第4話
山瀬ハルです。お立ち寄りいただきありがとうございます。
戦闘シーンは書くのが難しいですね、もっと精進します!
嘘だろ、何人いるんだ。
メインホールの中には、数百人もの人が武器を振り回していた。必死に抵抗している人が泣きながら助けを呼んでいる。
メインホールまでの通路にも何人か血を流しながら倒れている人がいたが、ここはもうまさに地獄絵図だった。血があちこちに飛び散り、死体なんかもゴロゴロと転がっている。舞台上では笑いながら「もっと殺せ!もっとだ!」と叫んでいる男がいた。
「うっ」
ミアも気分が悪そうだ。そりゃそうだ。訓練兵時代にこんなことを経験させてもらえるわけじゃない。初めての状況に頭が追いつかない上、体もうまく動かなかった。
「これ、どういう状況なんですか。」
ニコラスは落ち着いているように見えたが、声は震えていた。一方副教官は、厳しい表情をしているが凄く落ち着いていた。慣れているんだ、これが一人前の兵士か。
「演奏会中に何者かが襲って来て、観客なんかを惨殺してるってところか。それにしても数が多いな。」
初めての任務にしてはハードルが高すぎる気がする。先程までの自信は、とっくに消え去っていた。
「お前ら、あの人数でびびってるんだろうが、奴らは能力を使えないみたいだぞ。」
「え、そんなこと…」
急いで舞台の方に目をやると、舞台前に群がっている集団は、鉄パイプやナイフ、金属バットなんかを持ってただ振り回しているように見えた。体術も全く身についていないような動きだ。
「これ、どういうことですか、俺たち今から能力を使えない市民と戦うんですか。」
そんなの、俺が想像していた任務じゃない。
副教官はあっさりと頷いた。
「まあ、そういうことだな。けど、恐らくあいつは能力持ちだ。」
そういって舞台上の笑っている男を指差す。
「あいつを潰せば大丈夫なはずだ。能力がない奴らは雇われてたり、指示されて動いているだけだろうから。」
ただなぁ、と副教官は苦笑した。
「あいつ、強いんだよな。俺と同等、もしくはそれ以上。参ったな。」
俺は副教官が何を言っているのか意味がわからなかった。能力はやり合ってみないとわからない。ましてや相手のレベルなんて、何を基準に判断しているんだ。
「何言ってるんだって顔だな、アンドレア。俺はこれでも、目が利くんでね。奴の能力も当ててやろうか。あいつは具現、しかもかなり洗練されてる。」
デタラメを言っている表情ではなかった。じゃあ、俺行くわとだけ言い残し、副教官は舞台の方に駆け出した。
「ちょ、副教官!俺たちはどうすりゃいいんですか!」
ニコラスが必死に叫ぶ。副教官は走りながら振り返った。
「舞台下の人たちの相手しながら、俺の戦い方みて勉強しといて!」
あの人むちゃくちゃだ、とニコラスが呟いた。
「とりあえず、あの人たちの相手をするんだよな。」
俺の質問にミアが答えた。
「でも、あの人たち、能力が使えないんだよね。じゃあ私たちも能力使えないよ。」
その通りだ。能力なしで、一体あの人数をどうすりゃいいんだ。
「行くか。」
ニコラスが覚悟を決めたような顔でそう言った。
「でも、3人に対して何百人だぞ!?」
「俺たちは訓練で能力の使い方しか教わらなかったか?体術は嫌という程やったはずだぞ。能力が使えなくても、体術も身体能力も俺たちの方が格上だ。やるしかない。」
確かに、その通りだ。
舞台の上では、もうすでに副教官が戦っていた。やるしかない。俺は腹を括った。
能力なしの一般人と戦うことは、案外容易いことだった。というのも、彼らに戦闘願望はないようで、怖気付いて近寄ってこない人たちも多くいたからだ。襲ってくる者に関しては俺とニコラスでほとんど片をつけた。ミアは後ろから援護をしている。最初は、能力なしの人間に対して俺たちが酷いことをしているようで躊躇っていたものの、段々と加減を覚え始めた。この程度でやれば重症にはならない、というのがわかってきたところで、俺は舞台上の副教官に意識を向けていた。
互角、いや、若干副教官が押されているように見えた。それにしても、速い。攻撃から防御、そしてまた攻撃。流れるように行われているが、一つ一つの動きが繊細だ。強い。相手の男もだが、副教官が想像以上に強い。
副教官の言った通り、相手は具現の能力のようだ。攻撃には具現で出したと思われる、大きなノコギリのようなものを使っていた。一方副教官は、能力を使用しているようには見えない。素手で戦っている。本気じゃないのか、それとも能力を使う隙さえ与えてくれない相手なのか、俺にはわからなかった。
「上手く間合い詰めれないなあ、なかなかやりますねぇ」
副教官は楽しそうに言った。それでも少し疲れているようだ。
「そろそろしんどいし、無理にでも詰めるか。」
副教官から攻撃を仕掛けに行った。相手が構える間も無く、副教官の強烈な回し蹴りが顔面に入った。決まった!そう思った瞬間
グサッ
副教官の足から大きな棘のようなものが、3本出てきた。何が起こった!?
ニコラスが叫んだ。
「ミア!お前は副教官の足を治しに行け!」
「わかった!」
ミアは戸惑う様子を一瞬見せたが、すぐに副教官の方へと走り出した。
「そうか、そういう使い方があったんだ。」
ニコラスは副教官の心配よりも、相手の攻撃に感心していた。
「何が起こったんだ!副教官は大丈夫なのかよ!」
焦る様子もないニコラスに俺は苛立ち叫んだ。
「今、副教官は確かに蹴りを入れた。けどその瞬間に、相手は蹴られた部分から棘を出してカウンターを仕掛けたんだよ。」
なるほど、先ほどのニコラスの発言は、あのカウンターをいずれは真似しようってことか。それにしても、副教官の状態がまずいな。右足から大量の血が出ている。治癒でも時間がかかるだろうし、俺があいつの相手をしに行くか?副教官の足が治るまでの間でいい。1分から2分、長くても5分程度だ。俺じゃ勝てない、時間稼ぎだけでいい。
膝が震えていた。俺が行かなきゃ、誰が行くんだ。必死に自分に言い聞かせても、舞台の方に向くことすらできない。くそっと拳を強く握った。自分の頰を殴ってやろうとしたその時、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「少し遅かったみたいだな。」
「教官!!」
読んでいただきありがとうございました!
教官登場で、次回から反撃です。




