悪魔憑き
数年前、世界を震撼させる事件が起きた。突然、奇怪な行動をとる奇病が流行り始めたのだ。人によって取る行動は様々であり、突然、何かにとりつかれたようになること、そして、その様子が悪魔のようであると言われた事から、悪魔憑きと呼ばれるようになった。
発症経緯、治療法など、それら全てが一切不明であり、一部の悪魔憑きに、未知の力による破壊行動がみられたため、悪魔憑きとなった人間は、警察や自衛隊、そして悪魔対策課によって処分されるのだ。
そして、その疑いをかけられること。それは、差別の対象になるのと同義であった。
「だれがモドキだ! 我々はただ真実を……」
「だからソースを求めてるんだって。俺の認識じゃ、そうかもしれないって話がだんだん変わっていって、そうなったって流れだったんだが? 人の人生変えるような記事書こうとしてんだ。モドキ呼ばわりされたくなきゃ、もっと慎重に調べるんだな」
俺がそういうと、ふっふっふと笑い出した。どうやら証拠とやらがあるらしい。
「それなら、こんな話はどうかな? 最近、武君を見た、という人が何人か出てきたのだが」
「どうせ、みんなバラバラのデタラメなんだろ? 」
「いや、目撃した場所はバラバラだったが、目撃された場所の名前が一致していた。そして、彼らはその彼の奇行を目撃しているのだ」
「……くわしく」
「食いついたな。なんでも、ゴミ捨て場を荒らしては、コレジャナイ、コレジャナイと叫んでいたそうだ」
「たしかにそれっぽいが、自分で確認したのかよ」
「いや? 今日これから確認しに行くが? 」
当然ですが?みたいな感じに言われてもなぁ。
「お前、たぶん記者むいてないと思う」
「なんだと! 」
なんで俺がキレられてるんだろう。
「ん? 今日か。バイトないし、俺もついていっていい? 」
「ふっ、よかろう。目撃された時間はいづれも夜中。ならば19時に学校前に集合にしよう」
「りょーかい」
自分の目で確かめるためにいかねばならない。そう思ったのだ。あと、コイツあることないこと書きそうだから、証人としてついていくことに決めたのだ。
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そして、時間は過ぎ、約束の時間も少し過ぎていた。
おそいぞ優真君! 何時だと思ってるんだ! 」
「遅刻したのはお前だろ。時間守れんのなら約束すんな」
「たかが5分ではないか! 」
「5分待たせた人間に対して言うような台詞じゃなかっただろあれは」
現在時刻は19時05分。モドキは完全に遅刻である。に対して、とことこ歩きながらのこの態度。コイツ友達いないだろ。
「それで、どうやって探すんだ? 当てもなしに探したって見つからない気がするし、1ヵ所に張り込むか? 」
「張り込む必要はない。武君を見つける前に、遠吠えが聞こえてきたという共通の証言が……!」
「先に言えや」
「情報は武器だ! そう簡単にホイホイ出すわけが無かろう! 」
「逆ギレのお詫びってか! クソヤロウ! 」
「うるせーぞガキ共! 何時だと思ってんだ! 」
「「すいませんでしたぁ! 」」
近所の爺さんにキレられてしまい、あわてて謝る俺ら二人。どうやら、人徳が欠けているモドキでも謝ることはできるようだ。
「……俺にも謝れよ」
「謝罪の代わりの情報だ。我慢しろ」
「その上から目線は何なんだよ」