取り立て
「いらっしゃいませー」
扉の音共に聞きなれた声がする。店長は俺の顔をみていた。
「てんちょー。給料貰いにきた」
「優真君じゃない。まだ給料日じゃないし、これからシフトがあるんだから」
直球に頼んでも駄目か。ならばこその、プランB。
「俺は悪魔憑きだ」
「? 何を……言ってるの? 」
直球に伝えられた真実に、店長は戸惑う。ここは少し離れたところにあるから、その話はまだ伝わってきてないのだろうか。
「殺されたくなきゃ、さっさとよこせ。それと、逃げなきゃだから明日からのシフトはぜーんぶバックレるから」
「どうしたの優真君、今日のあなたは何かおかし……」
客の1人が突然燃え出し、その場に倒れる。
「ああなりたい? 」
他の客が恐怖し店を出る中、俺は店長を脅迫する。
「少し……時間をちょうだい」
「ちょうだいじゃねぇよ、くださいだろ? 客への言葉使いも忘れたのか? 」
「時間を……ください」
「5分待ってやる」
バックヤードに急いで入っていく店長。
「今のうちにレジから取るか」
がら空きになったレジの前に移動する。
ーーー全部盗んでしまえばいい
「いやもう計算してある。だいたい10万くらい」
ーーー壊すのだろう? 派手にやってしまえ
「バイトしてたのに、取り方知らないわけ無いだろ」
10万円をレジから抜き出し、先ほどの位置へと戻る。
ーーーそういえばさっき、何の夢見せたんだ?
「宝くじが当たって親戚が増える夢」
それからしばらく待ったが、一向に店長は出てこない。
遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
ーーーこれは……呼ばれたな
「警察か」
「あなたはここで終わり! あなたに渡す給料なんてない!」
音を聞いて安心したのか、バックヤードから店長が出てきた。
「あっそ。……えーっと名前なんだっけ?」
ーーーナイトメア
「名前を知らないなんて、やっぱり悪魔憑きなのね! 」
「契約してれば、俺はお前の能力使えるんだよな? 」
ーーーさっき練習したし、客に向かって使っていただろうが
「何をいってるの! さっさと捕まりなさい!」
「うっさい黙ってろ」
突然、店長が黒い炎に包まれ、その場に倒れる。
「……寝たな。俺、コイツのこと店長としか呼んだこと無かったからさ……名前忘れちまったんだよなぁ」
ーーーどんな夢見せたんだ?
「それっぽい夢。あぁそれと……言っとかなきゃ」
倒れた店長の真横に立つ。そしてこういい放った。
「俺はお前が大っ嫌いだ。殺してやりたいぐらいにな」
コンビニを出てすぐ先に、何人もの警察が銃を構えて待ち構えていた。
「悪魔憑き! 手を上げておとなしく投降しなさい!」
どーせ撃ち殺すくせに。
ーーーで、どうやって突破する
「強行突破……しかねーだろうぜ!」
「何かしてくるぞ! 」
警察の1人が黒い炎に包まれる。それにつられるように、右に左に炎が大きくなっていき、他の警官をも巻き込み、バタバタと倒れていく。
ーーーやるねぇ
「炎が伝染するって、お前が言ったんだろ」
ーーーで、どんな夢見せたのだ?
「家族を殺す夢。さっさと逃げるぞ」
俺はどこかと遠くへ、走り、走り、走り続けた。
追いかけてきた警察一人一人を悪夢に誘いながら、とにかく走って、走って、走って。気づけば俺はきたこともないところに迷い込んでいた。
たぶんとなり町とかそんなんだと思う。同時に思う。俺は、これからどうしようかと。
追記
店長への台詞を変更しました。
なんか違うなーと思ったので。やっぱり、怨念込めた台詞ぶちこまないと。オレが気持ちよくなれんぜ