 僕は自然と優しく微笑む。私にも貸して、と言って彩音は首から下げたカメラをぐいっと引っ張りレンズを除く。僕はその力で体が彩音に傾いた。

「花火って、撮るの難しいんだね」

 すぐ真横にその白い笑顔がある。十数センチの距離だ。

 たった数色しかわからない花火を見上げる横顔を間近で確かめる。かき氷を頬張る白い肌と髪を見て僕は、名前を呼んで目を合わせた。

「僕は、彩音が好き」

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