コバルトブルー色
磯の香りと、潮を含んだ海風が白いサラサラとした髪を靡かせている。僕らは止めていた足取りを再び動かし、岩の階段を下って砂浜に近づく。真白な細かな砂粒が陽光を反射させ、痛いほどに目の奥を刺激する。水面が波を立て、日光が昼間の星空のようにキラキラと輝いている。
「白い……」
膝を折って右手で砂を持ち上げるも、指の隙間から水のように流れ落ちる姿を僕は上から見下ろしている。彩音の左肘に引っ掛けた鞄が砂浜に触れている。
「じゃあ、履き替えよっか」
背負っていたリュックから、袋に入るビーチサンダルを二足取り出す。ビニール袋の結び目を解いて、石段の上に座って履き替える。
「熱!」
ズボン越しに、太陽に温められた石の熱を感じ取って飛び上がる。彩音が口元を隠して笑う声が聞こえ、僕は釣られて笑う。最寄りの海の家を探し、お昼ご飯も兼ねてコインロッカーを利用した。
「あ! あれ出すの忘れた!」
とあるものをリュックから取り出し忘れたのを思い出し、声が湧き上がる。
「びっくりした……。あれって?」
なくても問題ないかなと、僕は何でもないとはぐらかした。夏のコインロッカーがお金を返却式にしてくれれば、特に気にもしなかったことだ。
「ご飯食べに行こう」
パラソル付きのテーブルで食べるハンバーグカレーは値段に似合わない量だったが、それでも特別感のある味だ。波が水と空気を混ぜ込む音を聞きながら僕らはお昼ご飯を頬張る。
「ハンバーグもあって、カレーもあるなんて贅沢だね」
不意に、彩音が言った。
「そうだね。けどしばらくは贅沢できないなぁ。交通費も結構したし」
彩音は細めた目を向けて僕を見る。微笑んだまま、また言葉を使う。
「じゃあ今日は、今年最初で最後の夏かもね」
「……あんまりお金を使わないで、夏らしいことしよう」
「そうだね。夏といえば?」
僕は一口、肉を乗せたカレーを運び、飲み込んでから考える。
「うーん、花火……ひまわり…………カブトムシ?」
彩音はプッと吹き出して、笑顔を振り撒くように笑った。
「あはは! じゃあカブトムシ取りに行く?」
「冗談だって。けど夏といえば結局そのくらいな気がする。海は今いるしなぁ」
その後はまた話題が変わって、日常的な話となった。カレーを味わいながらも、ニコニコと収まらない笑顔に僕は意識が向いてしまっている。
カレーも食べ終わり、僕らは靴を脱いで浜辺へと足を着ける。陽光の熱を持った真白な無限の砂粒は僕らの足を優しく沈めた。隣に立ち、足の指をグーパーと交互に変形させるのを僕は真似る。
「すごいよ! 辺な感触!」
砂の中から指先が隠れたり、現れたりするのがよっぽど新鮮に感じるらしい。
ワンピースの丈が風で踊っている姿が目に映り、何か結べるものはないかと問う。
「あ、いいものがあるよ」




