第3話
お立ち寄りいただきありがとうございます!山瀬ハルと申します。
今回から初のお仕事です。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう。」
今日から俺たちは、一人前の兵士だ。
しかし見慣れたメンツだ。ニコラスにミア、教官、副教官、そして俺の5人。まさか、この5人でリズ班だとか言わないでくれよ。副教官も同じ班なのか?
「しかし、見慣れたメンツだな。」
俺と同じことを思っている人がいた。副教官だ。
「今日からこの5人で任務に当たるのか。新人3人は、いくら実技が得意な奴だとしても不安なもんだがな。」
「副教官、まさかこの5人でひとつの班ですか。」
俺の嫌な勘が当たりそうだ。
「ああ、大概の班は5人で結成されてるからな。なんだ、不安か?」
「あ、いえ、」
「大丈夫だ、教官は軍で一番強いからな。心配するな。」
何が大丈夫だ。そういうことじゃない。
教官が、引き締まった声で話し始めた。
「お前たちには経験がない分、とにかく場数を踏んでもらう。
実戦の前に軽く復習だ。まず、能力を使えない者に対して能力を使うことは禁止だ。戦闘時以外にも能力使用は禁止。特に具現や治癒は一般社会の商売なんかに影響を及ぼすことになるから忘れるな。次に、身体自在は具現とは相性が悪い。具現の能力の者と接触した際には、具現の者が対応するように。治癒は常に視野を広く、しかし自分の身に細心の注意を払え。」
「はい!」
メンツには全然ワクワクしないのに、一人前の兵士として働くことになんだかワクワクしてきた。
「教官、我々はいつ出動するんですか?それから、戦闘時以外は基本的に何をすればいいんですか?」
ニコラスの質問に教官は良い質問だと頷いた。
「一般市民からの通報があった時、北政府の侵入なんかの情報が入った時だ。1日中出動がない時だってある。出動しない時は、基本的に事務作業やトレーニング、実戦練習だ。」
「事務作業、というのは?」
「簡単なもので、資料の入力がほとんどだ。軍は基本的に戦うことが目的であるから、事務作業自体は難しいものはないと思っていい。それから、私はもう教官ではないと言ったはずだ。班長と呼べ。」
「す、すみません!」
午前中は出動する機会も特になく、事務作業の流れを説明してもらった。それほど難しいものではない。これなら俺にでもできそうだ。
昼休憩に入るとすぐに、軍のトップの組織である人に教官は呼び出されていた。教官ほど腕の立つ人になると、軍のトップからも直接声がかかるんだなと感心すると同時に、早く教官の本気で戦う姿を見たいと思った。
教官が部屋を出て行くと同時に、ニコラスが小声で副教官を呼んだ。
「副教官、教官はなんで班長呼びにこだわるんですか。」
俺も気になっていたことだ。ニコラスは特に、昨日から2回も注意を受けているから気になっていたのだろう。
副教官はニヤリと笑った。
「教官は、お前たちと距離を縮めたいんだよ。
訓練兵に対して甘やかし過ぎるとだらけてしまうから、あんな風に厳しく接してたんだ。教官としてじゃなく、先輩として接して欲しいんだと思うぞ。昨日も言ったけど、教官は優しい人だよ。」
俺たちは、予想外の返答にポカンとしていた。あの教官が俺たちと距離を縮めたいだって?訓練兵時代に、教官に何度怒鳴られたことか。ニコラスがマジ?という顔をしている。ミアの方を見ると、同じような顔をしていて笑いがこみ上げてきた。
「さあ、食堂に飯食いに行こうぜ。今日が初めてだし、奢ってやるよ。」
副教官が立ち上がる。ラッキーと思い、俺も立ち上がろうとした瞬間警報が部屋中に鳴り響いた。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
な、なんだ、火事か!?と思うと同時に副教官が叫んだ。
「出動だ!準備しろ!」
俺が想像していた出動ってのは、通報の電話がかかってきて行くもんだと思っていた。毎回あの警報が鳴るのか、寿命が縮みそうだ。副教官が運転する横で、窓の外を見ながらそんなことを考えていると、副教官に呼ばれた。
「アンドレア、教官に電話してくれ。」
「俺ですか?」
「お前が助手席に座ってるからな、早くしてくれ。」
「えぇ…」
「わかった、スピーカーにしてくれ、俺が喋るから。」
副教官が呆れた顔をしていることは横からでもわかった。はい、と返事をして教官に電話をかける。全く、いつまで怖じけてるんだ、早く慣れてもらわないと仕事に影響が出る、なんて副教官はブツブツ言っている。
そういえば、副教官は教官と仲が良いんだろうか。昨日も一緒に施設に来ていたし、どういう関係なんだろう。
なんだ、という教官の声が電話口から聞こえてハッとした。副教官が話し出す。
「リズさん、今、出動してます。リズさんが呼び出されてから出動要請がありました。場所は俺のGPS確認してください、早く来てくれないと困りますよ。お荷物が3人もいるんだから。」
最後の一言はどう考えたって余計だ。にしても、リズさん呼びなんて親しいんだな。
「わかった。3人には無理をさせるな。任せたぞ、パーカー。」
プツッと電話が切れる音が聞こえた。
「副教官、パーカーっていうんすか。」
「え、お前、2年間も副教官してたのに名前知らなかったわけ?」
副教官は、後ろの2人は知っていただろう?と声をかけたが2人とも黙ったままだ。俺が後ろを振り返ると、2人とも真面目そうな顔で窓の外を見ていた。俺が笑いを堪えていると、副教官に横目で睨まれた。もう少し緊張感を持て、と。
「着いたぞ」
「市民ホール…?」
外には人気はそれほどないが、やけに騒がしく感じた。建物内からの音か。
「別々に行動ってのができないから、今回は全員で動く。勝手な行動はするな。」
副教官の顔は初めて見る顔つきだった。俺は強いんだから1人でも行ける、と言いかけた言葉を飲み込む。この時の俺はまだ何一つわかっていなかった。訓練兵内1位でも実戦では何も役に立たないということ、そして新人3人という状況で教官がいないということがどれほど大変なことかを。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
次回からいよいよ能力を使う時が来そうです。まだまだ至らない点ばかりですがこの先もどうかよろしくお願いします。




