プロローグ
「きりーつ。れい」
いつも通りの日常が流れている。
「そういえば、最近悪魔憑き増えてるよな」
毎日みる光景だ。
「あの人、頭いってるから」
糞みたいなテンチョーも。
「将来、なにするか決めたか? 」
なにもしたいことがない現状も。はやく決めろという親も。
ジリリリリリリ。
やかましい目覚ましも。
「きりーつ。れい」
こうして毎日は循環する。日常の輪廻の中で行きなくてはならない。
「最新のキャラ当たった? あいつバカ強いんだよなぁ……」
話す内容が変わったとしても。
「この日出れない? 出れる人いなくてこまってるのよ~」
人が変わるわけもなく。
「ご飯粒をのこすな!」
怒られたとしても。
ジリリリリリリリリリリ。
朝はくる。
「ごめーん。次の人出れなくなっちゃって、11時からで大変だと思うけど、21時まで頑張ってね! 」
は?
「遅かったじゃないか」
俺のせいじゃない。
ジリリリリリリリリリリ。
日曜日がやって来た。
……寝よ。
ジリリリリリリリリリリ。
そして今日になった。
憂鬱の月曜日。俺が一番きらいな日。だが必要悪だ。仕方ない。
「きりーつ。れい」
いつも通り日常が……。
……。…………。………………。
アイツがいない。俺の数少ない友達のアイツが。
武はどこにいるんだろう。
そういえば、休みって言ってた気がする。
……そのうちくるか。
明日の今日、明後日の今日、明々後日の今日、日常の輪廻は廻る廻る。それでもアイツは、こなかった。
「悪魔憑きになったんじゃないか」
噂が始まった。真偽はどうでもいい。ただそうなんじゃないか、という憶測がどんどん大きくなる。この言葉はやがて姿を変える。
「武は悪魔憑きだ」
最悪の噂だ。同じクラスの新聞部の人が取材にくる。
「友達が悪魔憑きになって、どう思いますか! 」
「所詮、噂だろ。ソースは調べろ記者モドキ」
この時からだろうか。いや、たぶん違う。武が休み始めたその時から、日常の輪廻は形を変え始めていた。
結論からいうと、武は悪魔憑きになっていた。これは、わりとすぐ分かることなのだが、もう一つ重要な事実がある。それは、これから俺も悪魔憑きになるということなのである。