アキトと再会
勇者キムラが命綱を巻いて降りてきた。
「片足クン! 生きているか!?」
急いで手袋を装着する!
「大丈夫です」
「よかった。本当に良かった。君はラッキーだな!」
元の場所に戻ると、やばい状況だった。二百人の勇者が倒れた列が長く続いている。弱者だけを気絶させたが、申し訳ない気分だ。
「何が起きたのですか?」
――嘘です。ごめんなさい。俺です! 俺がやりました!!
このままダンジョンに行って戦えるのは十人。それとキムラ、ゼスト、アルマ。この三人は無関係であり味方だから悪いようにはしなかった。十人の中の一人は知りあいで、性格も知り尽くしている。
史上最強の勇者と名高い英雄アキトだ。彼は団長として迷いなく、堂々と俺の正面に立った。
行く手を塞がれたし、ポーターの仕事もあるから、さすがに逃げられない。
――やっぱり怒ってるよな。騎士団ほぼ全滅させちゃったもんな~
アキトの甲冑の大きい手が伸びてくる。
殴られる? それ鉄甲だから痛いぞ、それは!
自然に体が硬くなる。すると大きな両手が、俺の前髪を全部グイッと奥に。
「!?」
「オールバック、やめたんだな」
「そっち?」
久しぶりに会った挨拶よりも髪型?
「髪型はガキっぽいが、男の顔になったようだ」
もしかして、これは褒められているということだよな? 怒ってないってことで軍勢気絶させてもチャラだよな! いや、もしかして俺がやったこと、バレてないかも?
「しかし相変わらず敵も味方も関係ないバーサクぶり。だからいつまでも君は見習いなのだよ。そんなことでは勇者になれんぞ」
――やっぱり分かっているじゃん。ならば説教の前に、気をつかってくれ。人が見ているじゃないか。そういう話は誰もいないところでやって!!
「俺は宿屋のヴァンハルトです。誰かと人違いしているようですね」
見逃してくれ!
見逃してくれ!!
ほら顔に書いてあるだろ、見逃してくれよ!
「間違えるはずないだろう。義足の調子はどうだ? 手紙くれたよな?」
最悪! だから勇者はダメなんだ。どうして全員デリカシーが無いかな! 自分のやっていることがいつでも正しいと思うポジティブシンキング!
もう……これ以上……
深呼吸。すう。拳をギュッと。
そして息を吐くと同時に~
ドガッ!
渾身のボディブロー。
「喋るな」
沈んだアキトだが、笑いながらのアッパーカット。ギリギリ避けたが風圧で前髪が揺れる。
「あっぶねぇ――な!」
膝裏を蹴って、ガクリと来たら顔が近くなる。そこでストレートパンチを狙う。
これで決まり!
死角からアキトの左手が伸び、一気に引き倒されて剣を突き付けられる。
――あれれ? 背中に土がついちゃったよ。
「現役を舐めなるな」
熊のように大きいアキト。こうなると負けを認めざるを得ない。
「……ごめんなさい」
キムラはアキトに平伏して、頭を下げる。
「申し訳ございません! 団長さまにとんでもない無礼を!――というか、こんなこと、想定外で!! とにかくうちのポーターがとんでもないことをしでかしたようで!! いや私も信じられないですけど!! すいません! すいません! すいません!」
アキトは笑った。
「いいよ。ダンジョンに行っていたら、みんな死んでしまう。彼らは感謝すべきだ。強行軍で成功確率が少ない作戦だった。今いるメンバーで行ったほうが行動しやすい。バーサクが邪魔してくれたおかげで、皆が生き延びられる」
勇者キムラはカールを上から下まで、じっと見ている。
「バーサク? 片足クン……片足バーサクのハルト!?」
カールはキムラの口を慌てて抑える。
「人違いでしょ! 俺はカールです! そうそう、宿屋なのでここはひとつ協力しましょう。La Rochelle Noirへようこそ。一晩5GILですが、ご優待させていただきます。全員お泊りでよろしいですね!!」
イエスもノーもない。テイマーならではの絶対指示だ。
また宿帳にページが増えていく。
(御芳名)代表 勇者アキト 様 (年齢)31歳
(御住所) 王都エルダール フォレストパレス
(ご利用) 一泊 5GIL (ご優待)
(備 考) 王宮騎士団200名さま 団体ご利用 回復付き
白紙の文字が浮かび上がった。
(お一人様0GILです。ご利用されます)
思わず大興奮した。
「あ、レベルが上がりました! レベルが上がった!!……とはいえ、次回ご利用からです。ごめんなさい、浮かれました」
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職 業 :宿屋 LV:1 (野外)
獲得スキル:キャンプLV:2 :素泊り
野宿 LV:MAX:素泊り
兼業スキル 虫よけ: 95
栽 培: 55 収 穫: 75
特殊スキル:豪商(LV:MAX)
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キャンプレベルが2つも上がった。これでグランピングもできる。
「ベッド!!」
これが一番うれしい。備品も充実している。テント・寝袋・ベッド・イステーブル・ランタン・BBQセット。ダッチオーブン・イス・テーブル・ランタンと豪華だ。
浮かれていると、アキトが肩を組んでくる。
「今夜はゆっくり話し合おう、な?」
「ええ?」




