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サラブレ  作者: 山瀬ハル
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第2話

山瀬ハルです。お立ち寄りいただきありがとうございます。

今日から一人前の兵士として働く、、というつもりでしたが今日はお休みです。

アンドレアのお世話になった施設にきております。


「おばさん、ただいま。」

「あら、アンドレア!おかえり、大きくなったわね!」

帰ってくる場所がある、ということは本当に幸せなことだ。



 今日は丸一日休みだ。昨日卒業式を終え、明日からは実際に働くことになる。

 しかし、卒業式後に急に休みだと聞かされたもので、何をすれば良いのかわからず、俺はお世話になった施設に顔を出すことにした。

 施設は訓練場から電車で一時間ほどのところにある。山に囲まれた、田舎だ。


 6年前、両親が殺害されてから、施設に入った。俺を助けてくれたお姉さんが紹介してくれた施設だ。15歳までは面倒を見てくれるようだが、俺は入団するために13歳でこの施設を出た。約2年ぶりに顔を出す。なんだか照れくさかった。



「卒業したんだね、おめでとう!すごいじゃないの!」

久しぶりに会ったおばさんは、本当に嬉しそうにニコニコしている。

訓練兵は毎年200人くらいが入団するが、2年で卒業できるのはそのうち150人くらいだ。俺がバカだから、おばさんは2年で卒業できると思っていなかったらしい。みくびりすぎだと苦笑した。


「あら、そちらの子は?」

「ああ、俺の同期のニコラス。首席で卒業したやつだよ。」

そう、何故かニコラスがついてきている。



 朝、今日は何をしようかと、寮のベッドに寝転がりながら天井を見つめていると、ニコラスが部屋に入ってきた。

「お前、今日何すんの?」

「部屋に入るときはノックくらいしろよ。何もすることがないから施設に顔出そうと思ってる。」

「俺たちの仲にノックなんていらないだろ。それ、俺もついていく。」

「…は、なんで。」


そして本当についてきている。することがないとは言え、相当暇だったのだろう。それに大抵の奴は実家に帰るけど、こいつは帰るつもりはないだろうし。



「こんにちは。お世話になっております、ニコラス・テイラーと申します。」

「あら、丁寧な子ね。どうぞ上がってゆっくりしていきなさい。」

おばさんは、猫を被ったニコラスにまんまと騙されて、早速気に入ったようだ。

言われた通りに施設の中へと足を進める。



 懐かしみながらキョロキョロして歩いていると、前を歩いていたニコラスの足が急に止まった。

「どうしたんだ、ニコラス。」

「きょ、教官、」

「へ?」

ニコラスの視線先を見ると、テーブルで紅茶を飲む教官の姿があった。心臓の脈を打つスピードが一気に上がるのがわかった。

「教官、だ。なんで!?」


教官がこちらを向いた。

「第一声は挨拶だろう。」

そういったのは教官ではなく、その隣に座っていた副教官だった。


「お、お疲れ様です!教官、副教官!」

俺たちの焦る態度に副教官はハハッと笑って、少し心配そうに言った。

「お前たち、そんなので明日から大丈夫なのか?」

大丈夫じゃ、ない。明日から不安で仕方なかったのに、なんで今日も会うんだよ!と心の中で叫ぶ。変な汗が出てきた。


「まあ、教官は本当は優しい人だよ。お前たちもいずれわかるさ。」

「いらんことを言うな。」

教官が初めて口を開いた。紅茶を一口すすってから、もう一度こちらを見る。

「私はもうお前たちの教官ではない。教官呼びはやめろ。」

教官はゆっくりと立ち上がった。帰るぞ、と副教官に声をかける。


帰るのか、とホッとした。


副教官がじゃあなと手を振った。急いで頭を下げる。

「失礼します!」

顔を上げると教官と副教官の姿はなかった。



「あれ、リズちゃんたち帰っちゃったの?」

後ろから声をかけられて跳び上がった。おばさんがお茶を持ってきてくれたようだ。

「お、おばさん。リズちゃんってまさか教官のこと?」

「えぇ、リズちゃんがアンドレアたちの教官だったの?すごい縁じゃない。」

「教官は、おばさんとどういう関係?」


おばさんは不思議そうな顔をした。

「どうって、ここで育ったのよ、あの子は。」

「へ?」

俺の腑抜けた声がシンとした部屋に響いた。




「まさか、お前を救ってくれたお姉さんってのは、教官のことじゃないだろうな?」

 帰りの電車に乗った途端に、ここぞとばかりにニコラスが質問を投げつけてきた。


 俺も、なんだかそんな気がしてきたから、おばさんとの会話では教官の話は避けたっていうのに。

 まさかな、あの綺麗なお姉さんが教官だと?お姉さんも施設で育った人だとは聞いていたし、年齢的にもあり得なくはないが、とにかく信じられない。だってあんなに鬼の形相じゃなかったし、にこやかで優しい人だった。教官は綺麗な人だと思う。ショートカットで気が強そうな顔だし、入団当時は男の人だと勘違いをしていたくらいだったが、美人の部類に入ると思う。だけど、もしそうだとしても面影がなさすぎる。


「そもそもお前、そのお姉さんに5年くらい会ってないんだろ?」

「うん、軍の仕事が忙しくなったみたいで、施設に全然顔出さなくなったから。」

「5年も経ってりゃ顔なんて薄っすらとしか覚えないんじゃねえの。」

「当時の顔は覚えてる!ただ、髪型とかが全く変わってたらわからないもんなのかも。」

そりゃ見つけられないわ、とニコラスは首を振った。俺だってそんなことわかってる。


 命の恩人と言っても、そもそも本名も知らない、会ったのも5回くらいだ。向こうはとにかく忙しかったようで、俺に構う時間なんてなかったんだと思う。それでも、俺はあの人を忘れることができない。あの人がいなけりゃ、今の俺はないんだから。頭を撫でてくれる感触も、あの人が俺の名前を呼ぶ声も覚えてる。

 あの鬼教官が、お姉さんなんて信じられない。電車の窓に映る自分の顔が、なんとも言えない顔をしていた。俺はまた、ため息をついた。


お読みいただきありがとうございます!

皆さんに楽しんでいただけるような作品していきたいと思います。

次回からは兵士として働き始めます!

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