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夢の中

作者: 染井
掲載日:2009/10/15

 わたしはもうすぐ死ぬらしい。夢に出てきた美人さんにそう言われた。こういうのが予知夢というにちがいない。いや、虫の知らせなのかも。


 わたしは二年前から入院している。


 理由はわからない。少なくとも、わたしには。きっと、家族にだけ知らされている、というやつだ。これがドラマだったら、じきにわたしも知ることになると思う。でも、別にドラマじゃないから、死んでもわかんないんじゃないかな?

 ベッドに座って、ぼーっと思っていたら、頭上右上30センチのところから音が降ってきた。おそらく、わたしに話しかけたのだろう。と、遠回しに考える。別に彼のことは、嫌いではない。誰に話しかけられても、こうなるのだ。

 彼は、一年ぐらい入院している。優しそうな好青年だ。一般的には。まぁ、実際そうなんだけどね。

そんで、彼は明日退院するらしい。これは、現在進行形で彼が今言っていることだ。


 良く分からないのだけど、わたしたちは付き合っている、らしい。


 彼から言って来て、わたしはOKした。別に、嫌いじゃないのでね。

 彼は、ニコニコしながら、寂しくなるだとか、時々お見舞いに来るだとか、言っている。

 あー。わたしたちはもう違う世界の人間なんだなぁ。と、痛感。

 わたしなんかと一緒にいて、楽しいのかな。なんて、初めて思った。きっと、あんな夢を見たからだ。

 死んだら会えなくなる。寂しく思ってくれるかな、彼は。

 もうすぐ死ぬって、言った方がいいのかな?

 しばらくすると、看護婦さんが入っていて、もう消灯だ、と言った。彼はお休みと言って、自分のベッドに戻っていった。

 彼が戻るとすぐ、カーテンを閉め就寝準備。さっさと横になる。目を閉じると、何をしたわけでもないけど、睡魔が襲ってきて、夢に引きずりこまれる。





 ――――あぁ、また同じ夢か。何もない空間にボクと美人さん。

今日も美人さんがわたしの頭に話しかける。

いつもと違う内容。

手を差し出す美人さん。

そうだ。美人さんは、もしかして、

――――こっちにおいで。

死神?

わたしも、同じように手を伸ばす。

が、

しかし。

――――ダメだ。

わたしの隣に彼はいた。

わたしが伸ばしかけた腕を掴んでいる。

もう一度、言った。今度は確認するように。

突然、美人さんが、かっと目を見開くと、筋張った腕を伸ばした。美人さんの面影は、もうない。そしてあれは、彼の体を掴んで、深い闇の中に連れていってしまった。






 バサッ。

 跳ね起きる。

 はー。はー。はー。

 息が荒い。

 そして、寝汗が凄い。凄すぎて、肌寒いほど。


 あっ、そうだ。連れていかれたあと、どうなったんだ?

 ベッドからそっと降りる。スリッパを履くのは面倒なので、裸足のまま。

 ひたひたひたひたひたひた、ぴたり。

 ドキドキする。そっとカーテンを開ける。

 いた。確認完了。ちょっと、顔が青白いような気がするけど……。大丈夫、わたしも今はきっと同じ。

 任務を全うしたであります、隊長。隊長?誰?まぁ、いいか。

 安心したら、眠くなってきた。

 わたしは、ベッドに戻って寝直した。朝までぐっすりだった。



 結局、彼は死んでいたらしい。

 夜のうちに、心臓麻痺でポックリと。苦しくはなかったらしい。医師曰く、そういうことだ。

 あと、原因は不明。そりゃそうだよね。彼は、わたしの代わりに逝ってくれたんだから。

 その後、一週間程度で回復に向かい、その3日後わたしは退院した。

 嘘のようだ、と医師が。

 奇跡だ、と家族が。

 そんなことはない、とわたしの心が、叫んでいた。

 退院後、彼の家族と関わりは全くないが、彼の命日には、毎年、墓参りに行っている。


 たまに思ってしまう。夢から覚めた時に、彼の異常に気が付いていたら、彼は今、どうしていただろうか、と。わたしはどうしていただろうか、と。



 彼は、生きていたのだろうか。



 わたしは、死んでいたのだろうか。



――――答えはもう出ないけど。


この小説は、少し前に書いたものです。

なので、読みにくかった部分もあったと思いますが、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかのオチに驚きました。死神さん恐ーい(>_<)
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