夢の中
わたしはもうすぐ死ぬらしい。夢に出てきた美人さんにそう言われた。こういうのが予知夢というにちがいない。いや、虫の知らせなのかも。
わたしは二年前から入院している。
理由はわからない。少なくとも、わたしには。きっと、家族にだけ知らされている、というやつだ。これがドラマだったら、じきにわたしも知ることになると思う。でも、別にドラマじゃないから、死んでもわかんないんじゃないかな?
ベッドに座って、ぼーっと思っていたら、頭上右上30センチのところから音が降ってきた。おそらく、わたしに話しかけたのだろう。と、遠回しに考える。別に彼のことは、嫌いではない。誰に話しかけられても、こうなるのだ。
彼は、一年ぐらい入院している。優しそうな好青年だ。一般的には。まぁ、実際そうなんだけどね。
そんで、彼は明日退院するらしい。これは、現在進行形で彼が今言っていることだ。
良く分からないのだけど、わたしたちは付き合っている、らしい。
彼から言って来て、わたしはOKした。別に、嫌いじゃないのでね。
彼は、ニコニコしながら、寂しくなるだとか、時々お見舞いに来るだとか、言っている。
あー。わたしたちはもう違う世界の人間なんだなぁ。と、痛感。
わたしなんかと一緒にいて、楽しいのかな。なんて、初めて思った。きっと、あんな夢を見たからだ。
死んだら会えなくなる。寂しく思ってくれるかな、彼は。
もうすぐ死ぬって、言った方がいいのかな?
しばらくすると、看護婦さんが入っていて、もう消灯だ、と言った。彼はお休みと言って、自分のベッドに戻っていった。
彼が戻るとすぐ、カーテンを閉め就寝準備。さっさと横になる。目を閉じると、何をしたわけでもないけど、睡魔が襲ってきて、夢に引きずりこまれる。
――――あぁ、また同じ夢か。何もない空間にボクと美人さん。
今日も美人さんがわたしの頭に話しかける。
いつもと違う内容。
手を差し出す美人さん。
そうだ。美人さんは、もしかして、
――――こっちにおいで。
死神?
わたしも、同じように手を伸ばす。
が、
しかし。
――――ダメだ。
わたしの隣に彼はいた。
わたしが伸ばしかけた腕を掴んでいる。
もう一度、言った。今度は確認するように。
突然、美人さんが、かっと目を見開くと、筋張った腕を伸ばした。美人さんの面影は、もうない。そしてあれは、彼の体を掴んで、深い闇の中に連れていってしまった。
バサッ。
跳ね起きる。
はー。はー。はー。
息が荒い。
そして、寝汗が凄い。凄すぎて、肌寒いほど。
あっ、そうだ。連れていかれたあと、どうなったんだ?
ベッドからそっと降りる。スリッパを履くのは面倒なので、裸足のまま。
ひたひたひたひたひたひた、ぴたり。
ドキドキする。そっとカーテンを開ける。
いた。確認完了。ちょっと、顔が青白いような気がするけど……。大丈夫、わたしも今はきっと同じ。
任務を全うしたであります、隊長。隊長?誰?まぁ、いいか。
安心したら、眠くなってきた。
わたしは、ベッドに戻って寝直した。朝までぐっすりだった。
結局、彼は死んでいたらしい。
夜のうちに、心臓麻痺でポックリと。苦しくはなかったらしい。医師曰く、そういうことだ。
あと、原因は不明。そりゃそうだよね。彼は、わたしの代わりに逝ってくれたんだから。
その後、一週間程度で回復に向かい、その3日後わたしは退院した。
嘘のようだ、と医師が。
奇跡だ、と家族が。
そんなことはない、とわたしの心が、叫んでいた。
退院後、彼の家族と関わりは全くないが、彼の命日には、毎年、墓参りに行っている。
たまに思ってしまう。夢から覚めた時に、彼の異常に気が付いていたら、彼は今、どうしていただろうか、と。わたしはどうしていただろうか、と。
彼は、生きていたのだろうか。
わたしは、死んでいたのだろうか。
――――答えはもう出ないけど。
この小説は、少し前に書いたものです。
なので、読みにくかった部分もあったと思いますが、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。




