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チョイス〜選択スキルを得て今度こそ〜

作者: 田村 龍成

とりあえず短編第一弾です。

これからいくつか短編を投稿さていただいた後、良さそうなものを連載していこうと言う魂胆です。


感想や意見などございましたら、お気軽にいただければと思います。

 今日は雪が綺麗に降り積もる聖なる夜。


 僕の名前は栗栖聖夜。高校生最後のクリスマスをぼっちで過ごす童貞です。


 本当は今日、僕が10年以上絶賛片思いの幼なじみを誘って街に繰り出す予定だった。


 だけど一週間も前からスマホで彼女のLINE画面と火花を散らすほどの睨み合いを続けて結局誘えず。

 今日も彼女の家の近くでインターホンを押そうと朝から軽く8時間程うろついてやっぱり誘えず。

 このまま家に帰るのもなんか違う気がしてイルミネーションの輝く街を一人歩いている。


 昔からそうだ。

 僕は優柔不断で何をするにもなかなか決められず、失敗を繰り返しては一人後悔し続けている。


 18年間ずっとこんな感じ。


 当てもなく一人、カップルや家族連れが行き交う街中を歩いていると、鬱が加速しそうになるから僕は薄暗い路地裏に入った。


「誰か、助けて」


 すると聞き逃せない声が聞こえてきた。

 ほんの好奇心というかなんというか、声のする路地裏の角を曲がり、こっそり見てみた。


「えっ?!」


 するとなんの因果か、僕の片思いしているその彼女が3人の不良に絡まれている!


 助けなきゃ!

 で、でも。

 こんな時なのに、僕はまたどうしたらいいか分からない。


 助けた方がいいのは分かってる。

 だけど助けに行って二人とも不幸な事になってしまったら?

 彼女もそんなこと望んでなかったとしたら?


 でも助けずに彼女が大変な事になってしまったら僕はまた後悔する。


 どうしたら。どうすれば。決められない。動けない。


「おいテメェ何見てんだこの野郎」


 うわ!バレた!

 不良の一人が僕の方へズンズン歩いてくる!


「うわっ!」


 胸ぐらを掴まれて引きずられ、そのまま彼女の前に放り出された。


「聖夜、君……」


 彼女も僕に気付いて声をかけてくるけど、そんなのに対応できる余裕なんか僕にはない。目の前には僕が何よりも苦手とする人種達がいるんだから。


「何お前ら知り合いなの?て事はお前助けようとしてたって事?」

「うわぁ〜、さっぶ。ピンチの姫を助ける王子様にでもなれると思っちゃった?」

「クソオタクが!身の程を知れっ!」

「ぐっ、」


 痛いっ。

 そう言って不良の一人が僕のお腹を蹴った。


 ずっとこういうイベントから逃げ続けてきたのになぁ。ツイてないなぁ。

 この隙に彼女だけでも逃げてくれたら格好つくんだけど、ガンガンに後ろから気配を感じるもんなぁ。

 彼女いい子だし、『今のうちに逃げちゃえ』とはならないかぁ。


「俺たちはこんなクリスマスに女の一人もいなくて寂しかっただけなんだわ。今お前が何もせずに、ここから消えるなら今日は見なかった事にしてやっからさっさと消えろ。だが、まだなんか俺たちに用があんなら、とことん付き合ってやるよ」


 いやいやいやいやいやいや!

 そんな選択肢厳しすぎるでしょ。どう転んでもバッドエンドなんですけどっ!?


 え、何。僕が彼女を見捨てたら彼女はどうにかなって、僕がそれを止めようとしたらボコボコに殴られるの?

 そんな理不尽な二択ないでしょう。


「おい!早く消えろよ!マジで死にてぇのかテメェ!?」


 不良の一人がナイフを僕の目の前に突き出して脅してくる。


 いや、怖いから。怖くて声も出ないし体も動かないから。どうしてくれんのよ。


「おい!ナイフはやめとけって!あ」


 え


「おっ、あ、…………」

「…………おい、お前コレ、」


 胸が熱いです。

 物理的にとても熱いです。

 と、思ったら胸から下がビショビショに濡れて寒いです。でも、まだ動けません。


「ぇ、刺さって」


 あ、ナイフ刺さってました。もう一人の不良が止めようとした時にナイフ持ってる不良を押してしまって僕の胸に見事刺さったと。


「きゃーーーーー!!!」

「お、おい!逃げろ!」

「し、俺は、知らねぇからな」

「いいから逃げるんだよ!」


 不良達が逃げていったのを見て安心したのか、僕は膝から崩れ落ちた。

 なんでだろう。不思議と痛みはない。


 仰向けに倒れると灰色の空からは雪が降ってきていた。

 そんな事を思った矢先に彼女が顔をグシャグシャにして僕に何かを言っている。


 何言ってんだろ?

 あぁ、クソ。彼女と久々に会話出来るチャンスなのに耳が聞こえないや。


 あれ、目が霞んできた。

 そういえばもう寒くもないな。


 あ、僕、死ぬのか。


 なんだよ。こんな死に方なのかよ。

 だったらあの時、不良達に飛びかかっておけばよかった。そうしたら彼女も少しは僕の事を良い状態で覚えておいてくれただろうから。そもそも、彼女が絡まれたのを見つけた時点で誰かを呼べばよかったんだ。


 いや、そもそものそもそも、彼女を今日僕が誘っておけばこんな事にはならなかったんじゃないか。


 あぁ。なんで僕はこんなにも優柔不断なんだろ。こんな性格じゃなかったらもっと幸せになれたのかな。


 〝そうかもねぇ。じゃあ次はちゃんと“選択”をして幸せになってみるといいよ〟


 え?目は見えないし耳も聞こえないはずなのになんか聞こえた。


 〝あ、耳聞こえないのは関係ないよ。もう君死んでるから〟


 え、?


 〝ふふっ。君があっちでどんな選択をするのか楽しみにしているよ〟


 え?


 《アクティブスキル【チョイス】を取得しました》


 …………え?



 ◆◇◆◇◆◇



 目が覚めると晴れ渡る青い空の下、僕は草むらに寝そべっていた。


「あれ?ここ、は」


 ん?僕確か不良に刺されて、死んだっぽかったよね。っていうか誰かに死んだって言われた気がする。

 で、ここどこだ?

 一面緑だ。草原、木々が生えてるだけで建物が一つもないや。すごいな。綺麗だ。


「あ、夢か!なんだ!なるほどね!」


 死んだっぽかったけど死んでないんだ!多分病院で手術とかされて寝てるんだ。


 うん。オーケーオーケー。


 じゃあコレどんな夢なんだ?

 なんもないけど。


「ん?」


 なんか草むらが揺れてる。

 なんだろ。あ、出てきた。


「……え!なにこれ!気持ち悪っ!これって…………スライム?!」


 バスケットボールサイズくらいの青いプヨプヨ。


 ……どう見てもコレすらいむジャン。


 そんなのが三匹?出てきた。

 これなんて夢?ドラ◯エ?


 てゆうかこれ戦うのかな?

 そういう流れだよね。


 いやいやシンプルに怖いから!

 え、え?え!?

 うわこれどうすんの?!

 冷静に怖くなってきた!夢だよね?そろそろ醒めないの!?


 …………どうしよう!醒めそうもない!


 逃げる?でも、弱そうかも。そこに落ちてる木の棒で追い払えないかな?

 いやいや。でも毒とかあるかもしんないし。見た事もないモンスターだぞ?てかモンスターがいるってなに?この世界どうなってんの?


 いや夢だろ?!


 落ち着け聖夜。

 先ずはスライムのことだ。

 変な魔法とか使うかも。だったらどうすんの?逃げんの?え、ってか逃げられんの?


 と、半ば錯乱していた頭の中に凛とした聞き覚えのない無機質な声が響いた。


 〝トリガーを確認、アクティブスキル【チョイス】を発動します〟


「え?」


 すると視界の中に


【選択肢】制限時間30秒

 ・戦う 成功率60% 対象被害45% 自分生存率30%

 ・身を守る 成功率100% 自分生存率0%

 ・逃げる 成功率85%


 が浮かぶ。


「…………いやいやいやいや!」


 なんだよっ!これ!?何が起きてんの!選択肢って何よ!

 シミュレーションゲーム?!

 てか生存率低すぎだろ!身を守るで0%とか何を守ってんの?!


 その間にもスライム達がよって来る。そのうちの一体が身体を弛ませて今にも飛び跳ねてきそうになってる!


 〝制限時間残り5秒です〟


 頭の中に警告音と共に先程の声が聞こえる。


「5び、いや!に、逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる!!!」


 〝戦闘エリア外に逃走します〟


 と、聞こえ自分の意思とは別に体が勝手に動きだしスライムに背を向け走り出す。


「イヤぁぁぁぁァァァーーーーーー!!!」


 いやいや!ちょっと!待ってっ!体が勝手に動くとか!怖いッ!怖すぎるから!!!


 あっ、悲鳴をあげれた。口だけは僕の主導権が残ってたみたい。


 何故かそれで安心したのか冷静になれた。

 でも身体の自由はきかず勝手に、懸命に、全力で自分の身体は一心不乱に走り続けた。


 スライムが見えなくなると、急停止して体の主導権が戻ってくるが、反動でそのままこけてしまう。


「痛ててて。てかどうなってんの?」


 先程の目の前に現れたスライムといい、選択肢といい、勝手に動いた事といい、本当に謎だらけだ。

 体を起こし付いた土を払う。

 すると、この場所が高台になっているのか、遠い前方に街らしいものが見える。


 とりあえず街に行ってみようかな。

 ここにいてもまた変なのが出るかもしれないし。あそこには人がいるだろうからね。




 てかこれ夢じゃない、かも。


 ◆◇◆◇◆◇


 歩いた。


 あのあとすぐに街に繋がっているであろう街道を見つけ、そこを歩いた。


 ただただ歩いて、ひたすら歩いて、そして、歩いた。

 人生で1日に歩く過去最大歩いたと思う。


 疲れた。


 すると


「きゃ!!!」


 うわー。今度はヒロインイベントだ。


 街道を歩き続けていると、街の手前に木々が生茂る林があった。

 なんとなしに林に目を向けると人影が見えたから、近づいていったらコレだ。


 ただ、この人、なんかとってもアレだな。

 桃色の長い髪はキラキラと光り、鉄の胸当てを破壊せんとばかりに主張する双丘。思わず触れたくなるような白磁の肌。ショートパンツからロングブーツまでの絶対領域。


 顔は、え、これやばそう?!

 そんなエッチなこと考えてる場合じゃない!

 あの子ピンチじゃないか!


 でも、敵はゴブリンみたいなのが一体だけ。

 うわぁ、ゴブリンて実際見るとすごい気持ち悪い。それに、心なしかすごいエッチな目であの子を見てる気がする。


 いやいや!そんなエッチ事はどうでもいい!

 どうしよう。

 助けてあげたいけど、どうやって。

 石でも投げてみるか?

 いや、当たらなそう。

 じゃあ普通に登場して、普通にやっつける?

 いやいや!それこそ出来るわけがない!


 頭の中でそんなことを考えていると、また無機質な声が聞こえて視界に活字が現れた。


【選択肢】制限時間20秒

 ・ゴブリンに石を投げる 命中20%

 ・ゴブリンを殴る 命中80%

 ・ゴブリンを蹴る 命中100%


 あ、逃げる選択肢はないのね。僕もそのつもりはなかったけど、これじゃ倒せるか分からないじゃん。


 全部命中率しか書いてない。

 命中率だけを見るなら”蹴り”一択だけど、普通に怖いからね。少し小さい緑鬼の化け物だよ?あの時のDQNの百倍怖いじゃんか。怖さの意味が変わってくるけど。


 〝制限時間を超えた為ペナルティを実行します〟


「……ぺなるてぃ、ぃいぎゃぁァァア!!!」


 また体が勝手に!


「えっ!?」

「ギギッ!」


 僕の情けない悲鳴で女の子とゴブリンが僕に同時に気付いた。


 あ、やっぱ可愛い。


 て、それどころじゃない!!!

 いつの間にか握っていた石をゴブリンに向けて投げる。

 当たった、かどうかも確認できないうちに飛び上がり…………って、高っけー!!!コレ3メートル位跳んでるんじゃないか!?


「ちょっと、どいてぇぇえ!!」

「あ、はいっ!」


 無様な声を上げながらも、体は淀みなく綺麗に動く。ゴブリンは標的が自分だとすぐに認識したらしく空中にいる僕に棍を振るってきた。

 だが、振るわれる棍に掌を滑らせて受け流し、大きく空振りをしたゴブリンの後頭部に軽く掌底を入れた。

 すると、つんのめるようにゴブリンが体勢を崩した。そこへ


「ふんばっ、」


 着地と同時に飛び上がり、後ろ回し蹴りをゴブリンの後頭部に振り抜いた。踵に嫌な感触を味わいながらまた着地すると、身体の自由が戻ってきた。


 っていうかやっぱ怖すぎる!

 急に思いもしない動きをするから変な声が出ちゃったじゃんか!


 〝レベルアップしました〟


 え?


 〝レベルアップしました〟

 〝レベルアップしました。アクティブスキル”ディクショナリー”を取得しました〟

 〝レベルアップしました〟


 なんかめっちゃレベル上がってる。スキル?


 〝レベルアップしました〟

 〝レベルアップしーー〟

「あの、ありがとうございました」

「えっ!?」


 脳内で流れるレベルアップコールを聞いていると、不意に助けた女の子から声をかけられた。

 っていうかまだレベルアップコールが流れてる。ゴブリン一匹倒しただけでこんなに上がるもんなのかな?


「あ、あのだから、危ない所を助けて頂いてありがとうございました」

「あっ、!う、うん!なんかかぶっちゃって」

「かぶる?」

「あ、いやいやいやいやなんでもない!」


 うわっ、めちゃくちゃ可愛い。

 すごいテンパってしまった。


 透き通る様な白い肌に優しそうな少し垂れた目。口元に少しアレなホクロもまたいい。


 それにしても、長い間女の子との接点をもてなかった僕。そんな僕にこんな可愛い女の子と会話をするなんて……無理ゲーすぎる。


「冒険者の方、ですよね?命を救っていただいたので、お礼をするのが筋だと思うのです。ですが、私も駆け出しなのでお金もあまりないのです。こういった場合どうしたらいいか……」


 うわうわうわたくさん喋ってくる!

 冒険者と勘違いされてる?誤解を解くべきか?

 てかお礼ってなに?

 うわーもう!こうなったら、出でよ選択肢!


【選択肢】制限時間5秒

 ・「気にしなくていいよ――」好感度MAX

 ・「実は困ったことが――」好感度MAX

 ・「僕は冒険者じゃない――」好感度MAX

 ペナルティ「なら、僕の女になる?」


 出た!

 えっ、と、どれ選んでも好感度MAX!どゆこと!?

 てかペナルティヤバすぎるでしょ!即ヤバイ人認定されるから!

 ん?てゆうかペナルティが表示されるようになってる。

 とりあえずどれも当たり障りない返事だし、とれでもいいから選ばないきゃ。ペナルティだけは避けないと……あっ


 〝制限時間を超えた為、ペナルティ実行します〟


 うわぁ……優柔不断、乙。てゆうか制限時間短すぎるよ。


 〝一時的に自動会話モードに移ります〟

「なら、僕の女になる?」

「えっ!?」


 オワッター


「アハハ、冗談だよ。いや、冗談でもないか。君みたいな可憐な人と一緒に居れたら良いなと少しでも思ったんだから。僕はセイヤ。君は?」

「え、あっ、ティナです!」


 何処のホストだよっ!!!サブいわ!

 自分の意思とは関係なく、すらすらキザな台詞を並べる口に対し、ツッコミをいれてしまう。

 でも、ティナは赤面して顔が綻んでいる?


「よろしく。それでさっきのお礼の話だけど、僕は冒険者じゃないから、気にしなくていいよ」

「いや、そういう訳にはいきません。私に出来る事なら何でもするので……」

「本当に何でも?」

「…………はい!」


 えーと、僕は何をお願いするつもりなのかな?てかティナさん、覚悟を決めました!みたいな顔やめてほしいんですが。


「なら、この辺りの情報が欲しい」

「……え?」

「困ったことになっててさ。実は記憶喪失みたいなんだ。さっき草原で目が覚めて、それ以前の記憶がないんだ。ハッキリと覚えていたことは自分の名前くらい。宛もなくさまよっていたら、偶然街を見つけて、向かっている所に君を見つけたんだ」


 我ながら嘘くせぇ!


「た、大変だったんですね……」


 信じたーー!?てか、涙ぐんでない?今の話で感動したの?チョロすぎでしょ!


「わかりました!私に任せてください」

「本当かい?ありがとう。恩に着るよ」

 〝自動会話モード終了します〟


 なんだかんだで綺麗に話はまとまったみたい。それと同時に例の声が聞こえて身体の主導権が戻ってきた。


「とりあえず、街に向かいましょう!後は私が……っ!」


 ティナが立ち上がろうとするが、怪我をしているみたいで立てないみたい。


 は!こ、これは、まさか!

 おんぶDEラッキーすけべTHEミッション?!


 いやいや、ダメだ!なんか他に方法があるはずだ!

 そんなエッチなこと僕には出来ない!

 なんか、方法が……


 〝トリガーを確認、アクティブスキル【チョイス】を発動します〟


【選択肢】制限時間5秒

 ・「仕方ないな。さぁ、おいで――」好感度MAX

 ・「はい、おんぶ――」好感度MAX

 ・”無言でお姫様抱っこ”好感度MAX

 ペナルティ”前から抱き合う形で抱っこ”


 馬鹿じゃないのか!?


「はい、おんぶ!!!」


 同じ轍を踏んでたまるか!


「で、でも……」

「こ、このまま動けないのは互いに困るからさ」

「……ありがとう、ございます」


 僕は背中に感じる温もりと煩悩をかき消しながら足早に街へと向かった。


 ……無理だ。

 鉄の胸当越しとはいえたわむ魅惑の二つ山は僕を誘惑してくる。

 おまけに耳元にあるティナの口元から発せられる女神の息吹が、アレな気持ちにさせる。

 更に僕の両手には神が定めた絶対領域の熱が直に感じられてしまう。


 こんな神がかってる美少女をおんぶだなんて童貞には無理だ。でもサイコーだ。


 だから別の事に熟考しよう。

 議題は僕のスキル”チョイス”だ。


 先ずは現状を整理してみよう。


 チョイスが発動するには今のところ二通りの方法がある事が分かった。


 一つは“トリガー”の確認。

 トリガーは僕が何かの事案で迷った時。

 そうすると自動的に機械的な声が脳内に響き、視界に選択肢が現れる。


 二つ目は僕の意思。

 選択肢が欲しい時に僕が出現を望むと、一つ目と同じように現れる。


 二つとも大差はないけど、考えようによってはどちらもメリットがある。


 一つ目は、完全に追い込まれた時に自動的に出現してくれる。つまり、咄嗟の失敗は限りなく低く出来るし、選んだ時のデメリットも覚悟が出来る。

 二つ目は、単純に選択肢が必要もない時でも僕がヒヨった時に出現させられる。これだけでもかなりデカい。元々優柔不断すぎる僕には”チョイス”が選択肢を必要ない、と判断した場面でも選択肢を出してくれるようになる。


 そこで生まれる可能性がある。


 スキルの“チョイス”自身に意思があるのかどうか。


 “チョイス”はトリガーを確認して、選択肢が出現する場面を勝手に判断して選択肢を出している。

 つまり、トリガーを確認すれば、僕の意思に関係なく発動する、ということ。

 そうなると“チョイス”自身に意思があるのか、もしくは他のなんらかの要因を持って選択肢を出しているのか。

 でも、これはしばらく付き合っていかないと分からないな。だからこの先要チェックや。


 そしてペナルティ。

 選択肢が出現すると、必ず制限時間が設けられている。時間の長さは事案によって違うみたいだけど、間に合わないとペナルティが発動する。


 一度目のペナルティはティナを助ける時。ティナは結果的に助かったし、僕にもなんらその後の問題はなかった。

 二度目のペナルティも同じ。ティナとの会話でモジモジしていた時も誰も損することなく、綺麗に話がまとまった。


 これがなんのペナルティになるのか?

 多分この答えは『僕が嫌な(絶対しない)事を実行する』だと思う。

 だから実際は罰ゲームに近い気がする。

 でも、だからといってペナルティになっていい事にはならない。

 こんな罰ゲームは受け続けたくないし、ひょっとしたらもっと過酷なペナルティがあるのかもしれない。

 例えば『対象が重症を受ける』もしくは『対象が死ぬ』とかね。

 僕にとって嫌な事だとするのであればありえない話ではない。

 これも、今後見ていかないと断定は出来ない。だからとにかくペナルティにならないようにする。これが今で考えうる最善。


 そしてレベルアップとスキル。

 ゴブリンを倒しただけで、結果Lv.18まで上がった。

 多分異常だと思う。


 レベルアップで手に入れたアクティブスキル”ディクショナリー”を試しにさっきティナに使ったら


 ・【ティナ・ローズクォーツ】16歳 女

 Lv.4

 力 D

 守 D

 知 C

 速 C

 運 E

 《アクティブスキル》

 剣術Lv.2、火魔法Lv.1、水魔法Lv.1、風魔法Lv.1

 《称号》

 ローズクォーツ家長女、E級冒険者、ウォーリア

 《状態》

 疲労困憊


 この様に出た。


 そして自分にもかけられた。


 ・【セイヤ】

 Lv.18

 力D

 守D

 知C

 速E

 運 表示させて頂くことができません


 《アクティブスキル》

 チョイス、ディクショナリー、ブレイブハート

 《オートスキル》

 幸運

 《称号》

 転生者、神に祝福された者


 …………ツッコミたいところだらけだよ。


 とにかく、比較しても一目瞭然。レベルに対してのステータスが低すぎる!


 だけど、このアクティブスキルってのが多分ラノベあるあるのチートだね。

 理解したよ。このステータスは見られる訳にはいかない。今はそれだけを分かっていればいいと思う。

 今後の対策はその都度”チョイス”さんにお願いしていこうと思う。


 そして最後に。


 この世界は現実だ。


 ラノベや漫画でよくある異世界転移ってやつだ。

 ハッキリ思い出した。僕はあの時死んだんだ。

 そして、誰かに言われた。『君は死んだ』と。

 そして『次はちゃんと“選択”をして幸せになってみるといいよ』って言われたんだ。


 僕の知識に当てはめると、この人は多分神様的な人だと思う。それが悪い奴なのかいい奴なのかは分からない。


 でもそんな事はいい。


 せっかくチャンスをもらったんだ。

 今度こそちゃんとした”選択”をして、この世界で立派に生きて行こう。


 もう”選択”出来ずに後悔なんてしない様に。


「セイヤさん。あそこが街の門です」

「は、はいィっ!」


 急に耳元で生暖かい女神の息吹と共に鈴の音の様な声で話しかけられたから、返事が裏返ってしまったじゃないかっ!


 エッチだ!

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