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僕と文学少女と回顧録  作者: 楠木八重
4/5

先輩

 彼女の風貌は、決して派手なものではなかった。地味といってもいいかもしれない。だがそこには、物静かではあるが一種の可憐さを見出すことができた。


 腰までかかる長さの艶のある黒髪ロング、ウィルソン型のアンダーリムフレームの眼鏡、黒のタイツ、膝上までの長さのスカートと、すべての要素が優等生を彷彿とさせる。

 

 そんな彼女を一言で表すのなら、文学少女という表現が正しいだろう。


「入部希望者?。」

 

 彼女は文庫本から顔を上げて、その薄く茶色がかった澄んだ瞳をこちらに向けて聞いてくる。


「いえ、部活動見学に来ました。まだどの部活に入るか決めていません。」


「そう……、では見学していって。と言っても、ここには私と、本と、歴代の先輩方の作った文芸部の会誌しかないけど。」

 

 彼女はその白くて細い陶器のような指で順に自分と、自分の読んでいる本と、僕の後ろにあるアンティーク調の本棚を指す。その本棚をよく見ると、全てが本であるわけではなくて、薄い冊子も確認できた。あれが先輩の言う会誌なのだろう。


「部員は先輩の他にもいるんですか。」

 

 部屋の中には、他にもパイプ椅子があったので、彼女の他にも部員がいるのではないかと思った。しかし彼女は予想に反して首を横に振り、

「いいえ、私一人。」

と彼女は答える。

 

 ここで僕は一つの疑問を抱いた。先日の入学式で確か校長先生は「部活動設立に必要な人数は最低限五人、部活動継続に必要な人数は最低二人」という趣旨の発言をしていたはずだ。そのことが正しいのだとすると、この部活は活動の継続条件を満たしていないことになる。

 

 そんな僕の疑問を感じ取ったのだろうか彼女は、


「去年までは、先輩がもう二人ほどいたの。でも卒業してしまったから。」


「ということは、今年新入生が一人でも入らないとこの部活は廃部になってしまうんですか。」

 

 彼女は少し悩むような表情になるが、すぐに

「多分、それは大丈夫だと思う。」

と彼女は答える。


「どうしてですか。」


「この学校はかなり校風が自由だから。多少、校則を破るくらいは大丈夫。指摘を受けることはあっても、廃部になることはまずない。事実、去年は部員が一人の部活もあったわ。と言っても、もうその人も卒業してしまったから、部員が一人の部活は今はここしかないのだけれど。」


 確かに、ここの高校はかなり自由度が高い。夏服と冬服も季節に関わらず自由に着ていいし、アルバイトも特に制限はない。目立って厳しい事といえば、部活動の強制参加ぐらいだろうか。僕はこの学校に入学して数週間しか経ってないが、普段の生活や、先生の雰囲気から特に厳しい印象は受けない。

 

 それにしても、この先輩見た目の割にかなり大胆なこと言うなあ……。



どんな些細なことでも構いません。ご指摘お願いします。

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