とうもろこしと王さま
王「空腹なのに食欲がないのー」
真夏の昼下がり、王さまは別荘の縁側から見える海を眺めながら、
深いため息をつきました。
SPは王さまの愛犬(元捨て犬の雑種♂)のラッシーと、
子ども用のビニールプールで水遊びをしながら、返事をします。
SP「王さま、明日は日本の総理大臣とゴルフじゃないですか。
夏バテなんてしてたらイーグルなんて狙えませんよ」
王「確かに。ちょっと庭見て決めてくる」
そう言って王さまは、アロハシャツを着たSP、ラッシーと一緒に、
庭にある畑へと向かいました。ディズニーランドで例えると、
ファンタジーランドくらいの大きさの畑に到着すると、庭師が作業をしています。
庭師「王さま、こんにちは。また茄子ですか?」
王「うーん、3食茄子はさすがに飽きてきた。今日は甘い系がいいのー」
袋を差し出すSP「あ、これ、王さまからの差し入れ。塩飴と麦茶。
それと、1時間作業したらきちんと休憩してって、秘書が言ってた」
笑顔の庭師「ありがとうございます」
秘書の声真似をする王「…べ、べっつにっ!あんたに倒れられたら、
困るってだけなんだからねっ!」
冷静な分析をするSP「いや、秘書はツンデレじゃないですし。
ただのツンの塊ですし、そもそも似ていないですし」
青空の下の緑豊かな畑で、「はっはっは!」と男3人の笑い声が響く。
愛犬のラッシーは意味が分からないようで、嬉しそうに尻尾を振ります。
庭師「甘い系だと、去年は作れなかったとうもろこしがおすすめですよ」
SP「なんで去年作れなかったんだっけ?」
庭師「とうもろこしは他の野菜よりも土壌の栄養を食うので、
土地を休ませていたんです。その分、最高に甘く実りましたよ」
王「じゃあ今夜はとうもろこしパーティじゃな」
SP・庭師「「はーい」」
夕陽が落ちる頃、縁側には浴衣を着た王さまが佇んでいます。
庭師兼臨時シェフ「お待たせしました、蒸しとうもろこしです」
王「おー…」
お皿の上には、オレンジ色の夕陽に照らされてピカピカと輝く、
つややかなとうもろこし。それを手にしようとした瞬間、
SPが「王さま!危ない!」と叫びます。
王「なんじゃ!?」
SP「そのまま触れたら熱々でやけどします!これを!」
そう言って渡されたのは、とうもろこしホルダー。
王「おぉ、夏しか使わんからすっかり忘れておった。ありがと」
そして王さまは、先端がピックのように尖ったそのホルダーを、
とうもろこしの両端に突き刺して、手に持ちます。
王「これで熱くなーい」
ほっとした様子のSPと庭師兼シェフに見守られながら、
王さまは大きく一口、頬張ります。
王「甘いのー」
笑って、SPと庭師兼シェフ、そして愛犬ラッシーも、
みんなでとうもろこしを食べます。
王「すっかり夏じゃのー」
SP「…夏と言えば…?」
ノリの良い庭師兼シェフ「BBQ!!!」
そうして庭にBBQセットを設置すると、炭火の網の上にとうもろこしを
乗せて、焼き目が突き始めたら、手際よく醤油を塗っていきます。
王「…バターは…?」
ノリの良い庭師兼シェフ「ジャスティス!!!」
熱々のとうもろこしの焦げた部分に、滑らかなバターを塗り、
バター醤油とうもろこしが完成しました。王さまは皿で受け取ったそれに、
手際よくとうもろこしホルダーを取り付けると、勢いよくかぶりつきます。
王さま「…完全勝利!!!」
秘書「ただいま戻りました。…あら、いい匂い」
王さま「よく戻った秘書、とうもろこしが焼き立てじゃぞー」
秘書「とうもろこし!!!」
SP「そういえば秘書って、とうもろこしが好物だったよな」
ツンデレ秘書「…べ、べっつにっ!ちょっといつもより
お腹が空いているだけなんだからね!」
王・SP・庭師兼シェフ「「「ツンデレだった」」」
花火の音が響き、次々と打ちあがるそれをのんびりと眺めながら、
4人と愛犬ラッシーはいつもと変わらない、当たり前の夜を過ごしました。
次の日のゴルフでは、見事ホールインワンを決めた王さまが
黄金のグリーンフォークを貰いました。そして、王さまは昨夜使った
とうもろこしホルダーを思い出し、「…とうもろこしパワー…」と呟きました。
王さまからの一言
「とうもろこしにかぶりつくと、歯に挟まるのがつらいよ」